村上淳「“人間力のすごみ”を感じる現場でした」太平洋戦争末期、沖縄県民の命を守ろうとした警察部長役を熱演 映画『島守の塔』【インタビュー】

2022年7月21日 / 12:00

-演じる上では実在の人物ならではの難しさもあったのではないでしょうか。

 以前の僕だったら、ご親族がいらっしゃる実在の人物で、ある種、ヒーロー化されている方を演じるに当たっては、自分一人で背負いこむ部分が多かったはずです。でも今回は、初めてご一緒する吉岡里帆さん(沖縄県職員・比嘉凛役)を含め、周りの皆さんを信じて、勝手ながらそういうものを分散させていただきました。もっとはっきりいえば、「周りを頼った」という感じです。もちろん、過去に何度かご一緒したことがある萩原さんには安心して胸を借りられましたし、榎木孝明さん(第三十二軍司令官・牛島満中将役)や水橋研二くん(高級参謀・八原博通大佐役)の熱量もすごかった。そんなふうに、信じて任せられる監督やスタッフ、キャストが集まったのがこの現場だったと思います。

-なるほど。

 そういう意味では、エキストラの方々を含め、俳優である以前に“人間力のすごみ”みたいなものを今まで以上に感じる現場でした。だから、僕に関して言えば、周りを信じ切れていないカットはこの映画には存在しません。

-今年は沖縄本土復帰50周年の節目であると同時に、現実にウクライナで戦争も進行中で、戦争について考える機会が増えています。それらを踏まえた上で、この映画に対する思いをお聞かせください。

 期待を裏切るようで申し訳ありませんが、大風呂敷を広げるようなことはいえません。僕も戦争を知らない世代ですから。ただ、戦争が愚行であることは、恐らく全人類共通の認識のはずなのに、それでも戦争は起きているわけです。だから、それを「よくない」「止めよう」と声を上げる人たちを勇気づける、あるいは戦争を考え直してもらう一つのきっかけになってくれたら、と思います。

-まずは見てもらいたい、ということでしょうか。

 僕が多くを語る必要はないと思うんです。テーマは観客のもので、そこで何を感じていただくか、誰にフォーカスを当てるかは、皆さんの自由ですから。「こういうものだ」と訴える“教材ビデオ”ではありませんし。しかし、見応えのある作品になったことだけは間違いありません。だから、「難しそうな映画」ではなく、「いい映画見たよね」という気持ちになっていただける作品だということは、声を大にしていいたいです。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会

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