エンターテインメント・ウェブマガジン
1920年代に実際に起こった、凶悪な伝説的犯罪を土台にした綿密な心理劇「スリル・ミー」が4月1日から上演される。出演者は、“私”と“彼”のたった2人。舞台上には、1台のピアノが置いてあり、その美しいメロディーとともに、濃厚な時間が紡がれる。世界中で何度も上演されてきた本作だが、日本では2011年の初演以降、再演を重ねている。今回の公演では、田代万里生・新納慎也、成河・福士誠治、松岡広大・山崎大輝の3ペアによって上演される。10年の節目に実施されたオーディションで選ばれた、フレッシュな松岡と山崎に、本作への意気込みを聞いた。
松岡 この作品は、ブロードウェーでは、実在の人物の名前をそのまま使って演じられるのですが、日本では「私」と「彼」という役名です。固有名詞を避けることによって、普遍的なものを描いていると感じました。誰にでも当てはまる物語ではないと思いますが、「私」と「彼」の衝動や一過性の感情などは感じたことや考えたことがある人も多いのではないかと思います。
山崎 魅力がたくさん詰まった作品だと思いますが、広大くんが言ったように、役柄にあえて名前を付けないことで、実際にあった事件であるという以上に、皆さんに訴え掛けるものがあると思います。もちろん、歌などの直感的に楽しめる魅力もあります。
松岡 ありました。台本を読んで、僕は「彼」ではないな、と。まず、身長的なものもありますし(笑)。それに、心情的にも「私」に通ずる何かがあるとは思いました。僕も誰かに追随することが多いんです。それで流されてしまうこともあるので、そういう意味では共感をできるところもありました。
山崎 僕も、自分は「彼」だろうと感じながらオーディションを受けました。「彼」の、一つのことを信じ抜いてしまう、この作品ではあえて「しまう」という言い方をしますが、そんなところは共感できる部分もあります。それから、「彼」はあまのじゃくなところがあって、「私」を邪険に扱っているにも関わらず、離れたいわけじゃなかったり、結局どこかで必要としていたりという複雑な内面を持っていますが、そこも理解できました。
松岡 技巧に走らないことです。先日、(演出の)栗山(民也)さんから、僕たちは3ペアの中で一番若いので、「生の暴走・若さの暴走」を表現してほしいというお話がありました。テクニックや演じる技術に走らずに、「リアリズム」ではなく「リアル」にしたいと思っています。
山崎 僕は、全編において、表には見えない駆け引きやお互いの腹の探り合いが大事だと思っています。たとえ、観客の皆さんにその駆け引きが直接は伝わらなかったとしても、僕たちが表には出ないところで、どれだけ駆け引きをしているかによってこの作品の面白さは変わってくるんだと思います。なので、そこは意識して演じたいです。
松岡 そういう意味では、説明し過ぎないことも大事だよね。この作品は、余白や余裕があった方がいいと思うので、僕たちは分かりやすくはしません!
松岡 やっぱり「若さ」はあると思います。
山崎 「彼」も「私」も未熟な部分があるので、そこは若いからこそ表現しやすいと思います。もちろん、僕たちが未熟だということもありますが。
松岡 それから、危うさやもろさ、稚拙さを表現できればいいなと思います。彼らを忠実に、うそがないように演じたら、きっとそうなると思っています。
松岡 水が飲めないことです(笑)。大輝くんはちょこちょこ袖に戻るので水を飲んでいますが、僕は本当に飲めない(笑)。それから、2人で起承転結を作らなければいけないので、集中力と相手のせりふを聞く傾聴力、感じる力が必要だと改めて感じています。
山崎 僕は袖にはけるので水は飲めますが(笑)、でもそこでピンと張っていたものが緩んでしまう感覚があるので、それは大変なところです。この作品は、「私」が「こんなことがありました」と話した後に場面が飛んで、時も場所も変わるというシーンがあります。はけている短い時間に、自分の中で切り替えて「彼」としてステージに戻らなければならないので、自分の中での戦いでもあります。
松岡 瞬発力というか、俳優の想像力が必要になるよね。そこは難しいところではありますが、演じていて楽しい部分でもあります。
ドラマ2024年4月20日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月14日に放送された第十五回「おごれる者たち」では、藤原道長(柄本佑)の長兄・道隆(井浦新)を筆頭に、隆盛を誇る藤原一族の姿やその支配下の世で生きる主人公まひろ(吉高由里子)の日常が描かれた。 … 続きを読む
映画2024年4月19日
長野県の自然豊かな高原を舞台に、代々つつましい生活を続けてきた住民の、レジャー施設の開発をめぐる生活の変化を描いた『悪は存在しない』が、4月26日から全国公開される。本作で第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で銀獅子賞に輝いた … 続きを読む
映画2024年4月19日
『あまろっく』(4月19日公開) 理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。 ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2024年4月19日
上演の度に大きな話題を呼ぶミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の3年ぶり6度目の上演が決定。5月16日に東京・新国立劇場 中劇場で幕を開ける。 本作は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミ … 続きを読む
映画2024年4月18日
映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む