【インタビュー】映画『ハケンアニメ!』小野花梨 「カムカムエヴリバディ」のきぬちゃんから天才アニメーター役へ! 俳優業で大切にしているのは「他の人と自分を比べないこと」

2022年5月20日 / 07:02

 直木賞作家・辻村深月の同名ベストセラー小説を原作に、テレビアニメの制作に情熱を注ぐクリエーターたちの奮闘を描いた『ハケンアニメ!』が5月20日から全国公開となる。本作で“神作画の天才アニメーター”並澤和奈を演じるのは、NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(21~22)の“きぬちゃん”役で注目を集め、現在は「恋なんて、本気でやってどうするの?」(フジテレビ系)にも出演中の小野花梨。和奈役に込めた思いと、本作で描かれたメッセージを、子役時代から俳優として歩んできた自らの経験を踏まえながら語ってくれた。

並澤和奈役の小野花梨 (C)エンタメOVO

-並澤和奈が仕事に取り組むときの真剣な表情と、プライベートでの穏やかな表情のギャップが人間味を感じさせて印象的でした。演じる上で、どんなことを心掛けましたか。

 並澤和奈は、まだ20代前半にも関わらず、すでにそうそうたるベテランのスタッフを納得させるだけの力を持ち、「神作画の天才アニメーター」と注目を集めているんですよね。それだけを聞いたときには、“いかにも天才”みたいな女の子かと思ったんです。でも実は、仕事以外では自分に自信がなかったり、男性とデートするときにはウキウキしておめかししたり、ちょっとしたことに一喜一憂する人間らしい一面も描かれている。だから、天才アニメーターという部分に引っ張られ過ぎず、「彼女にも彼女なりの人生がある」と考え、人間としてリアルでいることを意識しました。

-続いて、天才アニメーターという点に関連し、小野さんの「天才像」についてお聞きします。今まで出会った中で、「この人は天才だ」と思った人はいますか。

 例えば、絵を見て「これを描いた人、天才!」とか「電子レンジ作った人、天才!」みたいなことはよく思います。でも、実際に「天才」という言葉に心が揺れたことはないかもしれません。天才って、すごく便利な言葉だけど、ちょっと安易な気がするんです。天才は“生まれた瞬間から出来上がっている”というイメージですけど、そう見える人も、実は裏にいろんなことがあるはずなんですよね。私が会ったことのある監督たちも、皆さんものすごく考えているし、いろんな人の力を借りてものを作っています。だから、「自分は天才だぜ」って1人でひょうひょうとなんでもこなす人って、たぶんいないと思うんです。そこでもがいている姿がいとおしくて愛せるし、尊敬できるし…。

-確かにそうですね。

 それを全部、天才の一言で収めちゃうのは、ちょっともったいないかなって。むしろ、「こんなすごい人でも、こんなに苦しんでものを作っているなら、私ももっと頑張らなきゃ」って元気をもらうことの方が多い気がします。

-その考え方は、並澤和奈という役にも反映されていそうですね。

 そうですね。そういう努力が自信になり、絵に出るはずなので。だから、仕事に関しては“ものすごく努力してきた女の子”と解釈して演じました。

-アニメの制作現場を舞台にしたこの映画には、並澤和奈以外にも、さまざまなスタッフやキャストが意見をぶつけ合い、いい作品を作ろうとする姿が描かれています。そういう姿勢は、小野さんが普段接している実写映画やテレビドラマの現場にも通じると思いますが、共感できる部分はありましたか。

 すごく共感できました。「ある」どころか「そのまま」という感じで(笑)。それぞれに自分の役割があり、こだわりがあるけど、それを一つの作品に仕上げようとすると、どうしてもぶつかる部分は出てくる。だから、今回はこれを優先するから、自分のやりたいことはできないとか、時には「そんなのできない」と怒る人がいるかと思えば、「私がやるよ」と引き受けてくれる人もいて。映画やテレビドラマの現場も全く同じです。だから、“物づくり”って、きっと根本的にはどこも同じなんだろうなと勉強になりました。

-それでは、並澤和奈にとってのアニメーションのように、小野さんが情熱を傾けられるものはありますか。

 今のお仕事がまさにそうです。一つ一つのお仕事に命を燃やして、真剣に取り組んでいるので、このお仕事に出会えて本当によかったと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top