【インタビュー】ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」明日海りお&千葉雄大「耽美な世界観」の中でのリアリティー

2020年12月10日 / 07:00

 1972年に連載がスタートして以降、少女漫画の枠を超えて愛され続けている萩尾望都の伝説的名作『ポーの一族』を原作としたミュージカルが3年ぶりに上演される。小池修一郎の脚本・演出のもと、2018年に宝塚歌劇団花組で初演された本作は、明日海りおが主人公エドガーを、原作さながらのビジュアルと巧みな表現力で演じて大好評を博した。今回の上演では、宝塚歌劇団を退団後、初のミュージカルへの出演となる明日海が、エドガー役に再び挑戦する。さらに、本作でミュージカル初挑戦となる千葉雄大がアラン役を演じることも大きな話題を呼んでいる。今回、明日海と千葉に、作品への思い、新たな挑戦への意気込みを聞いた。

千葉雄大(左)と明日海りお

-明日海さんが、本作に再び挑戦することを決めた思いを聞かせてください。

明日海 私にとって、エドガーは本当に思い入れのある役ですので、今回、こういった形で再びエドガーと巡り会えたことはすごくうれしいです。この作品は、ほかの作品とは一味も二味も違う、独特な世界観がある作品です。今回は(初演時とは)環境も大きく変わりますし、私自身も、幕が開く頃にはブランクが1年以上ある状態になりますので、不安ももちろんありますが、来ていただいたお客さまに、「初演のときとはまた違った良さがある」「何回も見たい」「見てよかった」とおっしゃっていただけるような舞台になるよう取り組んでいきたいと思っています。

-今回は、宝塚版とはまた違った作品になると思いますが、どんなところが楽しみですか。

明日海 男性の役は実際に男性が演じることで、宝塚版より本来の漫画『ポーの一族』には忠実になります。千葉さんは映像で活躍されていて、たくさんの作品にご出演されてきたご経験がありますし、ミュージカルや舞台の経験豊富な共演者の方もたくさんいらっしゃいますので、新たな刺激を受けられることも楽しみです。

-千葉さんは、初ミュージカルで、定評のある作品に出演されることについて、どのような思いがありますか。

千葉 僕自身、ミュージカルを見るのが好きですし、ずっとやりたいと思っていたので、出演させていただけることはすごくうれしいです。ただ、もちろん課題もいっぱいあります。僕にとっては、未知の世界で、失うものはないので、全てがプラスになるという気持ちで臨ませていただきます。

-今回、初挑戦しようと思うきっかけはあったのですか。

千葉 以前から、ミュージカルをやりたいということは口に出していました。その中で頂いたお話だったんで、逃げられないという状況でもあって(笑)。でも、この作品でエドガーとアランが巡り会ったように、僕もこの作品と巡り会ったということなのかなとも感じ、今なんだと腹をくくりました。まだ分からないことだらけですが、いろいろなものを削ぎ落として、伝えたいことだけをシンプルに考えて、それに肉付けしたものをお見せできればと思っています。もちろん、ビジュアル的な美しさに関しては、これからもっと頑張っていきたいなと思っていますので、本番までにより磨きをかけたいと思います。

-では、明日海さんから見て、この作品の魅力は?

明日海 私がまず引かれたのは、漫画に登場する人物の美しさや色気です。エドガーに漂っているオーラは、後ろ姿からも感じられて、ただただ美しい。それに、漫画は白黒で描かれているものなのに、読んでいると色彩が広がるような感覚があります。作中、エドガーたちは各国を訪れますが、その世界観が各地で広がり、そこでまたドラマが生まれるのが素晴らしいと感じています。宝塚では、それらを上演時間の中にギュッと詰め込んで、歌やダンスでより華やかに世界観を広げました。今回は、よりリアリティーのある作品になると思いますが、その世界観は変わらず、きっとすてきなものになると思います。

-千葉さんは、原作の漫画や宝塚版を見て、どんな感想を持ちましたか。

千葉 僕、宝塚の作品を見たのは初めてだったんですが、生で見たらさらに素晴らしいだろうなと感じました。映像で見たので、表情をクローズアップされるシーンも多かったのですが、目線一つで伝わってくるものがあり、感動しました。原作は、宝塚版とはまた違った楽しみ方があり、物語の面白さと美しさに引き込まれました。明日海さんがおっしゃったように、白黒なのに色が広がるというのは、本当にそうだと今すごく思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

映画2025年7月3日

 1970年代に起こった連続企業爆破事件の指名手配犯で、約半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した桐島聡の人生を、高橋伴明監督が映画化した『「桐島です」』が、7月4日から全国公開される。本作で主人公の桐島聡を演じた毎熊克哉に話を聞いた。 -桐島 … 続きを読む

磯村勇斗&堀田真由、ともにデビュー10年を迎え「挑戦の年になる」 ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」【インタビュー】

ドラマ2025年7月2日

 磯村勇斗主演、堀田真由、稲垣吾郎が出演するカンテレ・フジテレビ系“月10ドラマ”「僕達はまだその星の校則を知らない」が7月14日から放送スタートする。本作は、独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公・白鳥健治(磯村勇斗)が、少 … 続きを読む

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

Willfriends

page top