【インタビュー】映画『フタリノセカイ』坂東龍汰 特殊造形の胸を着けてトランスジェンダー役に挑戦!「特別ないい体験でした」

2022年1月14日 / 13:00

 片山友希と坂東龍汰がW主演をする映画『フタリノセカイ』が公開中。飯塚花笑が監督・脚本を務める本作は、結婚もできない、子どももできない、恋愛や夫婦、家族のあり方で悩むトランスジェンダーの真也と、シスジェンダーの恋人・ユイとの10年間の軌跡を描くラブストーリー。トランスジェンダーとして葛藤しながら生きる真也を坂東が演じ、真也と一緒に生き、支えていくことを選択するユイを片山が演じる。真也役に体当たりで臨んだ坂東に、作品への思いや役作りについて聞いた。

真也役の坂東龍汰

-最初に脚本を読んだときは、どんな印象を持ちましたか。

 LGBTQについて知ってはいたのですが、詳しい知識はなかったので衝撃を受けました。こういう愛の形や葛藤が実際にあるんだということにびっくりしましたし、男性の心を持って生まれたけれど体は女性というFTMという性の役を、果たして自分が演じられるのかという不安もありました。かなり難しい役だなというイメージを持ちました。

-真也という役柄に、どのようにアプローチしていったのでしょうか。

 最初は真也がどういう感情を抱えているのかというのを、きちんと知る必要があるなと思って、監督と2人で会って会話をしながら、準備していきました。監督がトランスジェンダーの方なので、どういうコンプレックスや悩みを抱えて、それと戦ってきたかということを詳しく話してくださったり、トランスジェンダーの方が集まるバーに連れて行ってもらったりしました。性同一性障害の診断を受けた方がもらう性同一性障害の証明書も読ませていただいて、実際にこういうことなんだと詳しく知ることができました。

-特殊造形の胸を着けるなど、身体的な部分での挑戦もあったと思います。

 はい。特殊造形の胸作りはかたどりから始まって、次に行ったときはフィッティングをしたりと、作るだけでも1カ月ぐらいが掛かりました。実際に胸を着けたシーンの撮影では、体勢によって胸にしわが寄ってしまったりと、大変なこともありましたが、真也が胸を見せるシーンは、とても必要なシーンだったんじゃないかなと思います。僕自身はセクシーな感覚もあったのですが、すごく特別ないい体験でした。

-体が女性の役を演じたことで、新たに発見したことはありますか。

 特殊造形の胸を初めて着けたときは、単純に不思議な感覚になりました。真也は胸があって、それを隠したい、隠さなきゃいけないと思う気持ちだったり、パートナーに女性だとバレたら「別れたい」と言われるんじゃないかとか、リアルにそのときに、いろいろなことを感じたんです。その後も特殊造形の胸を着けて生活をしたり、ブラジャーを着けて友達と会ったり、近所に買い物に行ったりして、どんなふうに隠さなきゃいけないのかとか、ばれたらどう思われるんだろうという気持ちを、リアルに自分で経験してみたことは大きかったです。

-劇中では、ユイと真也が運命的な出会いをしますが、坂東さん自身は、人生の中で「運命の出会い」を感じた経験はありますか。

 役者という仕事に出会って、自分がこれで生きていきたいと決めた瞬間は忘れられないです。人前で演じることが嫌いだった僕が、高校生のときに学校の舞台で芝居をしていて、本番中に今まで感じたことがないアドレナリンが出て、180度変わって、こんなに楽しいことってあるんだと自分の中で爆発した瞬間は、本当の意味で芝居と出会ったのかなと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

 中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む

広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

映画2025年9月9日

 ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロが自身の出生地・長崎を舞台に執筆した長編小説デビュー作を、石川慶監督が映画化したヒューマンミステリー『遠い山なみの光』が9月5日から全国公開された。1950年代の長崎に暮らす主人公の悦子をはじめ、悦子 … 続きを読む

Willfriends

page top