「井上が社会に貢献しているところをぜひ見てほしい」福士誠治(井上馨)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年10月24日 / 12:05

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。明治という新たな時代の中、主人公・渋沢栄一(吉沢亮)は、紆余(うよ)曲折を経ながらも、新しい日本を作るためにまい進していくが、その周囲には才能ある人物が多数集まってくる。その1人が、井上馨だ。長州藩出身で討幕運動に参加し、維新後は新政府で活躍。一時は大蔵省で上司を務めるなど、栄一とも深く関わっていく。演じるのは、これが大河ドラマ初出演となる福士誠治。役作りの裏話や見どころを語ってくれた。

井上馨役の福士誠治

-「青天を衝け」の井上馨をどんな人物だと捉えていますか。

 僕の中では、明治から再登場すると、一見、ちょっと現代人っぽいイメージがありますが、武士として生きてきた時代もある井上としては、洋服を着ていても、武士道みたいなものを忘れずにいるところがある人物。資料には「怒りっぽい」とも書かれていましたが、渋沢と共に世の中を変えるという気持ちはすごく大きい。ただ、「青天を衝け」の中では、渋沢に無理難題を吹っ掛ける役で、ちょっと調子がいい。「『やれ』と言えば、やってくれるだろう」という強引さみたいなものがある(笑)。

-演じる上で、そういう強引さをどんなふうに意識していますか。

 渋沢といるときは、少し我の強さを出せたら、ということは、台本を読んだり、監督と話し合う中で、意識するようにしました。演じる上では、井上の鈍感さというか、周りの空気に左右されずに、「世の中を固める上では、自分の意見が正しい」ということを強く意識しつつ、演じさせてもらいました。特に、明治に再登場してからの最初はそんな感じです。後半は世の中の流れが少しまとまってくることもあり、井上も空気を読み、周囲との調和も考えるようになります。ある意味、年齢と共に立場や役回り的に安定したところが出てくるのかな。

-井上は大きな声と豪快な振る舞いも特徴的ですね。

 豪快さや声の大きさといった部分は、やや意識的にやっています。裏のある人間や含みのある人間にはあまりしたくなかった。もちろん政治家なので、言葉とは裏腹に、自分の信念や目指す方向性といった野心を隠し持っている部分はありますが、声を発したときは「これが俺の意見だ」というところを真っすぐに見せたいと。もともと「怒りっぽい」と言われていた方ですが、台本には「怒る」と書かれた部分があまりなかったので、どこかで出せたら、ということも多少考えました。

-ところで、井上は栄一とも深く関わっていきますが、栄一役の吉沢亮さんの印象は?

 一緒にやっていて楽しいですし、ものすごく気持ちが飛んでくる素晴らしい俳優です。僕もすっかり、ファンになってしまいました。例を挙げれば、本番のとき、僕がテストより豪快に演じていたら、それに合わせて吉沢くんのお芝居も変わってきたんです。そんなふうにちゃんと気持ちを受けて、発信してくれる。それはとても心地いい時間で、これまで大河ドラマを引っ張ってきただけあって、吉沢くんにはとても助けられています。

-他の人物では、井上は同じ長州出身の伊藤博文と一緒にいることも多いですが、伊藤役の山崎育三郎さんの印象は?

 最近はすっかり「育ちゃん」と呼ばせてもらっています。僕と育三郎くんの初登場は幕末、井上と伊藤の2人が外国の船に乗り込み、英語で話すシーンでした(第十七回)。2人とも大河ドラマ初出演で初共演なのに、初登場が英語の長いせりふ(笑)。2人で「大変だね」と言いながら撮影を進めたことを覚えています。でも、そのおかげで仲間意識が芽生え、再登場したときは、「よかったね、今回は日本語だよ」と言いながら始めることができました(笑)。

-伊藤との関係で心掛けていることはありますか。

 2人での会話も多い井上と伊藤ですが、僕の中では、年上の井上よりも伊藤の方が切れ者だと思っています。それでも、いい意味でお互いを信頼しつつ、井上を手玉に取れるのが、伊藤という人物。僕としては、そこで手玉に取られていることに気付かないまま真っ向勝負する井上を、2人の関係性で描けたらと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

岡本圭人、岡本健一と2度目の親子共演への思い 「成長した姿を見せられたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月27日

 若村麻由美と岡本圭人、岡本健一が出演する舞台「La Mère 母」と「Le Fils 息子」が2つの劇場で同時上演される。同作は、劇作家フロリアン・ゼレールによる家族三部作のうちの2作で、若村が主演する「La Mère 母」は日本初上演、 … 続きを読む

「光る君へ」第十一回「まどう心」互いの思いとは裏腹に、さらに開くまひろと道長の距離【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年3月23日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月17日に放送された第十一回「まどう心」では、藤原兼家(段田安則)によるクーデター“寛和の変”の事後処理、およびそれに伴う主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の行動が描かれた。  兼 … 続きを読む

【週末映画コラム】4K復元版で「ドル3部作」を一挙上映『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』

映画2024年3月22日

 監督セルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネ、主演クリント・イーストウッドという伝説のトリオが放った「ドル3部作」(「ドル箱3部作」と表記されることも多い)が、マカロニ・ウエスタン誕生60周年を記念し、4K復元版として3月22日から一 … 続きを読む

「生への回帰というのがこの映画の目指したところです」荒木伸二監督、若葉竜也『ペナルティループ』【インタビュー】

映画2024年3月21日

 朝6時、いつものように目覚めた岩森淳は、恋人の砂原唯(山下リオ)を殺した溝口登(伊勢谷友介)を殺害する。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、なぜか溝口も生きている。そして今日もまた、岩森は復讐(ふくしゅう)を繰り返していく。荒木伸二監 … 続きを読む

伊野尾慧、「新しいことに挑戦したい」 ミュージカル初出演で見せる新たな一面【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月20日

 バラエティーや映画やドラマといった映像作品だけでなく、朝の情報番組やトーク番組にもレギュラー出演し、多岐にわたって活躍しているHey! Say! JUMPの伊野尾慧が、4月9日から上演されるブロードウェイミュージカル「ハネムーン・イン・ベ … 続きを読む

Willfriends

page top