【インタビュー】『HOMESTAY(ホームステイ)』瀬田なつき監督「長尾謙杜くんの明るさが、現場全体の雰囲気を盛り上げてくれました」森絵都の名作『カラフル』の映像化に挑戦

2022年2月11日 / 08:00

 突然、死んで生前の記憶を失った魂・シロ(長尾謙杜)は、「管理人」を名乗る謎の人物から、同じく死んだ高校生・小林真の体に“ホームステイ”し、100日以内に真が死んだ理由を突き止めるよう指示される。真として生きることになったシロは、幼なじみの晶(山田杏奈)や、憧れの先輩・美月(八木莉可子)と日々を過ごす中、真の死の真相を探っていくが…。森絵都の名作小説『カラフル』を映像化した『HOMESTAY(ホームステイ)』が、2月11日からAmazon Prime Videoで世界同時配信となる。Amazonが製作する初の日本映画として注目を集める本作の監督は、『PARKS パークス』(17)、『ジオラマボーイ・パノラマガール』(20)などを手掛けてきた瀬田なつき。配信開始を前に、作品に込めた思いや撮影の舞台裏を語ってくれた。

瀬田なつき監督

-原作はこれまで何度も映像化されてきた森絵都さんの小説『カラフル』ですが、その魅力をどう考えていますか。

 割と重い話ではあるんですけど、それがファンタスティックな世界観で描かれているんです。ファンタジー風に始まり、「なぜ小林真は死んだのか?」というミステリー的な語り口の中に、青春映画的な部分や家族の問題、友情、「生きるとは?」というメッセージなど、いろいろな要素が詰まっている。そういう物語は、他にあまりないなと思って。

-そんな魅力的な原作を今回改めて映像化する上で、心掛けたことは?

 Amazon Original 映画として世界同時配信される初めての日本映画ということで、若い方からご家族まで、皆さんにご覧いただける要素はどういうところなのか、みんなでブラッシュアップしていきました。配信という形式も考慮し、物語がどんどん転がっていくように見せたいと思っていました。

-おっしゃるように、物語には重い部分もありますが、全体的には前向きな雰囲気があふれていて、導入部も軽妙で一気に引き込まれました。

 そう言っていただけると、すごくうれしいです。入り方は、スピーディーに話に引き込めるように、モノローグを増やしてみたり、編集にもこだわってみたりと、いろいろ試行錯誤しました。

-これが初主演となる長尾謙杜さんのはつらつとした演技も魅力的で、物語を引き立てています。テレビの連ドラなどでも注目を集める若手俳優ですが、印象はいかがでしたか。

 初主演のプレッシャーはあったのかもしれませんが、物おじせず、現場を楽しもうとする気持ちがすごく伝わってきました。いつも元気で、彼の持ち前の明るさが、現場の雰囲気や、シロの前向きなキャラクターにも生かされていたように思います。

-お芝居について長尾さんとはどんな話をしましたか。

 実はシロって、すごく難しい役なんです。真の中にシロが乗り移っているので、シロではなく、真でもない「真を演じるシロ」を演じるわけですから。しかも、その微妙なニュアンスをきちんと浮かび上がらせ、お客さんに伝わるようにしなければいけない。それをどんなふうに形にしていくのか、現場で長尾くんとも相談しながら、脚本の行間を一つずつ探っていった感じです。どこまで真らしくするのか、「ここまでしたら真じゃなくて、別人になっちゃうね」みたいな見え方のバランスは、本当に繊細で難しかったです。

-そういう意味では、長尾さんと共演者の関係も重要だと思いますが、演出はどのように?

 周囲の人々や家族との関係性を通して、いろいろなことが浮かび上がってくるように心掛けました。幼なじみの晶は真のことをよく知っているので異変に気付いたり、憧れの美月先輩とのシーンではシロ自身の楽しい気分も出してみたり…。現場では、役者さんたちに説明しながら、いろいろとトライしていただき、一つ一つ積み上げていった感じです。山田さんや八木さんも、長尾くんの芝居をうまく受けてくださったので、そこから見えてくる部分もありました。

-ところで、本作では、彩雲や花火の絵など「空」が効果的に使われていますね。家にいる時間が長いこのご時世、空を見る機会も減っていますが、この作品を見ると空を見上げたくなります。

 空を見上げると、どこまでも同じ空間が広がっていますよね。だから、それが皆をつないでいくものになったらいいな、という思いを「空」には込めています。この作品をきっかけに、窓の外を見て、どこまでも広がっている空を通じて、今はなかなか会えない人ともつながっていることを感じてもらえたらうれしいです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

映画2025年7月3日

 1970年代に起こった連続企業爆破事件の指名手配犯で、約半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した桐島聡の人生を、高橋伴明監督が映画化した『「桐島です」』が、7月4日から全国公開される。本作で主人公の桐島聡を演じた毎熊克哉に話を聞いた。 -桐島 … 続きを読む

磯村勇斗&堀田真由、ともにデビュー10年を迎え「挑戦の年になる」 ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」【インタビュー】

ドラマ2025年7月2日

 磯村勇斗主演、堀田真由、稲垣吾郎が出演するカンテレ・フジテレビ系“月10ドラマ”「僕達はまだその星の校則を知らない」が7月14日から放送スタートする。本作は、独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公・白鳥健治(磯村勇斗)が、少 … 続きを読む

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

Willfriends

page top