【インタビュー】映画『DIVOC-12』藤井道人監督「ロンちゃんはみんなの太陽」ロン・モンロウ「皆さんに共感していただけるすてきな作品になったと思います」コロナ禍で挑んだ映画撮影の舞台裏

2021年9月30日 / 06:53

 コロナ禍の影響を受けるクリエーターやスタッフ、俳優たちが創作活動を継続することを目指したオムニバス映画『DIVOC-12』が、10月1日から全国公開される。12人の監督が生み出した12のバラエティー豊かな物語からなる本作で、『名もなき一篇・アンナ』を手掛けたのが、『新聞記者』(19)『ヤクザと家族 The Family』(21)などで注目された映画監督・藤井道人。映画初出演でヒロイン、アンナを演じたロン・モンロウと共に、撮影の舞台裏や映画に込めた思いを語ってくれた。

藤井道人監督(左)とロン・モンロウ

-横浜流星さん演じる喪失感を抱えた主人公とヒロイン、アンナの時空を超えた旅を描いた幻想的な作品ですね。藤井監督が、アンナ役に中国出身のロンさんを起用した理由を教えてください。

藤井 僕たちがこの1年で失ったものって、ものだったり、人だったり、いろんなものがありますけど、僕にとっては、“言葉”というのも大きかったんです。なぜかというと、海外にもたくさんの仲間がいて、海外で作品を撮ることも、自分の中では大切なものでしたから。そういうところから、言葉も性別も違う2人の旅、みたいなものを実験的に描きたいという思いが芽生えてきたとき、ロンちゃんが思い浮かんだんです。日本に来たときから知っていた彼女の持つ空気感が、この映画にぴったりだと思って。

-ロンさんは、オファーを受けたときの感想は?

ロン 最初は「自分にできるのかな?」とすごく不安でした。監督も有名な方ですし、共演する横浜流星さんもとても素晴らしい俳優さんでしたから。でも、撮影前に藤井監督の作品をたくさん拝見させていただき、「藤井監督ならぜひご一緒してみたい」と信頼して撮影に臨むことができました。

-3日間で北海道、沖縄、京都、東京(極力少人数のスタッフ体制+キャストで、かつ全員PCR検査をした上)と日本各地を横断して撮影したそうですが、映画初出演となるロンさんは、現場でどんなふうに撮影に臨んだのでしょうか。

ロン 監督にはとても丁寧に演技指導をしていただきました。最初は難しかったのですが、監督が演技のポイントをいろいろと教えてくださったおかげで、徐々にアンナの気持ちが分かってきて。例えば、沖縄でちょっと明るいアンナを演じるときは、「アンナはロンちゃんのままで」、京都では「静かで落ち着いた雰囲気で」、北海道では「ゆったりとした雰囲気で」と、それぞれの場所に合わせて指示を頂いたので、雰囲気をどんどんつかめて行きました。

藤井 同じ台本で芝居が続きますが、暑い沖縄でお芝居をするときと、朝方の京都で撮るお芝居と、北海道の牧場でしんみりしながら立っているときでは、やっぱり感情も変わりますから。そういうことを伝えていきました。

-そのかいがあって、アンナがとても魅力的に映っていますね。ところで、本作のもう一つの魅力は、3日間で撮影したとは思えない多彩な場所の美しい風景です。ロケ地を選ぶ際に心掛けたことは?

藤井 この1年、僕たちが行きたくても行けなかった場所を選びました。僕たちを待ってくれているはずだった思い出の観光地。でも、今はそこに行くことができない。だからこそ、ロンちゃんと流星が立っているのは、絵葉書のような場所であるべきだろうと。この映画は僕たちからのギフトでもあるので、スクショして新しい絵葉書になってくれたら、という思いもその裏にはあります。さらに、この映画は10分ということもあり、例えば10年後、またつらくなったとき、「ロンちゃんと流星に慰めてもらおう」という見方もできるでしょうし。そういう思いで、2021年現在、残っている場所をちゃんと撮ろうと。

-3日でこれだけいろいろな場所を巡って、ロンさんはどんなふうに感じましたか。

ロン 長距離の移動が多く忙しくて大変でしたが、いろいろな風景を見て、お芝居ができましたので、楽しかったです。

藤井 ロンちゃんはすごくタフで、みんなの太陽でした。ロンちゃんがいたから、みんなも「こんなに移動できないよ」みたいなことは言わなかったし。朝もすごく元気で(笑)。

ロン 朝は強いです(笑)。でも、チームの皆さんに常に気を配っていただいて本当に優しかったので、皆さんと友だちになることができました。皆さんが頑張られていたおかげで、私も頑張ることができましたし。撮影が終わったときは、「これで終わり…?」と寂しくなったぐらいで。それぐらい楽しかったです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

門脇麦、「芝居に対してすごく熱い」田中圭と夫婦役で5度目の共演 舞台「陽気な幽霊」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月2日

 田中圭を主演に迎え、若村麻由美、門脇麦、高畑淳子ら豪華共演者で贈る舞台「陽気な幽霊」が5月3日から開幕する。本作は、20世紀を代表する劇作家ノエル・カワードによるウェルメイド・コメディー。1945年にはデヴィッド・リーン監督により映画化も … 続きを読む

今田美桜「『アンパンマン』のように、幅広い世代に愛される作品に」連続テレビ小説「あんぱん」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2025年4月1日

 3月31日から放送スタートしたNHKの連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、何者でもなかった朝田のぶと柳井嵩(北村匠海)の2人が、数々の荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『 … 続きを読む

坂本昌行&増田貴久がミュージカルで初共演「笑顔になって、幸せになって帰っていただけたら」 ミュージカル「ホリデイ・イン」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月1日

 坂本昌行と増田貴久をはじめとした豪華キャストが出演するミュージカル「ホリデイ・イン」が4月1日から開幕する。本作は、1942年に公開された映画『Holiday Inn』(邦題『スウィング・ホテル』)をもとに舞台化されたミュージカル作品。「 … 続きを読む

藤原竜也が挑む「マクベス」 「1日1日、壁を突破することが目標」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月29日

 2024年5月にスタートした、吉田鋼太郎が芸術監督を務める【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】。待望の二作目となる「マクベス」が、藤原竜也を主演に迎え、5月8日から上演される。藤原に初めて挑む「マクベス」への思いや吉田とのクリエイトに … 続きを読む

竈門炭治郎を演じる阪本奨悟が語る、舞台「鬼滅の刃」の魅力 「生身の人間が演じているからこそ、リアルに共感できる」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月28日

 「週刊少年ジャンプ」で2020年5月まで連載していた吾峠呼世晴による大ヒット漫画『鬼滅の刃』。2020年に初めて舞台化されて以降、シリーズを重ね、4月11日からはシリーズ5作目となる、舞台「鬼滅の刃」其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里が上演される。 … 続きを読む

Willfriends

page top