大河ドラマ史に残る壮絶な死闘の舞台裏! 「小栗さんが『ここで思い切りぶん殴られたいんだ』と」中川大志(畠山重忠)【「鎌倉殿の13人」インタビュー】

2022年9月18日 / 21:00

-この作品に懸ける小栗さんの思いも伝わってくる素晴らしいシーンでした。ところで話は前後しますが、戦いの前に和田義盛が畠山を説得に来た場面も胸を打つものがありましたね。

 あのシーンは、僕も台本を読んだ瞬間にグッときてしまい、堪えるのに必死で「三谷さん、ずるい!」と思いました。この戦で敵陣にいるのは全員、幼なじみのような顔ぶれ。中でも、和田義盛という毛むくじゃらのおじさんは(笑)、振り返ってみたら、畠山にとって第1回からずっと一緒にいるすごく大きな存在なんです。勝手にライバル視している和田義盛と、それを相手にしない畠山。両極端な2人がやり合っている様子が愛らしくて、かわいらしくて、僕も大好きでした。そんな2人が視聴者の方から愛されていたのも、すごくありがたかったです。その和田義盛が、仲間を代表して最後に会いに来るわけですから。三谷さんがそういうことを受け止めてくださって、あのシーンができたのかなと勝手に想像していました。

-その中で、普段は冷静な畠山が「戦など、誰がしたいと思うか!」と珍しく怒りをあらわにする一幕もありました。

 この戦の何が苦しいって、誰も口にはしませんが「やらなくてもいい戦なのに、なぜこうなっちゃったんだろう?」と、みんなが分かっていることなんです。でも、武士として引き下がれないところまで来てしまった。そういう思いを抱えながらの戦なんですよね。1年間やってきて、畠山が感情を爆発させることはあまりなかったんですけど、あのシーンにはそういう「戦なんかしたくない」という気持ちと悔しさの二つの葛藤があったのかなと。

-その後の戦では、畠山が義盛の待ち伏せを見破るシーンもありました。

 何が悲しいって、誰よりも畠山が一番、和田義盛のことを分かっているんです。言われなくても、全部先回りするぐらい、あなたのことは分かっていますよと。それぐらい一緒に戦ってきた仲間ということで、すごく苦しかったです。

-そういう中川さんの思いがあふれた見事な、畠山重忠の乱だったと思います。それでは最後に、重忠を演じ切った今の気持ちを聞かせてください。

 今回で四度目の大河ドラマの現場でしたが、今までで一番長く作品に携わらせていただきました。最初にお話しを頂き、“畠山重忠”の名を初めて聞いたときは、どんな人物なのかよく知らなかったので、どのぐらいキャラクターを深めていけるのか、未知の部分もありました。でも、知れば知るほど、畠山重忠という人に引き込まれていき、後世に語り継がれる意味も理解していく中で、しっかりと畠山重忠を体現しなくては…という思いで最後までいました。畠山重忠と共に過ごした時間が長い分、「本当に終わってしまったんだな…」という寂しさもありますが、今はとにかく胸がいっぱいです。

(取材・文/井上健一)

畠山重忠役の中川大志(左)と北条義時役の小栗旬 (C)NHK

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