エンターテインメント・ウェブマガジン
大森 南朋と仕事をすることに関して、僕はもはや兄弟という感覚はなく、一俳優という気分なんです。ただ、西島さんと南朋は同年代なので、「同年代ならではの緊張感があるのかな?」と思って見ていました。
西島 南朋くんとのシーンは、不思議な共感みたいなものがあって楽しかったです。ただ、一緒のシーンはそれほど多くなかったので、本当はもっとやりたかった。その点に関する個人的な思いとしては、同年代の俳優を集めて何かやってみたいですね。年齢が上がっていくと、だんだんと現場の中でこの世代は僕だけ、という感じになって行くんですね。でも、みんなきっとそれぞれ人生を抱えているはずですから。それこそ、みんなでもう一回強盗したいぐらいで(笑)。誰か企画してくれないかな。
大森 社会からドロップアウトした人たちに対して、社会的なセーフティネットをきちんと整備すべきだと思うんですけど、現実にはそれがなかなか追い付いていない。そんな現状に対して映画ができることは、そういう人たちにも、ちゃんとそれぞれの視点や考えがあり、そこから生まれてくる感情があると描くことじゃないかと。世の中に規定されない狭間の場所にいて、見過ごされがちな人たちに目を向けていきたい。そういう思いは、今までも強く持ってきました。
大森 それと、“理解できる人”を描く必要性をそれほど感じないんです。分からないものに対して、どう向き合うのか。その方が大事じゃないかと。生きていく中では、分からないことの方が多いですよね。だから、分からないときに、どうやって俳優が肉体と感情を用いて、それを表現するのか。それが救いになるのでは…と信じて、ずっと映画を作っているんです。
西島 もう少し前の時代だったら生きていられた人たちが、行き場を失くし、生き延びるために仕方なく勝負を懸ける。この映画で描かれているそういう部分は、現代を端的に映し出していると思います。監督がおっしゃるように、そういう登場人物たちが、自分と関係ない世界の人ではなく、同じように感情を持った生きた人間なんだと感じ取っていただけたら、何かプラスになることがあるのかもしれません。ただ、そういうことを正面切って訴える映画ではないので、難しいことは考えず、まずは純粋にエンターテインメントとして楽しんでほしいですね。その上で、何か持ち帰っていただけるものがあれば、それは幸せなことだと思います。
(取材・文・写真/井上健一)
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