【インタビュー】舞台版「オリエント急行殺人事件」椎名桔平「新しいポアロを作っていきたい」

2020年12月6日 / 08:00

 アガサ・クリスティ生誕130年となる2020年、演出・河原雅彦、主演・椎名桔平による、舞台版「オリエント急行殺人事件」が上演される。本作は、1934年に英国で出版された後、名探偵エルキュール・ポアロが軽妙に事件を解決するさまが世界中の人々を魅了し、幾度もドラマ化、映画化されてきた。舞台版は、2019年に日本で初演された。ポアロを演じる椎名に、作品への思いや、役作りについて聞いた。

エルキュール・ポアロ役の椎名桔平

-実に2年ぶりの舞台出演になります。出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

 2年前に舞台に立たせていただいたときも、5年ぶりだったんです。今回も久しぶりの舞台になってしまいましたが、この作品に出演させていただけることは、大変光栄に思っています。僕にとって、この作品は、新しいチャレンジです。ポアロのイメージは自分とは一致しなかったものですから、果たして自分にできるのかという思いもあります。原作のファンの方も、映画のファンの方もいらっしゃいますが、その方たちがこの作品を、そしてポアロという役を新鮮に見てもらえればと思って、今、稽古に励んでいます。

-この作品の魅力をどこに感じていますか。

 1934年当時、アメリカやヨーロッパから見たら、東洋は神秘的な土地だったと思います。そんなミステリアスな異国に向かう、オリエント急行もまた、独特の世界観があり、それが魅力の一つだと思います。それはある意味、人間が本来持っている「見果てぬ地への憧れ」にも共通するものなんじゃないかな、とこの作品を読んで感じました。物語的なことで言えば、すでに多くの方がこの作品の結末を知っていると思いますが、出版された当時は、誰も想像できない結末だったはずです。これだけ斬新なミステリーはなかなかない。その斬新さは色あせないものではないでしょうか。

-ポアロは、大変有名なキャラクターですが、現在、椎名さんはどのようにこの役を作り上げていきたいと考えていますか。

 今(取材当時)、稽古真っ最中なのですが、まだ、あまり決めつけないで、稽古の中で何が生まれてくるのかを考えながら演じている段階です。稽古が終わって自宅で夜に台本を読んでいると「こうしたらどうかな」というアイデアが生まれてきて、でもそうすると最初から演技を変えないといけないぞ、とか(笑)。そんなことを日々、考えて、試しています。

-演出の河原さんとは今回、初めてのタッグということですが、演出を受けてどのような印象がありますか。

 演出の仕方がとても優しく、丁寧な方です。ご自身でも演技をされているので、気持ちの出どころを理解した上で演出をつけてくださいます。なので、俳優としてはとても理解しやいと感じました。それから、直接お伺いしたことはないですが、河原さんは「言葉」に対して強いこだわりや独自性があるように思います。昨年、初演を成功させているという裏付けもあり、すぐに信頼感が持てました。

-舞台作品にご出演する思いも聞かせください。椎名さんは映像作品でも活躍していますが、定期的に舞台に出演したいという思いがあるのでしょうか。

 僕よりも舞台を好きな方もたくさんいらっしゃいますし、舞台を主戦場にされている役者さんもたくさんいらっしゃる。その中で、僕が出ていくのはおこがましいという気持ちもあって、なかなかコンスタントに出演はできていないのが現状です(笑)。ただ、先日、鹿賀丈史さんが出演されていた、ミュージカル「生きる」を見に行き、新しいミュージカルの表現に感動し、改めて舞台作品への思いも強くなりました。僕も音楽の勉強を続けていけば、いつかミュージカルにもチャレンジできる機会があるかもしれない、それも楽しんじゃないかなと、そんなことも考えたりしました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top