「伊藤博文役は、自分の留学経験とリンクする部分があった」山崎育三郎(伊藤博文)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年10月3日 / 12:00

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。主人公・渋沢栄一(吉沢亮)がついに明治新政府で働くことになった。その新政府で栄一と出会ったのが、栄一同様に海外滞在経験のある後の初代内閣総理大臣・伊藤博文だ。演じるのは、昨年は連続テレビ小説「エール」)でも活躍し、今回が大河ドラマ初出演となる山崎育三郎。「自分の経験とリンクする部分があった」と語る伊藤役に込めた思いや劇中での見どころなどを語ってくれた。

伊藤博文役の山崎育三郎

-大河ドラマ初出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

 NHKさんでは昨年、「エール」で、自分がずっとやってきた音楽が生かせる役を頂いた上に、「紅白歌合戦」でも歌うという、素晴らしい経験をさせていただきました。それに続いて、今年は大河ドラマへの出演。大河ドラマといえば、僕がずっとやってきたミュージカルにたとえるなら、帝国劇場の舞台に立つような憧れのステージです。だから、出演が決まったときは、すごくうれしかったです。

-演じる伊藤博文の印象は?

 両親や祖父母には「千円札の伊藤博文よ」なんて言われるんですけど、僕が生まれた1986年にちょうど新札に切り替わってしまったので、見たことがないんです。だから、全くピンとこなくて(笑)。ただ、写真からはひげを蓄えて一見怖そうな雰囲気で、ドシっと構えた印象を受けましたが、今回演じるためにいろいろ勉強してみたところ、ものすごく苦労されていて、泥くさくて男っぽい人だったんだなと。自分がイメージしていた人物とは真逆だったな、というのが最初の印象です。

-留学経験のある山崎さんは、外国で学んだ伊藤と共通点があるように思いますが、演じる上で役立っている部分はありますか。

 伊藤さんは“長州ファイブ”の1人として留学を経験していますが、当時、彼が目にした外国の姿はまさにカルチャーショックで、その影響はものすごく大きかったと思うんです。僕も高校生のときに1年間、アメリカに留学しましたが、留学先が地方の学校で、生徒2千人の中でアジア人は僕だけという環境で過ごしたので、孤独を感じる時間が多かったんです。そういう生活の中で、自分自身も性格的にものすごく変わりましたし、もちろん英語もたくさん勉強しました。正直、差別的な扱いを受けたこともあります。伊藤博文を演じる上で、そういう自分の留学経験とリンクする部分は少なからずあったと思います。

-山崎さんが考える劇中での伊藤の見どころは?

 伊藤は、年上・年下関係なく、人の間に入って、人をつなげていくような役回りを果たします。彼自身が優れた才能を持っているような感じではないのですが、人と人とのつながりをすごく意識していて、フットワークが軽い。だから、彼がいることで話がまとまっていく瞬間が多いんです。難しそうな人の懐にすっと入っていくのもうまいですし。その一方で一見、非常に真面目でりんとした人物をイメージするんですけど、そんなことは全くなく、すごく泥くさく、男くさいところがあり、感情で動いてしまう。僕が今まで出会ったことがないような人物なので、魅力的で面白い役だなと思いながら演じています。

-ミュージカルや歌手など音楽にも携わる人間として、芝居をするときに声の面で特に気をつけていることはありますか。

 今回の作品では、時代背景的にも、それこそ舞台で芝居をするぐらいのエネルギーが必要で、現代劇の場合とは声量が全く違うので、声はかなり出しています。長州言葉も、いろんな音が混ざり合っているのですごく難しい。ちょっと間違えただけで長州言葉に聞こえなくなり、先生から指導を受けるので、稽古でつけてくださった音を確実に自分の体に入れた上で、自分がどう表現したいか、ということを追加していく。そんな流れでお芝居を作っています。

 
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