松山ケンイチ「荻上監督との出会いは、合コンみたいでした(笑)」映画『川っぺりムコリッタ』【インタビュー】

2022年9月7日 / 12:00

-山田は言葉数が少ない代わりに、よく食べている。食べるシーンの演技でこだわったことは?

 ムロさんと長回しで撮っているじゃないですか。だから基本的には、ここにご飯があれば食卓だって分かるから、無理に食べなくても成立する。だけど今回の作品だと、そういうのが通用しない。食べながらせりふを言わないといけない。どこかでせりふを言う出番がくるわけだから、どのタイミングで口に入れるのかをテストで全部計算しておかないといけないんです。ここまで入れちゃうとしゃべれなくなるなとか、ここで飲みこんでおかないとまずいとか。あの長回しにはそれが絶対に必要で、食べ終わっているでしょ、最後に。緊張感がありました。でもあのときは、味はしなかったな(笑)。

-山田を演じながら、自分と重なった部分は?

 台本を初めて読んだときは、僕はまだ東京に住んでいたんですけど、東京で生きていたんでは絶対に理解できない部分、目の前に畑があって、作物を栽培して、それを誰かと共有するとか、隣近所の人と一緒にご飯を食べるとかは、東京では無理だなと思ったんですよ。それを習得するためには、自分から行かないといけないと。そうすることで、一番楽にこの作品に入れると思ったから。もちろん他にもいろいろな理由があるんですけど、この作品も田舎で生活するようになった一因です。東京では発見できなかったことをたくさん発見しました。どれだけコミュニケーションが大事なのかということもそうだし、お金のやりとりではなくて労働力のやりとりだったりするんですよ。それって人間の営みの原点。東京だと菓子折りだとか、結局お金の交換なんですよね。そこの違いははっきりと感じました。この映画では労働で補完し合っているから、健康的だなと思います。田舎に移り住んだことが、この映画に生きている気がします。

-東京での暮らしは、コミュニケーションが希薄だったと。

 僕はこういう近所付き合いはできなかったし、それぞれが理想とする生活を追い求めている感じがした。その情熱とか強さみたいなものは東京にいるときは周囲には感じていた。意見もちゃんと持っているし、頭もいいし、強い感じ。だけど、自分にできない部分、弱い部分を強さでカバーしているような気もしていた。それができなかったらお金で解決するという。だけど田舎では、自分の理想を追うというよりは、みんなで助け合って生きていく。みんなで田植えをしながら歌いながら生活している。「疲れたなぁ」と言いながら一日が終わって、ぐっすり寝て、また次の日が朝早くから始まる。今は機械とか使っちゃっているからあれなんですけど、農家同士のコミュニケーションとか、異業種間の関わり方も同じ地平にあるというか、上とか下がない。その中でコミュニティーが出来上がっていて、そこで不義理をしたら仲間外れにされますけど、東京だとそんなことはない。個で生きている感じがするから。

-風呂上がりの牛乳や白飯の匂いなど、ささやかな幸せがキーワードになっています。松山さんが日常で感じるささやかな幸せは?

 朝起きてみんなで朝ご飯を食べているときとか、子どもの起きたての顔を見るのとか。逆に、帰宅して夕飯を食べて、みんなが寝静まったときの子どもの寝顔だとか、子どもがエネルギー源ですね。あとは、自分が収穫した食べ物を家族においしいって言われることもそうで、いっぱいありますよ。それがずっと続いている状態。すごく幸せで、感謝しています。

(取材・文・写真/外山真也)

(C)2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

香川照之「僕の中では6人全員にモデルがいました」「連続ドラマW 災」【インタビュー】

ドラマ2025年4月4日

-なるほど。  でも、同一性というのは非常に厄介で、これは本当に同じ人なのかという疑問を持つわけです。本当は同一人物じゃないけど、それをメタファーとして見せているだけなのかもしれないし、もっと高尚に考えれば、その存在自体が本当にいるのかどう … 続きを読む

【週末映画コラム】壮大な“時間旅行”を定点観測で描く『HERE 時を越えて』/チームワークを旨とした戦争冒険映画『アンジェントルメン』

映画2025年4月4日

『アンジェントルメン』(4月4日公開)  第2次世界大戦下、イギリスはナチスの猛攻により窮地に追い込まれていた。特殊作戦執行部に呼び出されたガス少佐(ヘンリー・カビル)は、ガビンズ“M”少将とその部下のイアン・フレミングから、「英国軍にもナ … 続きを読む

草笛光子「老女がはちゃめちゃな、摩訶不思議な映画ですから覚悟してご覧ください(笑)」『アンジーのBARで逢いましょう』【インタビュー】

映画2025年4月3日

-松本動監督の演出について、また寺尾聰さんら共演者の印象をお願いします。  松本監督とは初めてでしたが、私の問い掛けにも親切に細かく答えてくれました。とにかく自由にやらせてもらいました。寺尾聰さんは、昭和49年のドラマ「天下のおやじ」で寺尾 … 続きを読む

門脇麦、「芝居に対してすごく熱い」田中圭と夫婦役で5度目の共演 舞台「陽気な幽霊」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月2日

-ところで、門脇さんは映像作品でもご活躍されていますが、舞台に立たれることに対してはどのような思いがありますか。  気持ちの面では変わらないですが、舞台はカメラが寄ってくれるわけではないので、声や体の所作で伝えなければいけないと思います。映 … 続きを読む

今田美桜「『アンパンマン』のように、幅広い世代に愛される作品に」連続テレビ小説「あんぱん」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2025年4月1日

-高知県の「やなせたかし記念館 アンパンマンミュージアム」も訪問されたそうですね、  「アンパンマンミュージアム」には二度伺いました。どちらの日も親子連れでいっぱいで、改めて『アンパンマン』という作品が幅広い世代に愛されていることを知り、「 … 続きを読む

Willfriends

page top