北村有起哉「探偵は“時代を映す鏡”」 令和の名優が初の探偵役で目指したもの『終末の探偵』【インタビュー】

2022年12月15日 / 12:00

 ギャンブル好きで酒癖が悪く、けんかっ早いが、その裏に優しさを秘めた型破りな探偵・連城新次郎。古くからのやくざと中国系の新興マフィアが対立する街を舞台に、その活躍を描いた痛快ハードボイルド・エンターテインメント『終末の探偵』が12月16日から公開される。主人公・連城新次郎を演じるのは、映画からテレビドラマまで、唯一無二の存在感で幅広く活躍する令和の名優・北村有起哉。初めての探偵役に、どう向き合ったのか。その舞台裏を聞いた。

北村有起哉 (C)エンタメOVO

-北村さん演じる探偵・新城連次郎のキャラクターがとても魅力的でした。まずは、最初にオファーを受けた際の感想を聞かせてください。

 探偵役は初めてだったので、うれしかったです。ただ、「探偵もの」は世界中どこにも、いつの時代にもあります。日本にも、昭和の頃から皆さんの印象に残る探偵が数多くいます。そう考えると、探偵は“時代を映す鏡”みたいなものじゃないのかなと。だとすれば、今、昭和の探偵と同じことをやっても多分、受け入れられない。では、この令和の時代に探偵で何ができるだろうか。そんなことを考えました。

-新次郎のキャラクターについては、どんなふうに捉えましたか。

 台本を読んでみたら、かなり社会性がある作品という印象。でも、そこに意識を乗せ過ぎると、ちょっとトゥーマッチになる。とはいえ、新次郎はいろんなことにちゃんと意識を張って、新聞も読んでいる男。社会から分断され、落ちこぼれているように見えるけど、日々憂鬱(ゆううつ)になるようなこともいろいろと感じている。ということは、今の日本や世界とつながっているからなんだろうなと。完全に諦めていたら、関心もなく、なにも言わないはずですから。だから、令和を生きるみんなと共感できるような立ち位置で、それがたまたま探偵だった、という順番で考えていきました。

-新次郎には大人のカッコ良さもありますね。

 井川(広太郎)監督は、新次郎に「男っぽさ」とか「ハードボイルド」というイメージを持っていたようですけど、それは他人が判断するものであって、自分がなろうと思ってなれるものじゃないんですよね。ただ、そこにはきちんと理由がある。それは、こういう時代だからこそ「優しさ」じゃないのかなと。だから、そこを大切にすることで、結果的に監督のイメージする新次郎につながっていけば…と考えました。

-その点、新次郎には、若い女性ガルシア・ミチコ(武イリヤ)から、「行方不明になった親友のクルド人女性を探してほしい」と依頼され、一度は断りながらも結局、引き受けるなど、困った人を放っておけない優しさがありますね。

 普段からそういう意識があるから、思わず手を差し伸べてしまうんでしょうね。その点、鮮やかに事件を解決していく名探偵からは程遠い。ただその分、最後に事件が解決したときは、役としてだけでなく、僕自身も心から「よかった」と思うことができました。

-北村さんはこれまで、役者としてキャリアを築く中で、劇団などに所属せず、独自の道を歩んできたそうですが、そういう点は、一人で生き抜く新次郎にも重なる気がします。

 「一匹おおかみ」というと、ちょっと響きがよ過ぎるかもしれませんが、僕自身も割とさまよってきた感じはあります。自分に合う劇団を探していろんな芝居を見ながら、いろんなプロデュース公演に一期一会のつもりで参加してきました。大きな事務所に所属したこともありませんし…。大きな組織に所属するより、やりたいことを自分で見つけていく方が性に合っているんでしょう。自分のペースで歩めば、寄り道をしたり、立ち止まったりできますから。ただ逆に、そういう「伸び伸びと、悠々自適に」というところは紙一重で、一般の社会ではどう捉われているかは別です。でもそのフットワークの軽さの点では蓮次郎に重なる部分もあるのかなと。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

グレッグ・ターザン・デイビス「とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした」『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』【インタビュー】

映画2025年5月15日

 トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッ … 続きを読む

研ナオコ、認知症のおばあちゃん役で9年ぶりの映画主演「主演女優賞を狙ってます(笑)」岡﨑育之介監督「研さんの人生の奥行きがにじみ出た」『うぉっしゅ』【インタビュー】

映画2025年5月12日

 人生に迷いながらソープ嬢として働く若い女性・加那と、彼女に介護されることになった認知症の祖母・紀江の交流を明るくポップなタッチで描いたユニークな映画『うぉっしゅ』が絶賛公開中だ。  本作で、加那を演じる若手注目株の中尾有伽と共に、紀江役で … 続きを読む

Willfriends

page top