【インタビュー】『メタモルフォーゼの縁側』芦田愛菜「宮本さんが『頼んだわよ』と声を掛けてくださってうれしかった」 宮本信子「愛菜さんは役にぴったり」幅広い層から人気の2人が10年ぶりの共演

2022年6月16日 / 08:00

 子役時代から第一線で活躍する俳優・芦田愛菜。そして『マルサの女』(87)から『キネマの神様』(21)まで、数々の名作に出演してきた名優・宮本信子。幅広い層から人気を集める2人が10年ぶりに共演した『メタモルフォーゼの縁側』が、6月17日から公開となる。人付き合いが苦手な17歳の女子高生・佐山うららと、夫に先立たれた75歳の老婦人・市野井雪、年の差58歳の2人がボーイズ・ラブ(BL)漫画をきっかけに友情を育んでいく温かな物語だ。公開を控えた2人が、撮影の舞台裏を振り返ってくれた。

芦田愛菜(左)と宮本信子 (C)エンタメOVO

-おばあちゃんと幼い孫を演じた『阪急電車 片道15分の奇跡』(11)以来、10年ぶりの共演はいかがでしたか。

芦田 今回ご一緒して、宮本さんが撮影初日に「これから頼んだわよ」と声を掛けてくださったのが、すごくうれしかったです。そんなふうに「ポン」と肩に手を置いてくださったので、緊張が一気にほぐれて、雪さんとうららの関係性も作りやすくなりました。おかげで、毎日撮影が楽しかったです。

-宮本さんの「頼んだわよ」という一言にはどんな思いがあったのでしょうか。

宮本 「一緒に楽しくやりましょうね」ということはもちろんですけど、「頼りにしていますよ」という感じでしたね。ほとんど2人のお芝居で進んでいくので。

-前回は俳優として「頼んだわよ」と声を掛けるような関係ではなかったですものね。

宮本 長生きしてよかったです(笑)。やっぱり、女優にはその年齢にならないとできない役がありますから。私も過去、節目節目でいいお役を頂いてきましたが、今もそんなふうに健康で仕事ができることが、本当にありがたいです。ですから、私にとってはこの年齢でぴったり合う役を演じられたことがとても大きいです。

-そうすると、お二人はうららと雪の関係性をスムーズに作っていけた感じでしょうか。

宮本 いけましたよね。

芦田 そうですね。でも、宮本さんが引っ張ってくださったので、私はついて行くだけでした。お芝居をするときいつも思っていることですけど、関係性を作り上げていくという意味では、私自身も、演じる役も、初めての経験で、同じなんですよね。だから、撮影を重ねる中で、私と宮本さんのお芝居の呼吸が徐々に合っていくのと同時に、うららと雪さんの関係も少しずつ作り上げられていったのかなと思います。

宮本 本当にその通りですね。だから、私は「うららが愛菜さんでよかったな」ってしみじみ思っています。役にぴったりで、これ以上のキャスティングはありませんから。

芦田 うれしいです。ありがとうございます。

-ここで改めて、最初に台本を読んだときの感想を聞かせてください。

芦田 「このお話、好きだな」と思いました。自分に自信がなく、いつも“猫背がち”なうららが、自分の好きなものを肯定し、優しく受け止めてくれる雪さんと出会ったことで生き生きとしていく。それが「私も、好きなものをもっと“好き”って言おう」とか「自分のことを認めてあげよう」と背中を押してくれる感じがあって。一コマ一コマ、本当に日常の何げない風景がすごく温かくて、雪さんがうららを包み込んでくれたように、作品自体が私たちを包み込んでくれるような印象でした。

宮本 忙しい世の中になって、殺伐とした世の中にもなって、でも人間は生きていくわけで。しかも、今は人との関係を作ることが難しくなっていますよね。そんな中で、孫とおばあちゃんという関係でもない年の離れた2人が仲よくなっていく。こんなにすがすがしく、いい関係を描いた映画は他にありませんし、とてもすてきですよね。

-2人を結び付けるものがBL漫画というのも新鮮ですよね。雪さんぐらいの年齢の方だと、知らないものに対して拒否反応を示すこともありそうですが、雪さんはそうではなく、とても柔軟ですし。

宮本 私、始めは知らなくて「BLって何ですか?」って聞きましたから(笑)。雪さんもそうでしたが、私の友だちもほとんど誰も知らなくて。でも、見てみたら絵もすてきで、違和感はなかったです。そういった意味では、たまたま手に取った一冊が、こんなふうに女子高生と知り合うきっかけになり、自分の世界も広がっていく。とてもいいお話だと思います。しかもそこで描かれているのは、BL漫画に限ったことではなく、自分の知らなかった世界と出会ったときにどうするか、という問題ですから。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

目黒蓮が抱いた“継承への思い” 妻夫木聡、佐藤浩市から受け取った“優しさ”と俳優としての“居住い” 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」【インタビュー】

ドラマ2025年11月9日

 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」への出演発表時、“物語の鍵を握る重要な役どころ”という情報のみだった目黒蓮演じる謎の人物。そこから約2カ月、11月2日放送の第4話でようやくその正体の一端が解禁された。男の名は中条耕一、佐藤浩市演じる山王 … 続きを読む

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

Willfriends

page top