【インタビュー】「連続ドラマW 神の手」椎名桔平「この作品を通じて、安楽死の問題を疑似体験してほしい」

2019年6月19日 / 12:00

 人生100年時代、超高齢化社会の到来が間近に迫る今、切り離すことのできない問題が、終末期医療、そして安楽死である。WOWOWプライムで6月23日から放送開始となる「連続ドラマW 神の手」(全5話 第1話無料放送)は、現役の医師でもある久坂部羊の小説を原作に、安楽死の問題に迫った医療サスペンスだ。末期がん患者とその家族が苦しむ姿を目の当たりにした外科医・白川泰生は、苦渋の決断の末、安楽死を実行する。だが、その行為はやがて医学界や政界、さらには社会全体を巻き込む騒動へと発展していく…。主人公の白川を演じる椎名桔平が、作品に込めた思いを語ってくれた。

主人公の医師・白川を演じた椎名桔平

-この作品では、第1回の冒頭から安楽死の場面が登場します。演じてみていかがでしたか。

 きつかったです。撮影は台本通りの順番で行いましたが、これが最初か…と。もちろん、安楽死なんて見たこともないし、仮に経験があったとしても、人や病状によって違うでしょうし…。どれほど苦しみや痛みがあって、希望が失われた状況なのか…。現場の空気や相手役のお芝居、いろんなことを肌で感じながら、ちょうどいいところを探っていった感じです。

-安楽死について問題提起をするような作品ですが、出演に際して、決断を要することはありませんでしたか。

 その点については、心配していませんでした。以前、同じ久坂部先生の原作で「破裂」(15)という作品をやらせていただき、その世界観を経験していましたから。つまり、個人的なところから物語が始まり、社会を巻き込む論争に発展、そこに「是か非か」という倫理観の問題が関わってくる。それが今回は、“人の尊厳”です。ただ、最終的には結論を出すのではなく、「答えはあなた自身で探してください」という形で決着する。今後訪れるであろうこんな社会に向けて、この作品を通して考え、自分なりの思いを見詰めてみよう、ということです。とはいえ、やはり答えがないからこそ、難しいテーマだとは思いました。

-そういう難しい作品に挑戦する上で、この作品も含めて、出演を決める際に意識していることは?

 エンターテインメントは、人を楽しませる世界。だから、まずは自分が楽しみたいですよね。一生懸命楽しんで、一生懸命いい作品を作る。それを楽しんでもらいたい。演じるということはある意味、僕でない人間を作るということ。その役に対して、自分がどう楽しめるか、どうチャレンジできるか。僕にとっては、“チャレンジ=楽しみ”。だから、チャレンジできる役というのは、大きなポイントです。

-なるほど。

 それともう一つ、僕はやっぱり人間ドラマが好きなんです。人間を知りたいから。そういう意味では、演じることで疑似的にいろいろな職業や人を体験できる。お医者さんなんて、なったことがないのに、もう何度も体験している(笑)。役者というのは、そういう職業。だったら、それを楽しまないでどうするんだと。こういう人間関係の中にいたかった、生まれ変わったらこういう職業に就いてみたい…。そんな役と出会えたら、最高ですね。

-では、椎名さんにとって、この作品でのチャレンジとは?

 主人公の白川が、特別な技術を持った医者ではないところです。医療ものには、スーパードクターが多いですよね。だけど、白川は最初に安楽死を選択したというだけで、特別なものは描かれていない。そんな主人公をどう演じようかと思いましたが、逆にすごく新しいなと。そんな人が、医療界や政界から利用されるほどの人物になってしまう。医者を主人公にして、そういう目線で物語を作れるのは、久坂部先生自身が医者だから。他の人では、なかなかそういう発想は出てこないと思います。そこがまず、面白かった。

-椎名さんが感じた白川の魅力とは?

 何もないと言いつつ、医師としての自負や倫理観に対する純粋さには、並外れたものがあります。人間、年齢とともにそういうものが甘くなっていきがちだけど、彼には全てを敵に回しても、そこだけは譲れないという思いがある。その上、高齢者の医療制度や終末期医療について、とても深く考え、実直に医療に取り組んでいる。やっぱり、日常的に生死と向き合う現場にいらっしゃる方はすごい。そういうところが彼の魅力なんだろうなと。とても僕にはまねはできそうにありません。僕がよく知るお医者さんにも、真面目に医療に取り組んでいる方がいるので、どこか通じるものがあるなと思い、その方を思い浮かべたりもしました。

 
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