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これまで紆余(うよ)曲折がありましたが、役者は先が見えない仕事なので、いろいろ思い悩んでいてもしょうがないなと思って、最近は考え方がすごくシンプルになってきました。オファーがあれば全力で取り組みますが、なければないで仕方ないかなと。先日、野生動物に関するある記述を読んだら、野生界では「自分が食べること」、「人から食べられないこと」、「子孫を残すこと」の三つだけをシンプルにやっていると書いてあって、「なるほど」と納得したんです。相対的な評価や、他人の声を気にするのは人間だけだなと。そんなこともあって、「呼ばれれば絶対にいい芝居をする。だから、他人が何と言おうと、気にするのはやめよう」と。
いい芝居をしなければ、次は呼ばれませんから。逆に言えば、呼ばれなくなったら、いい芝居ができなかったということで、役者の仕事が減って、僕が淘汰(とうた)されていくだけで。その代わり、毎日、「いい芝居って何だろう?」と考え続けています。あとは、呼ばれればできる限りの準備をして、現場に向き合う、役に向き合う、台本に向き合う…やれるだけのことをやる、という感じです。
そうですね。全力を出し切って、悪い芝居だったときは、この仕事が向いてなかったということなんだと思います。今後もいろいろお話は頂いていますが、ただひたすら、いただいた仕事に全力で取り組み、がむしゃらに食らいついて芝居していこうと思っています。
とはいえ、役者業は人生の一部であり、それに人生を支配されているかというと、そんなことはありません。最近、「半農半X」という考えがあることを知ったんです。「半分の農業」と「半分のX」。「X」は都市部での仕事で、「農」は農耕に限らず、山での狩猟採集なども含みます。僕は、半農の時間もしっかり生きているつもりですし、残り半分の「X」がたぶん役者なんだと思います。
そうかもしれませんが、僕には何とも言えません。ただ、この映画が僕なりに「精いっぱいやった」と胸を張って言える作品であることは間違いありません。
(取材・文・写真/井上健一)
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