【インタビュー】舞台「月とシネマ」中井貴一 俳優を続けてこられたのは「両親の力以外の何ものでもない」

2021年4月25日 / 08:00

 旧PARCO劇場のクロージングシリーズで上演された、2016年の「メルシー!おもてなし ~志の輔らくごMIX~」に主演した中井貴一が、新生PARCO劇場のオープニング・シリーズのラストを飾る舞台「月とシネマ―The Film on the Moon Cinema―」にも主演、舞台は17日から上演される。(※新型コロナウイルスの影響により一部公演中止、4月30日以降の開催は改めて発表)

 作・演出は「メルシー!おもてなし」以来のタッグとなるG2。中井は、昭和の古き良き映画館経営者の息子に生まれ、昭和に育ち、平成にもまれながら成功を収めたフリーの映画プロデューサー並木憲次を演じる。地方にある実家の映画館の相続のために、故郷に帰った並木がたどり着いた父親の真実とは…? 主演の中井が、本作に懸ける意気込み、コロナ禍で感じたこと、そして両親への思いなどを語った。

並木憲次役の中井貴一

-中井さんは、この舞台に企画段階から関わってこられたそうですね。

 最初に、「どういう作品をやりたいか」ということを聞いてもらえたんです。もともと、新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出たときに、僕たちの商売が一番回復するのが遅い商売になるだろうな…と予想していました。そして、どうにか演劇が上演できるとなったとき、G2さんと打ち合わせをして、僕自身は「ウイルスが怖いのではなくて、ウイルスによって人間の心が殺伐とすることが一番怖いと思っている」と伝えました。「僕らが演劇で何ができるのか」と考えたときに、自分たちのやりたいことだけをやればいいのではなく「1時間、2時間でも心が動く“何か”を作れないか」と思いました。「ジワーッと何かに包まれて劇場を後にするような作品を、今回は特にやりたい」と伝え、G2さんがこの企画を考えてくれました。

-今回、女性監督役に貫地谷しほりさん、新人プロデューサー役に藤原丈一郎さん、並木の娘役に矢作穂香さん、映画技師役にたかお鷹さんなど、幅広い世代の役者が集まりました。稽古場の雰囲気はいかがですか。

 面白いですよね。70代、50代、30代、20代と本当に幅広いのですが、20代の人たちに言葉が通じないこともあって(笑)。たとえば、実際言ったものとは違うけど、「棚からぼた餅」みたいな言葉を使うと、若い2人が「??」みたいな顔をして、「『棚からぼた餅』とはどういうことですか?」と。そういうことが実際に稽古場で起こっている。それを見ていて、すごく面白い。みんなバラエティーに富んでいて、貫地谷さんがちょうど間に入って、僕らのつなぎ役をしてくれるので、それはとても助かっています(笑)。

-並木は、知らず知らずのうちに、父親と“似た道”をたどっていますが、中井さんご自身は、父親(俳優の佐田啓二)と似ていると感じたことはありますか。

 僕は本当に幼い頃…2歳半の頃に、父親と別れてしまったのですが、昔はよく母親から「性格がそっくりだ」と言われました。あと「みそ汁の飲み方が似ている」とも。でも不思議ですよね。実際は見て育っていない。何で似るのか分からないけど、DNAの中に「みそ汁の飲み方」という引き出しがあって、そこは似るのかなと思ったりしましたけど(笑)。

-それは面白いですね。

 父は39歳の時に亡くなり、僕ははるかにその年を超えたわけですが、周りの人に「似てきたね~」と言われることが多いんですよ。これも不思議ですよね。39歳の父と、なんで今の僕が似てくるんだろうと(笑)。決して、みんなは60歳のときの父を知っている訳ではないのだけど、外見というよりも、内側から出てくる雰囲気だとか、そういうものが似てきているということなんでしょうかね。

-俳優という共通点もありますね。

 この仕事を始めたのは、自分の父がどんな仕事をしていたのかを知りたいと思ったのがきっかけの一つでもありました。自分が死んだときに、もし、(指で天を指しながら)あそこで会えるとしたら、「39歳からの世界では、こういうことが役者としてあったよ」と話せるように、今は土産話をたくさん作っておきたいという気持ちもあるかもしれません。

-お父様の出演作は幼い頃から見ていましたか。

 見ていました。でもそれは作品を見るというよりは、父を追っている感じでした。「おやじの声が聞きたい」とか、「おやじの動きが見てみたい」とか。そういうことのために、映画を見ていた気がします。父の記憶は全くないんです。湯飲みを持っている父の手の感じの記憶がちょっと残っていたりするぐらいで。

-この仕事を続けていく上で、頭の中のどこかにお父様の存在がありますか。

 常にです。多分、僕が今まで仕事をやってこられたのは、両親の力以外の何ものでもないと思っていて。自分の才能なんて微々たるもので、本当にあの人たちが導いてくれているとずっと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

グレッグ・ターザン・デイビス「とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした」『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』【インタビュー】

映画2025年5月15日

 トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッ … 続きを読む

研ナオコ、認知症のおばあちゃん役で9年ぶりの映画主演「主演女優賞を狙ってます(笑)」岡﨑育之介監督「研さんの人生の奥行きがにじみ出た」『うぉっしゅ』【インタビュー】

映画2025年5月12日

 人生に迷いながらソープ嬢として働く若い女性・加那と、彼女に介護されることになった認知症の祖母・紀江の交流を明るくポップなタッチで描いたユニークな映画『うぉっしゅ』が絶賛公開中だ。  本作で、加那を演じる若手注目株の中尾有伽と共に、紀江役で … 続きを読む

Willfriends

page top