松山ケンイチ「荻上監督との出会いは、合コンみたいでした(笑)」映画『川っぺりムコリッタ』【インタビュー】

2022年9月7日 / 12:00

 『かもめ食堂』(06)『彼らが本気で編むときは、』(17)の荻上直子監督による新作『川っぺりムコリッタ』が、9月16日(金)から全国公開される。主演は松山ケンイチ。誰とも関わらずにひっそりと暮らすため、北陸にやって来た孤独な主人公を、自然なたたずまいで演じている。初体験となった荻上ワールドは、どうだったのだろうか?

松山ケンイチ(ヘアメーク:勇見勝彦(THYMON Inc.)/スタイリング:五十嵐堂寿)

-どこに興味を持って、出演を決めたのですか。

 『聖の青春』(16)で、イタリアのウディネ・ファーイースト映画祭に参加したときに、荻上監督の前作『彼らが本気で編むときは、』を見て、めちゃくちゃ感動して。日本から参加されている監督や俳優の皆さんとご飯を食べる機会があり、それで初めてお会いしたんだと思います。みんな初対面で、合コンみたいでした(笑)。どうしても緊張するんですよね。誰か知っている人がいれば、そこからつながって話も膨らむのでしょうけど。今回演じた山田みたいでした。だから、荻上監督とご一緒させていただけることは光栄だと思ったのと、ああいう価値観や認識が自分の中にはなくて、初めて知った衝撃が感動につながったというか。今回も自分の認識できる世界の外にある人たちの話。こうやってその日暮らしをしている人は、NHKの番組やネットニュースで見掛けるし、自分でも読んでいましたけど、それだけでは向き合ったことにはならなくて。実際演じることになって初めて、自分と共通する部分や周囲を見回したりしますから。そういう作業の中で、認識は広がっていくと思うんです。

-荻上監督は、コミュニティーにこだわっている監督です。その在り方が古い価値観を揺さぶりますが、でも深刻にせずにファンタジーの世界観に落とし込みます。

 山田は、何も知らずにあのコミュニティーの中に入っていって、みんなが突っ込んできてかき乱される。そうやって化学反応が起きることで、コミュニティーも揺れて違ったものになっていく。山田は生きる意味を持っていないし、生きていてもしょうがないと思いながら、でも飯はうまい。だから生きる喜びも実感しながら、その幸せを幸せとして認識していない。いろんな要素で幸せは認識できると思うけど、それを持たないでこのコミュニティーに来て、周囲が関わってくることで、目の前の幸せに気付いていく、実感していくキャラだったので、僕は特に何もしていないんです。何もしないようにしていたし、田舎に住んでいるただの僕が、ぽっと入ってきたみたいになりたかったんですよ。あのヤギみたいになりたかった。周囲は、台本に書かれている段階から癖が強い人ばかりでしたし、みんな信頼できる俳優さんだったので、何かが起きるだろうと思っていました。

-ムロツヨシさん演じる島田が、どんどん山田の生活に入り込んでくる過程が面白いです。現場では、どんなやりとりを?

 台本を読む限りではコメディーっぽく感じる。しかもムロさんがやるんだから、絶対に面白いだろうと想像できる。でも荻上さんは、そういう予想の範囲内にはしたくなかったんだと思いました。「淡々と」という言葉もあった気がするし、テンポを気にしなくていいというんですよ。多分、セオリー通りの見え方ではなくて、そこでちゃんと生活している人たちのリズムを大事にしていたんだと思うんです。山田のリズム感と島田のリズム感は絶対に違うから、きれいにポンポンポンとなるわけがないんです。ポンポンポンとなったら面白い、笑えると思うんですけど、そうはしたくなかったのではないかな。

-その延長線上にすき焼きのシーンが!

 あれなんかは、完全に島田を受け入れた瞬間であった気もするし、自分から飛び込んでみようと変わった瞬間でもあると思います。ご飯って偉大ですよね。肉って偉大だなと。それだけ人を変えちゃうんだと。だから、あのシーンは食卓を囲んでみんなとご飯を食べる幸せを共有している感じ、生きる喜びを共有している大事さがすごく出ていると思うんです。家族みたいだけど家族ではない。そういうコミュニティーだって成立するわけですよね。それは本当にこの作品の素晴らしいところだし、好きなところですね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

内野聖陽、念願のリア役にかける思いとは 「リア王 -KING LEAR-」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年7月17日

 シェークスピア四大悲劇の一つ「リア王」が内野聖陽の主演で9月21日から上演される。舞台、映画、テレビと各方面で活躍し、硬軟・老若を問わず多彩な役柄を演じ分ける実力派の内野。ドラマ「ゴールドサンセット」の劇中劇で「リア王」を演じた経験と熱い … 続きを読む

唐田えりか「染谷将太さんのお芝居が衝撃的でした」コンビニ店を舞台にした異色ホラーで初共演『チルド』【インタビュー】

映画2026年7月16日

 カンヌ国際映画祭に出品された『寝ても覚めても』(18)やNetflixの「極悪女王」(24)で注目を集め、今年も『恋愛裁判』、『モブ子の恋』など出演作の公開が相次ぐ唐田えりか。常に挑戦を続ける彼女の最新作が、コンビニ店を舞台にした異色ホラ … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第26回「信長を笑わせろ!」 人間ドラマと華やかなエンターテインメントが一体になった大河ドラマならではのエピソード【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年7月10日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。7月5日放送の第26回「信長を笑わせろ!」では、小 … 続きを読む

花總まりがアガサ・クリスティに 失踪の謎を追うミュージカル「AGATHA(アガサ)」で「ミステリーの世界を体感していただけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年7月9日

 イギリスを代表する推理小説家で“ミステリーの女王”と呼ばれたアガサ・クリスティが失踪した実話を元にしたミュージカル「AGATHA(アガサ)」が7月18日から上演される。本作は、アガサ・クリスティが失踪した11日間の謎を追う物語。現在(19 … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#セブチを見ていると分かる、韓国の年齢の不思議

2026年7月8日

   K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り … 続きを読む

page top