【インタビュー】『泣く子はいねぇが』仲野太賀「等身大の自分を余すことなく表現できると思った」吉岡里帆「プレッシャーで、頭がはち切れそうでした(笑)」同い年の2人が真正面から向き合った撮影の舞台裏

2020年11月19日 / 10:00

 仲野太賀と吉岡里帆。人気と実力を兼ね備えた同い年の2人が、真正面から芝居で向き合った映画が公開される。大人になり切れない青年の成長を温かなまなざしで見詰めた『泣く子はいねぇが』(11月20日(金)公開)だ。舞台は秋田県の男鹿半島。娘が生まれたばかりの青年たすく(仲野)は、伝統行事ナマハゲ参加中に泥酔し、取り返しのつかない失敗をしてしまう。妻・ことね(吉岡)から愛想を尽かされ、逃げるように上京したたすくは、2年後、自分の失敗と向き合い、家族の絆を取り戻そうと帰郷するが…。たすくとことねの複雑な心情を巧みに表現した2人の熱演は、見る者に強い印象を残す。その裏にあったものは何か。撮影の舞台裏を聞いた。

吉岡里帆(左)と仲野太賀

-お互いに、共演すると知ったときの感想は?

仲野 うれしかったです。吉岡さんとは同い年で、「ゆとりですがなにか」(16)で初めてご一緒させていただきましたが、そのときは、一緒にお芝居をする機会が少なかったんです。だから、この作品でご一緒できると聞いて、素直にうれしかったです。こんなに面と向かってお芝居するのは初めてなので、すごく濃い時間を過ごせるんじゃないかな…と。

吉岡 「太賀くんが主役」というのも、この作品を「やりたい」と思った理由の一つなんです。同い年ですけど、出演作を見るたびに、「こういう作品を手繰り寄せる人なんだ。いいなぁ…」と、うらやましく思っていたので。そういう憧れの相手でもあるし、「一緒に仕事をしたい」とずっと思っていたので、うれしかったです。

-それぞれ、演じる上で、どんなふうに役を捉えていましたか。

仲野 たすくは、すぐに楽な方、楽な方へと行ってしまい、ここぞというときに逃げてしまう、「甘え」のある役だと思っていました。それだけ聞くと、「どうしようもないやつ」と思われそうですが、ことねや娘に対する愛情がちゃんとあるんだという、「切実さ」みたいなものが映れば、たすくという人間が浮き彫りになるんじゃないかな…と。一緒のシーンは少ないですけど、2人のことを思わないシーンは一つもなかったですから。ずっとその思いを抱えながら、たすくとしていることを心掛けた感じです。

吉岡 たすくは、父親になれずにもがき苦しんでいますが、ことねも同じです。突然母になったことを受け止め切れていない。たすくに対しても、向き合いたい気持ちはあるんだけど、向き合えない。なぜなら、もっと向き合わなきゃいけない、子どもという存在ができてしまったから。多分、本人も気付いていないレベルだと思うんですけど、そういう“悩み”みたいな部分は、大事にしたいと思っていました。

-たすくもことねも、本当にいそうな人に見えるところが素晴らしかったです。

仲野 自分が20代に入ってから、漠然と抱えているモヤモヤみたいなのがずっとあるんです。「なんでもっとうまくやれないんだろう」とか「なんでもっと大人でいられないんだろう」という感じで、10代の頃の気持ちが、今も心の中に図太く横たわっている自覚がある。たすくも、父親の自覚がないまま父親になってしまった男で、求められたものに対して応えられなかった自分、応えたい気持ちはあったけど追いつかなかった自分、みたいなものがすごく近い気がして。だから、この脚本を読んだとき、「今の等身大の自分を余すことなく表現できる」と思ったんです。

吉岡 ことねに関しては、佐藤(快磨)監督がきちんと女性の意見をくまれた部分が大きいと思います。初めは、もっと包み込むような優しさがあって、「本当は今もたすくのことを愛しているんだけど、仕方なく拒絶する」という“男性が夢見る女性像”みたいな感じだったんです。だけど、そこから周りの女性の意見を取り入れていったらしく、脚本のニュアンスもどんどん変わっていって。最終的には、はっきりと拒絶するキャラになっていたので、演じる上でも納得度は高かったです。そこは、監督のキャパシティーの広さだな…と。ただ、試写の後、男性のスタッフからは「あんなに怒られたら、どうしようもないよね。つらい」と言われましたけど(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井内悠陽「自分を貫くことは大切。でも、時には柔軟性も必要」 映画『爆上戦隊ブンブンジャー』で映画初主演を飾る20歳の新星【インタビュー】

映画2024年7月27日

 7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

Willfriends

page top