【インタビュー】ミュージカル「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」鈴木拡樹&三浦宏規 初演の公演中止を経て「あのときの時間が再び動き出す」

2021年8月12日 / 12:00

 2020年3月に公演途中で中止となったミュージカル「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」が8月26日から再演される。本作は、映画『リトルマーメイド』や『美女と野獣』などの音楽を手掛け、アカデミー賞をはじめ、数々の賞を受賞したハワード・アシュマンとアラン・メンケンの名コンビが、1960年の同名ホラー映画をミュージカル化。20年の公演に続き、主人公のさえない青年・シーモア役をWキャストで演じる、鈴木拡樹と三浦宏規に、再演が決まった思いや意気込みを聞いた。

三浦宏規(左/ヘアメーク:AKi、スタイリスト:小田優士)と鈴木拡樹(ヘアメーク:AKI、スタイリスト:中村美保)

-再演が決まったときの心境を聞かせてください。

鈴木 昨年は、一度、幕を開けることができましたのでホッとする思いもありましたが、作品を届けることができなかったお客さまがたくさんいらっしゃいました。(当時)完全に納得したかというとそうではありませんでしたが、今回、1年という短いスパンで再び上演できる機会を頂けて、あの日の続きができることをうれしく思っています。あのときの時間が再び動き出すという感覚で、今、稽古に臨んでいます。

三浦 昨年は、さまざまなカンパニーが幕を開けることすらできないという状況だったので、その中で12回上演できたことは本当によかったと思います。ですが、地方公演もかなわず、途中で中止になってしまったことには残念で悔しい気持ちが強くて…。自粛期間中もその悔しい思いが湧いてきました。あれから1年と少しですが、熱が冷めやらぬままに再演できることは非常にうれしく思っています。

-昨年の公演では、手応えは感じていましたか。

鈴木 作品の意図するシーンで笑いが起きていましたし、楽しさを継続してうまく流れていったので、ステージからもお客さんの笑顔が見られましたし、頂く拍手もすごく温かった。そういう意味では、一つの正解として成り立っていたのかなとは思います。

三浦 僕も、やってきたことがお客さんに届いているんだなという感覚はありました。公演数が少なかったからこそ、自分の記憶が美化されているのかもしれませんが(笑)。

鈴木 個人の課題は山積みだったしね。

三浦 それはもうなくなることなんてないですよね。ですが、12回しか公演できなかったので、僕たちだけでなく、お客さまの中でもプレミア感があったんだと思います。

-「個人の課題」とは?

鈴木 僕は、これまでミュージカルにあまり出演してこなかったので、歌の強化をしたいと思っていました。例えば、ビブラートという歌唱法を自然な表現として出すのは僕にはまだ難しかったんです。なので、昨年はストレートに感情をぶつけ、真っすぐに歌い上げていたのですが、やはりビブラートで歌った方が伝わりやすいところもあるので、今回はそれにも挑戦して、形として取り入れられたらと思っています。

三浦 僕はもうあり過ぎて、あり過ぎて…。1公演が終わるごとに、あそこが、ここがといっぱい出てくるんです。それはどの作品でもそうですし、それが楽しさでもやりがいでもあるのですが。特に今、稽古をしていると山のように出てくるので…。より良いものを作るためにも、もっとたくさんの自分の粗を探して、より深く考えて稽古をしていきたいと思っています。

-それぞれが演じるシーモアの魅力はどこにあると思いますか。

鈴木 三浦くん自身が持っている柔らかさがシーモアにも表れていて、それが人を引きつけると思います。お客さんが愛しやすいシーモアだからこそ、応援しやすいと僕は分析しています。

三浦 拡樹さんのシーモアには、知的さを感じます。シーモアはそれほど賢い人物ではないと思いますが、植物に関してだけは詳しい。拡樹さんが演じるとその知識に説得力があるんです。それ以外は、挙動があまりにも不思議で不恰好なので、その対比も楽しいです。

-ところで、三浦さんは、昨年、本作に出演したことをきっかけにフラワーアレンジメントを始めたそうですね。

三浦 そうなんです。それまで僕は、お花屋さんに行ってお花を買うという発想もない人生だったんですが、昨年、役作りのために、お花屋さんに行って、お花を買ってラッピングしてもらったことがあったんです。そのときは、お花を飾る花瓶すら持っていなかったので、ペットボトルに入れていたほどだったんですが、この作品に出演したことで、僕の中でお花屋さんに入るという敷居が非常に下がったように思います。なので、お花屋さんにフラッと行って、気になったお花を買うことができるようになったのは、この作品のおかげです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

Willfriends

page top