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野田秀樹潤色、シルビウ・プルカレーテ演出による、東京芸術祭2020 東京芸術劇場30周年記念公演「真夏の夜の夢」が、10月15日から上演される。本作は、1992年に野田の潤色・演出で「野田秀樹の真夏の夜の夢」と題して初演され、シェークスピアの名作に対する大胆な翻案と豪華キャストの共演で大きな話題を呼んだ、いわば“野田版”「真夏の夜の夢」。今回の公演では、鈴木杏、北乃きい、加治将樹、矢崎広ほか、実力派俳優が集結し、プルカレーテ演出の世界観を体現する。そぼろ役(シェークスピアの原作ではヘレナ)を演じる鈴木に、稽古を通して感じていることや、本作の見どころを聞いた。
今回はオーディションで、そのときに初めてプルカレーテさんとお会いしたのですが、演出の仕方や感情の導き方がとても面白かったんです。すごく興奮して、新鮮な体験をさせていただいて、ぜひ一緒にやりたいと強く思ったので、選ばれたことはすごくうれしかったです。
最初はプルカレーテさんが持っていらっしゃる、この作品のイメージと野田さんの戯曲だと思って読んだ自分のイメージのすり合わせが難しくて、そこに四苦八苦していたのですが、少しずつ探りながら進んでいると思います。プルカレーテさんのアイデアは、日本の感覚の中では生まれてこないようなものがあるので、センスは暮らしている環境によって全く違うものになるんだということを改めて感じています。例えるなら、日本人の感性やセンスが水彩画だとしたら、プルカレーテさんのそれは油彩。その質感自体が違うんです。それを浴びることができて、それに触れられることができて、今、すごく幸せで、うれしいです。現在はリモートでの稽古ですが、開幕前には、プルカレーテさんと同じ空間で演出していただける機会が持てるので、それを待ち望んでいます。
そうですね。プルカレーテさんの読み解き方は、やはりこれまでにないものだと思います。それにプラスして、野田さんの戯曲ですので。ただ、今はまだ素材をどう使うか探っている状態です。これから、劇場に入って、その装置を使い、衣装を着て演じることで、私たち自身もよりその世界観が理解できると思います。
シェークスピアを残しつつ、野田さんのオリジナリティーもほとばしっていて、すごいと感じました。もちろん、原作を知らない人でも楽しめるし、知っている人はさらに楽しめる作品になっています。人間の持つ闇の部分も描かれていますが、でも、それ以上に登場人物たちがとてもチャーミングなんです。なので、子どもから大人まで楽しめる作品だと思います。それから、この戯曲は、野田さんが今よりも少し若いときに書かれたものなので、なおさら疾走感や躍動感が伝わってきて、ほとばしるようなエネルギーを感じます。今回は、メインキャストが若者4人なので、特に若気の至りも含めたエネルギーの爆発が見られるのではないかなと思います。
思いを寄せていた青年デミが、そぼろの幼なじみに恋をしてしまうところから、この戯曲は出発します。しかも、その幼なじみはとてもかわいくて、デミは自分のことはかわいいとは思っていない。そぼろは、そういった経験から、美しさへのコンプレックスや愛されないことが生む卑屈さを持っていて、どこかこじれてしまっている女の子です。それを、野田さんはすごく魅力的に描いてくださっています。物語が進むにつれて、「不思議の国のアリス」のエピソードが出てきたりして、(原作よりも)よりファンタジー的な色合いが強くなりますが、それでも人間の持つ欲や業といった闇の部分にもしっかりと触れています。でも、そうした世界を描きながらも、この作品を胸焼けせずに見られるのは、出発点が「愛」であるからなんだと思います。
きいちゃんとは同じ事務所ということもあって、お互いに若いときから知っていますが、舞台で共演するのは今回が初めてです。きいちゃんはとにかく真面目で、台本が真っ黒になるほど書き込んでいます。本人も、書き込み過ぎて何が大事か分からないというぐらい書き込んでいます(笑)。それから、(役柄上)ぶりっこをしても、それが全く嫌味がなくてすごくかわいい。幸せに満ち満ちているときたまごと、どこかよどんでいるそぼろの対比がうまく表現できればいいなと思っています。
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