【インタビュー】映画『アジアの天使』池松壮亮「本当に家族のようなチームでした」 石井裕也監督「日本では見せられないことが、海外だから見せられた」初挑戦したオール韓国ロケの手応えを語る

2021年7月1日 / 07:30

-石井監督は、これまで『ぼくたちの家族』(14)、『生きちゃった』(20)などで繰り返し家族の問題を描いてきましたが、今回は2組のきょうだいが疑似家族的なつながりで結ばれていく話で、一歩先に進んだ印象があります。そこにはどんな思いが?

石井 自主映画時代には、疑似家族をたくさん扱っていたんです。ただ、当時それでいろんなことを言われて…。「おまえは自分の家族に対する欠落感を埋めるために疑似家族を作っているんだ」とか…(笑)。それで恥ずかしくなって、一時やめていたんです。

-なるほど。

石井 でも、最近になってそういう足かせから解放されたんです。特に今回は韓国に行ったことで逆に素直になれたというか。日本では見せられないことが、海外だから見せられた、というところがあると思います。そういう意味では、僕の中にある強烈な本質が出ているんじゃないかな…と。そういうことの一環で、「既存のルールを無視して、みんながそれぞれの痛みによって結び付いていく」というドラマをやりたくなったんだと思います。

-池松さんは、そうした石井監督の家族の描き方を見て、どんなことを感じましたか。

池松  “家族”の価値が薄れていく中、その在り方はますます従来通りにはならなくなると思いますし、それでいいと思っています。それでも人間は、形を変えたコミュニティーや社会を形成しながら誰かと手を組んで生き延びていくものだと思います。ウイルスや争いやAIの躍進により、これからも人はどんどん孤立していってしますような気がしていますが、その再生の兆しがあるとすれば、この映画における家族のようなもの、ゆるやかな団結によって希望を得ていくことなのではないかと感じていますし、それを二つの国の家族にフォーカスして描いたこの作品は、非常に先進的かつ優れていて、挑戦のしがいがあったと思います。この作品を送り出す者の1人として、目の前の人とコネクトし続けることを諦めず、いかに最後まで向き合えるかが、大きなテーマでした。出来上がった作品を見たときは、自分が携わった作品であるにもかかわらず、おかしいぐらい感動させられました。

(取材・文・写真/井上健一)

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