【インタビュー】「喜劇 老後の資金がありません」渡辺えり&高畑淳子が語る「幸せな老後」の定義

2021年8月10日 / 08:00

 渡辺えりと高畑淳子が舞台初共演でダブル主演する「喜劇 老後の資金がありません」が8月13日から開幕する。本作は、垣谷美雨のベストセラー小説『老後の資金がありません』を舞台化した喜劇。誰もが避けることのできない“老後の資金”という問題を、大いに笑って泣いて、共感できる作品に仕上げた。渡辺と高畑に本作への意気込み、さらには「老後問題」について赤裸々に語ってもらった。

渡辺えり(左)と高畑淳子

-本作の出演が決まったときの心境を教えてください。

渡辺 私も老後の資金がないんです(笑)。新型コロナで大赤字を出したので、本当にどうしようかなって悩んでいて…。なので、「本当に老後の資金がないな」と思いながらこの芝居をやることになりますが、それもまた興味深いですし、楽しみです。高畑さんとは以前から共演したいと思っていたのですが、なかなか機会に恵まれず、やっと共演できたことがすごくうれしいです。今回は、歌も踊りもある作品なので、夢のように明るく演じたいなと思います。こういう時代だからこそ、暗くならない、楽しい芝居を目指して頑張っていきたいと思います。

高畑 えりさんはエネルギッシュな方ですし、今回の公演日程もなかなかエネルギッシュなので、自分の体力と帳尻を合わせながら、最後までお客さまに満足していただける作品になるよう頑張ります。今、この時代に、人が一番枯渇しているのは心の滋養だと思います。先日、私、映画館の客席に座って、スクリーンを見ただけで泣いてしまうということがありました。それぐらい、劇場には不思議な力があって、強さを与えてくれる魔法のような場所なんだと思います。それと同じように、今回、新橋演舞場と大阪松竹座で、お客さまにも何かを見いだして帰っていただける作品になればと思います。

-金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が、老後の資金として2000万円必要だというシミュレーションを発表して話題になったこともありましたが、お二人は、「老後の資金」について、どんなことを考えていますか。

渡辺 そのニュースが話題になった当時、私の周りの演劇人で2000万円持っている人は誰もいなかったんです。だから、みんな焦っていて「どうするんだ」って飲み会の話題になっていました。それで、私も本気で2000万円をためようと思っていたら、そのうちに「老後は2000万円では足りない」と言う人も出てきて…じゃあ、どうすればいいんだろうって、すごく悩んだ覚えがあります。その後、コロナの影響を受けて、そんなことを言っていられない状況になってしまって、今はもうマイナスになっていく一方です(笑)。そんな時に「老後の資金がありません」という芝居をしなくちゃいけないんですから、すごく責任を感じています(笑)。

高畑 私はすごく用心深いタイプなので、意外とため込むタイプなんです。でも、「老後」ってもっと精神的なものが大切なんだと思います。お金がいくらあっても、悲しいことも絶対に起きるので、心の根っこが深くないと耐えられないと思うんですよね。だって、人間って絶対に死ぬのが分かっていて生きているんですよ? 冷静に考えれば、そんな恐ろしいことがよくできるなって思います。強く生きないと、自分がどんどん朽ち果てていくということを、なかなか耐えられないと思うので、死を迎えるための心の準備というのも私は必要なのかなと思います。

-では、お二人が考える「幸せな老後」とは?

渡辺 「幸せな老後」という言葉からは、テレビのドキュメンタリー番組で放送しているような海外の大家族が思い浮かびます。親戚みんなが集まって、孫が何十人もいて、みんなで暮らしていたり、お祝いをしている姿は、幸せそうだな、と。だから、私には幸せな老後はないと思っています。私は1人ですし、のたれ死んじゃうのかなと心配にもなります。「演劇おばさん」というあだ名で呼ばれていて、小劇場の客席で死んでいたとなったら怖いですよね(笑)。お金も底をついていて、なけなしの3千円を持って、芝居を見に小劇場に通っていて、ある日、「客席で渡辺が死んでるよ」って(笑)。

 
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