オースティン・バトラー「この映画で、“人間エルヴィス・プレスリー”と出会ってください。そして、彼の素晴らしいステージを目撃してください」 映画『エルヴィス』【インタビュー】

2022年6月30日 / 12:00

 伝説の歌手エルヴィス・プレスリーの人生を、バズ・ラーマン監督が映画化した『エルヴィス』が7月1日から公開される。本作で、プレスリー役を見事に演じたオースティン・バトラーが初来日し、プレスリーや映画について熱く語った。

エルヴィス・プレスリーを演じたオースティン・バトラー (C)エンタメOVO

-まず、今回プレスリー役に決まるまでの経緯と、役に決まったときの心境を聞かせてください。

 最初に、自分が「アンチェインド・メロディ」を歌っている映像をバズ・ラーマン監督に送りました。それはとてもパーソナルなものでした。それを見た監督からニューヨークに呼ばれました。初めて会ったときに3時間話をしました。翌日、監督が「脚本を読んでみないか」と言ってくれましたが、それは正式なオーディションではなく、2人でコラボレーションできるかどうかを探るような感じでした。それから、その作業が5カ月間続きました。

 その後、スタジオ側に正式にオーケーをもらわなければならなかったので、スクリーンテストをしました。1週間後に監督から決定の連絡が来て、映画の中の(プレスリーのマネジャーの)パーカー大佐(トム・ハンクス)のせりふである「ミスター・プレスリー、飛ぶ準備はできているかい」と言われました。最高の瞬間でした。ただ、スリルと同時にすごく責任も感じたので、すぐに準備に取り掛からなければと思いました。

-実際に演じてみてどう感じましたか。

 それを話すととても長くなります。どこから話せばいいのか(笑)。最初から、この映画に参加することで、自分はこれまでとは全く違う人間になるだろうとは思っていましたが、それがどんな意味を持つのかは分かりませんでした。ただ漠然と、自分では気付かないことを引き出してもらえたり、未知への挑戦を体験するのだろうとは思っていました。

 最終的には、恐怖心に対する自分の考え方が少し変わりました。僕もエルヴィスと同じなのですが、とてもシャイで、舞台に上がることに緊張してしまうタイプなんです。それに、今回エルヴィスを演じることの責任はとても重かったし、彼のレガシーもあるし、ファンの方やご家族もいます。でも、考えてみれば、エルヴィス自身も、“エルヴィスであること”へのプレッシャーを常に感じていたし、家族や友人たちをいかに守っていくのかということをずっと考えていたので、自分とはかけ離れていると思っていたエルヴィスが、実はいろいろな面で自分とつながっていると感じることができました。本当にたくさんのことを学び、今は、以前とは全く違った人間になれたと思っています。。

-では、演じた後で、プレスリーに対するイメージは変わりましたか。

 一つには、アイコンと呼ばれるような人は、総じて誤解されているところがあると思います。僕たちは、彼らが突然、最初からその状態で世の中に登場してきたと思いがちですが、実はそうではありません。僕もエルヴィスに関しては、生まれたときは双子だったけど、兄弟を失ったことを知ったのは、とても興味深いことでした。生まれながらにして、もう一人の自分がいなくなったのですから、ずっと心に穴が空いていたわけです。でも、それが母親との絆を強めることにもなった。彼女にとっては、とても悲しんでいたときに、エルヴィスというミラクルが生まれてきたわけですから。

 もう一つは、エルヴィスの音楽は、ブラックミュージックやブラックカルチャーなくしては存在しなかった、今回は、そういう文脈をきちんと描いていると思いました。テントや教会で奏でられていたゴスペルや、ビールストリートで聴いた音楽に触れなければ、エルヴィスの音楽は誕生しなかったのです。ほかに知らなかったことは、エルヴィスの感受性の豊かさやもろさ、そして不安定な部分でした。あとは、彼は生涯スピリチュアルな人だったようですし、ユーモアのセンスにも優れていました。そうしたことも彼の一部です。彼のことを知れば知るほど、好きになりました。

-この映画は、プレスリーのことを知らない、若い世代にぜひ見てほしいと思いました。彼らに向けて、何かメッセージがあればお願いします。

 そう感じてもらえて、とてもうれしいです。観客には、自分がこの映画を通して体験したことと同じような感覚を抱いてもらえたらと思います。僕は、映画を作りながら、エルヴィスのことをどんどん知っていくという体験をしました。例えば、彼が、いかに心が広く、優しく、たくさんの愛を持っていて、感受性が豊かであったかということ。それと同時に、強い反骨心も持っていたこともです。

 また、今は、エルヴィスといえば、白いジャンプスーツのイメージが強いと思いますが、彼の反骨児時代は、舞台の上でゴロゴロしたり、獣のような、本能的な感じを出したりと、まるでパンクロックの誕生を思わせるものがあります。そこにもワクワクすると思います。あとは、彼が自分のビジョンを裏切らずに行動したところも心に響くと思います。

 僕が最もインスピレーションを得たのは、彼がオリジナルであることを恐れなかったことです。それと同時に、周囲のものも積極的に取り入れていたところもすごく好きです。ファッションや音楽の選択においても、彼には芸術性がありました。その部分も見てほしいです。この映画をきっかけにして、彼の音楽を聴いてみたり、彼の素晴らしい芸術に触れてもらえればいいと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

岡本圭人、岡本健一と2度目の親子共演への思い 「成長した姿を見せられたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月27日

 若村麻由美と岡本圭人、岡本健一が出演する舞台「La Mère 母」と「Le Fils 息子」が2つの劇場で同時上演される。同作は、劇作家フロリアン・ゼレールによる家族三部作のうちの2作で、若村が主演する「La Mère 母」は日本初上演、 … 続きを読む

「光る君へ」第十一回「まどう心」互いの思いとは裏腹に、さらに開くまひろと道長の距離【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年3月23日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月17日に放送された第十一回「まどう心」では、藤原兼家(段田安則)によるクーデター“寛和の変”の事後処理、およびそれに伴う主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の行動が描かれた。  兼 … 続きを読む

【週末映画コラム】4K復元版で「ドル3部作」を一挙上映『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』

映画2024年3月22日

 監督セルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネ、主演クリント・イーストウッドという伝説のトリオが放った「ドル3部作」(「ドル箱3部作」と表記されることも多い)が、マカロニ・ウエスタン誕生60周年を記念し、4K復元版として3月22日から一 … 続きを読む

「生への回帰というのがこの映画の目指したところです」荒木伸二監督、若葉竜也『ペナルティループ』【インタビュー】

映画2024年3月21日

 朝6時、いつものように目覚めた岩森淳は、恋人の砂原唯(山下リオ)を殺した溝口登(伊勢谷友介)を殺害する。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、なぜか溝口も生きている。そして今日もまた、岩森は復讐(ふくしゅう)を繰り返していく。荒木伸二監 … 続きを読む

伊野尾慧、「新しいことに挑戦したい」 ミュージカル初出演で見せる新たな一面【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月20日

 バラエティーや映画やドラマといった映像作品だけでなく、朝の情報番組やトーク番組にもレギュラー出演し、多岐にわたって活躍しているHey! Say! JUMPの伊野尾慧が、4月9日から上演されるブロードウェイミュージカル「ハネムーン・イン・ベ … 続きを読む

Willfriends

page top