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仲野 撮影初日、吉岡さんと初めて向き合ったときに、「強っ!」と思ったんですよね。「うわ、ことね強い!」って。
吉岡 (笑)。
仲野 それはもちろん、たすくとことねという関係性もあったと思いますが、それ以上に、吉岡さんから気迫みたいなものを感じたんです。吉岡さんがどんなふうにこの作品を捉えているのか、事前に話をする時間がなくて不安だったんですけど、目を見たら一瞬で分かったんです、本気で来てくれてるって。たすくが「圧倒的にかなわない」と思うようなたたずまい。母としての覚悟や女性の強さを感じさせる中に、はかなさもあって…。そういうものをはらんで現場に来てくれたので、本当に感謝しかありませんでした。
吉岡 そう言ってもらえるのは、すごくうれしいです。私もプレッシャーを感じて現場に行っていたので…。この作品に懸ける監督の思いや題材の難しさがある上に、シーン数もそれほど多くない中で、きちんと影響を与えなければいけない。最初に撮影したのは、冒頭の「子どもが生まれた直後なのに、破局寸前」みたいな場面だったんですけど、物語の軸になる部分だったので、かなり悩みながら現場に入りましたから。悩み過ぎて、頭が痛くて、熱くて、はち切れそうでした(笑)。
仲野 世の中には、「誰かが決めた平均点」ってありますよね。その平均点にちょっと追いつかない人を、すごくいとおしく描くことができる人だな…と。それは多分、人間に対する期待とか愛情があるからだと思うんです。僕は今まで、これほどスタッフに愛された新人監督に出会ったことがありません。みんな監督と脚本を信じて、この映画を作っている。そういうところが、すごく魅力的。このタイミングで、同年代の映画作家に佐藤監督がいる。これ以上、心強いことはありません。
吉岡 言いたいことがそっくりで、びっくりしました(笑)。本当に、人が見落としてしまう部分とか、切り捨ててしまう部分を、絶対に切り捨てない。なんなら、ゴミ箱から拾って「これ、まだ使えるよ」って、くしゃくしゃになった紙を伸ばして、メモ帳に使ったりできる人。そういう印象です。本当に優しい人だから、撮れる映画だな…と。完成した映画を見ても、ものすごく佐藤監督を感じる。同年代にこういう方がいらっしゃるのは、本当にうれしいことだし、そんな方の作品に出られたことを、誇らしく思います。
(取材・文・写真/井上健一)
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