ジェームズ・キャメロン監督「ナヴィはわれわれの善の部分、つまり一番よいところを表現しています」『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』【インタビュー】

2022年12月16日 / 06:00

 ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』13年ぶりの続編で、舞台を森から海に移した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が、12月16日から全国公開される。今回は、ジェイク(サム・ワーシントン)とネイティリ(ゾーイ・サルダナ)との間に新しい家族が増え、家族の愛と絆の物語がエモーショナルに描かれる。公開前に来日したキャメロン監督に話を聞いた。

ジェームズ・キャメロン監督 (C)エンタメOVO

-監督は、デビュー作の『殺人魚フライングキラー』(81)から、海を舞台にした『アビス』(89)と『タイタニック』(97)、そして本作と、ずっと海や水を描いています。水を映像化するのが最も難しいといわれていますが、なぜそこまで水にこだわるのでしょうか。また、今回はなぜ海を舞台にしたのでしょうか。

 確かにCGで水を表現するのは本当に難しいです。ただ、私は海が大好きで、『アバター』のキャラクターも愛しています。そのキャラクターはCGで作り上げられていますが、自分としては水を表現するために苦労する部分に引きつけられたのではなく、物語を伝えたいという気持ちの方が強かったのです。そのキャラクターたちを海に連れて行きたいと思いました。ハードワークになることは予想できましたが、世界でも一流のスタッフが集まっているので、何らかの形で解決してくれるだろうと信じていました。

-この映画に登場する、地球を駄目にして、パンドラを侵略する人類の姿には、監督自身の思いが投影されているのでしょうか。

 これは一作目と同じなのですが、この映画の見方の一つとして、人間とナヴィ双方の視点から見ることができます。ただ、ナヴィは人間の役者が演じていて 人間のスタッフが人間の観客のために作っています。ですから、全て人間が悪いと言っているわけではありません。ナヴィはわれわれの善の部分、つまり一番よいところを表現しています。昔、人間がこうなりたいと思っていた、よりよい形です。

 SF映画のいいところは、レンズを通したファンジーとして、現実から一歩離れて、物ごとを見たり振り返ったりすることができるところです。この映画を見た観客のほとんどが、人間ではなくナヴィの味方になります。彼らのようになりたいと。映画のクレイジーなところは、人間を侵略者として見せることができることです。それは素晴らしく、健全なことだと思います。自然が私たちを見ているような視点で見ることができます。われわれはナヴィになりたいのか、侵略者である人間になりたいのか、奪う者なのか世話をする者なのか、自然から奪って何も返さないのか、といったことが、この映画からの問い掛けだと思います。

-今後の予定を教えてください。

 あと3本作る予定です。考え方としては、始める前に脚本から、デザイン、設計、研究開発、戦略的なことまで、全てを準備して、短い間隔で公開できるようにします。3本目はすでに撮影が終わっていて、今はポストプロダクションの段階で、2年後の公開を予定しています。4本目は、あと少し撮影が残っていて、その後ポストプロダクションに入るので、3年後ぐらいでしょうか。それから5本目にまた2年かかるといった感じです。全てが終わるまでに、あと7、8年はかかるでしょう。『スター・ウォーズ』のように、観客のイメージから消え去ることなく続いていくといった感じでしょうか(笑)。

-今後の3作も全て監督をするのですか。

 もちろん可能であれば。4本目の脚本が一番気に入っています。物語が完結する5本目が2番目に気に入っています(笑)。なので、できれば全てを監督したいのですが、まず家族のことが第一ですから、私や家族が病気になったり、私が作業できなくなったらどうするのかも、考えておかなければなりません。でも、最善を尽くします。スタッフやキャストにも、いつも最善を尽くしなさいと言っています。

-本作はハイフレームレート(48コマ)を使って撮られたということですが、その理由は?

 今回、いろいろと実験してみて48コマが適当だということになりました。特に3Dには効果を発揮します。ただ、全ての場面でハイフレームレートを使っているわけではなくて、より3Dの効果を上げるために、部分的に使っています。水中のシーンは、特に効果的だったので、全てハイフレームレートで撮っていますが、水上のシーンでは2、3割しか使っていません。また、動きの速いアクションでは効果的ですが、日常的な普通のシーンでは必要ありません。ただ、私はあまりスローモーションに興味がないので、ジェイクとネイティリが戦士として動いているときは、ハイフレームレートで見たいと思いました。結論を言えば、3Dや70ミリはフォーマット(方式)ですが、ハイフレームレートはフォーマットではなくツール(道具)だということです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】新旧監督の話題作が並んで公開に『TOKYOタクシー』『金髪』

映画2025年11月22日

『TOKYOタクシー』(11月21日公開)  タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を東京の柴又から神奈川県の葉山にある高齢者施設まで乗せることになった。  すみれの「東京の見納めに、いくつか寄ってみたい … 続きを読む

中川晃教「憧れることが原動力」 ミュージカル「サムシング・ロッテン!」で7年ぶりにニック役に挑戦【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月22日

 数々のミュージカル作品へのオマージュが登場するコメディーミュージカル「サムシング・ロッテン!」が12月19日から上演される。2015年にブロードウェイで初演された本作は、「コーラスライン」、「アニー」、「レ・ミゼラブル」などの人気ミュージ … 続きを読む

岩田剛典、白鳥玉季「全編を通してくすっと笑えるコメディー映画になっていますので、気楽な気持ちで映画館に来ていただきたいです」『金髪』【インタビュー】

映画2025年11月21日

 日本独特のおかしな校則、ブラックな職場環境、暴走するSNSやネット報道といった社会問題を背景に、大人になりきれない中学校教諭が、生徒たちの金髪デモに振り回されながら成長していく姿を、坂下雄一郎監督がシニカルな視点で描いた『金髪』が全国公開 … 続きを読む

加藤清史郎&渡邉蒼「僕たちも今、夜神月に巻き込まれている」 子役出身の二人が挑む「デスノート THE MUSICAL」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月21日

 映画やドラマ、アニメなど幅広いメディア展開を遂げてきた人気漫画「DEATH NOTE」のミュージカル版「デスノート THE MUSICAL」が11月24日から上演される。2015年に日本で世界初演された本作は、原作のスリリングな物語を世界 … 続きを読む

なにわ男子・大西流星「“timeleszのお兄さん”な原くんは印象通り」 timelesz・原嘉孝「流星は優しくてしっかりしてる子」 1月期ドラマでW主演【インタビュー】

ドラマ2025年11月20日

 なにわ男子・大西流星と、timelesz・原嘉孝がW主演する「東海テレビ×WOWOW 共同製作連続ドラマ 横浜ネイバーズ Season1」が、2026年1月から放送がスタートする。  本作は、令和版『池袋ウエストゲートパーク』として注目を … 続きを読む

Willfriends

page top