「伊藤博文役は、自分の留学経験とリンクする部分があった」山崎育三郎(伊藤博文)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年10月3日 / 12:00

-伊藤は明治政府の中で栄一と関わっていきますが、伊藤から見た栄一の存在とは?

 先ほどもお話ししたように、伊藤は人と人とのつながりを大事にして、情に厚く、人間的で泥くさい人です。でも、その一方で、品川の御殿山にあるイギリス公使館を焼き討ちするような攻撃的な一面も持っている。初めて出会ったとき、未遂に終わったものの栄一も似た経験をしていることを知り、「同じ魂を持っているやつなのでは?」と感じて、興味を抱くきっかけになったんです。その点、伊藤には栄一の才能を見抜く力がありましたし、そんな栄一の魅力を伝え、大隈(重信/大倉孝二)さんなどにつないでいく役割を果たすのが伊藤です。そういう意味で、「彼とだったら国を変えていけるんじゃないか?」と、栄一のことは同志のような気持ちで見ています。

-栄一役の吉沢亮さんと共演した感想は?

 吉沢くんとはだいぶ前に映画で共演したことがあり、そのときは好青年かつ美青年という印象だったんです。でも、今回、久しぶりに会ってみたら、男前で整った顔立ちをしているのは変わらないんだけど、渋沢栄一にしか見えない。実は、僕と吉沢くんには、男4人兄弟という共通点があるんです。そういう男くさい環境で育っているので、“男っぽさ”みたいなところが、話していてもすごく相性が合う感じがして。彼の心の内には、根性があって男くさい、渋沢栄一に近いものがあるんじゃないかなと。だから渋沢栄一にしか見えないんでしょうね。男から見てもかっこいいな、と思います。

-そうすると、伊藤と栄一の関係に、山崎さんと吉沢さんの関係が重なる部分もあったのでしょうか。

 そうですね。劇中で伊藤が栄一に対して興味を抱くシーンがあったんですけど、そこで2人の息が合う瞬間というか、掛け合いみたいになる瞬間というのは、相手が吉沢くんだからこそ生まれたお芝居じゃないかと思います。それほど付き合いが長いわけではないのに、お互いに信頼して表現をぶつけ合うことができる。それはやっぱり、根本的に男っぽさをお互いが持っているからかなと。だから、一緒にやっていてすごく気持ちいいです。

(取材・文/井上健一)

伊藤博文役の山崎育三郎(左)と井上馨役の福士誠治

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

-堤さんと高橋さんは高橋さんのドラマデビュー作以来のタッグと聞いています。堤さんは高橋さんの吉良上野介にどのような期待を寄せていますか。 堤 ぴったりだと思いますよ。生き馬の目を抜く芸能界で酸いも甘いも知り尽くしていますから。デビューの瞬間 … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

-治済に対する仇討ちのため、対立関係にあった蔦重と松平定信(井上祐貴)がタッグを組む展開にも驚かされると同時に、思わず胸が熱くなりました。 藤並 白河藩に戻った後の定信は、それまでとは打って変わって、大田南畝や山東京伝に本を書かせているんで … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

-戦場で、田丸が絵や漫画を描くことにどのような意味があったと思いますか。  功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものが … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  -雰囲気のいい現場だったようですね。  中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問が … 続きを読む

Willfriends

page top