【インタビュー】舞台「真夏の夜の夢」鈴木杏「これまでに見たことがない世界観を体験できる演劇になる」

2020年10月7日 / 06:00

 野田秀樹潤色、シルビウ・プルカレーテ演出による、東京芸術祭2020 東京芸術劇場30周年記念公演「真夏の夜の夢」が、10月15日から上演される。本作は、1992年に野田の潤色・演出で「野田秀樹の真夏の夜の夢」と題して初演され、シェークスピアの名作に対する大胆な翻案と豪華キャストの共演で大きな話題を呼んだ、いわば“野田版”「真夏の夜の夢」。今回の公演では、鈴木杏、北乃きい、加治将樹、矢崎広ほか、実力派俳優が集結し、プルカレーテ演出の世界観を体現する。そぼろ役(シェークスピアの原作ではヘレナ)を演じる鈴木に、稽古を通して感じていることや、本作の見どころを聞いた。

そぼろ役の鈴木杏

-本作への出演が決まったときのお気持ちから聞かせてください。

 今回はオーディションで、そのときに初めてプルカレーテさんとお会いしたのですが、演出の仕方や感情の導き方がとても面白かったんです。すごく興奮して、新鮮な体験をさせていただいて、ぜひ一緒にやりたいと強く思ったので、選ばれたことはすごくうれしかったです。

-現在(取材当時)、稽古中だと思いますが、刺激を受けたというプルカレーテさんの演出はいかがですか。

 最初はプルカレーテさんが持っていらっしゃる、この作品のイメージと野田さんの戯曲だと思って読んだ自分のイメージのすり合わせが難しくて、そこに四苦八苦していたのですが、少しずつ探りながら進んでいると思います。プルカレーテさんのアイデアは、日本の感覚の中では生まれてこないようなものがあるので、センスは暮らしている環境によって全く違うものになるんだということを改めて感じています。例えるなら、日本人の感性やセンスが水彩画だとしたら、プルカレーテさんのそれは油彩。その質感自体が違うんです。それを浴びることができて、それに触れられることができて、今、すごく幸せで、うれしいです。現在はリモートでの稽古ですが、開幕前には、プルカレーテさんと同じ空間で演出していただける機会が持てるので、それを待ち望んでいます。

-シェークスピアの原作は、これまでにもさまざまな演出家の手によって何度も上演されてきた作品ですが、本作は全く違った、独特の世界観を持った作品になりそうですね。

 そうですね。プルカレーテさんの読み解き方は、やはりこれまでにないものだと思います。それにプラスして、野田さんの戯曲ですので。ただ、今はまだ素材をどう使うか探っている状態です。これから、劇場に入って、その装置を使い、衣装を着て演じることで、私たち自身もよりその世界観が理解できると思います。

-最初に野田さんの戯曲を読んだときに、どんな感想を持ちましたか。

 シェークスピアを残しつつ、野田さんのオリジナリティーもほとばしっていて、すごいと感じました。もちろん、原作を知らない人でも楽しめるし、知っている人はさらに楽しめる作品になっています。人間の持つ闇の部分も描かれていますが、でも、それ以上に登場人物たちがとてもチャーミングなんです。なので、子どもから大人まで楽しめる作品だと思います。それから、この戯曲は、野田さんが今よりも少し若いときに書かれたものなので、なおさら疾走感や躍動感が伝わってきて、ほとばしるようなエネルギーを感じます。今回は、メインキャストが若者4人なので、特に若気の至りも含めたエネルギーの爆発が見られるのではないかなと思います。

-鈴木さんが演じるそぼろという役については、現在、どのように捉えていますか。

 思いを寄せていた青年デミが、そぼろの幼なじみに恋をしてしまうところから、この戯曲は出発します。しかも、その幼なじみはとてもかわいくて、デミは自分のことはかわいいとは思っていない。そぼろは、そういった経験から、美しさへのコンプレックスや愛されないことが生む卑屈さを持っていて、どこかこじれてしまっている女の子です。それを、野田さんはすごく魅力的に描いてくださっています。物語が進むにつれて、「不思議の国のアリス」のエピソードが出てきたりして、(原作よりも)よりファンタジー的な色合いが強くなりますが、それでも人間の持つ欲や業といった闇の部分にもしっかりと触れています。でも、そうした世界を描きながらも、この作品を胸焼けせずに見られるのは、出発点が「愛」であるからなんだと思います。

-デミが恋をする、ときたまご役(原作ではハーミア)の北乃きいさんの印象は?

 きいちゃんとは同じ事務所ということもあって、お互いに若いときから知っていますが、舞台で共演するのは今回が初めてです。きいちゃんはとにかく真面目で、台本が真っ黒になるほど書き込んでいます。本人も、書き込み過ぎて何が大事か分からないというぐらい書き込んでいます(笑)。それから、(役柄上)ぶりっこをしても、それが全く嫌味がなくてすごくかわいい。幸せに満ち満ちているときたまごと、どこかよどんでいるそぼろの対比がうまく表現できればいいなと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【インタビュー】映画『草の響き』東出昌大「監督は『好きにやってこい』と背中を押してくれた」斎藤久志監督「東出さんと初めて会った瞬間、『この映画、勝ったな』と」意見をぶつけ合って生まれた苦悩する主人公

映画2021年10月18日

 心に失調をきたし、妻・純子(奈緒)と2人で東京から故郷の函館に戻ってきた和雄。病院の精神科を訪れた彼は、医師に勧められるまま、治療のため、街を走り始める。その繰り返しの中で、和雄の心は徐々に平穏を取り戻していくが…。現在公開中の『草の響き … 続きを読む

「渋沢との言い合いはこれからも続きます」大倉孝二(大隈重信)【「青天を衝け」インタビュー】

ドラマ2021年10月17日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。時代は明治に移り、新たな国造りを目指す人材が次々と登場してきた。その1人が、後に総理大臣として歴史に名を残す大隈重信だ。駿府藩で頭角を現した主人公・渋沢栄一(吉沢亮)を新政府に登用するため、得 … 続きを読む

【映画コラム】どちらも映画館で見るべき映画『最後の決闘裁判』と『DUNE/デューン 砂の惑星』

映画2021年10月15日

黒澤明監督の『羅生門』をほうふつとさせる『最後の決闘裁判』  1386年、百年戦争のさなかの中世フランスを舞台に、実際に行われたフランス史上最後の「決闘裁判」を基にした歴史ミステリー。アカデミー脚本賞を受賞した『グッド・ウィル・ハンティング … 続きを読む

【インタビュー】映画『かそけきサンカヨウ』鈴鹿央士「この映画は悪役がいないことがポイントです」

映画2021年10月14日

 高校生の陽(志田彩良)は、幼い頃に母が家を出たため、父の直(井浦新)と二人暮らしをしていた。だが、父が再婚し、義母となった美子(菊池亜希子)とその連れ子で4歳のひなたとの新たな暮らしが始まる。陽は、新生活への戸惑いを、同じ美術部に所属する … 続きを読む

【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第三十回「渋沢栄一の父」栄一に受け継がれていく父・市郎右衛門の教え

ドラマ2021年10月13日

 10月10日に放送されたNHKの大河ドラマ「青天を衝け」第三十回「渋沢栄一の父」では、新政府による廃藩置県の断行と、その騒動に巻き込まれた主人公・渋沢栄一(吉沢亮)の奮闘が描かれた。他にも今回、栄一は五代友厚(ディーン・フジオカ)や料亭の … 続きを読む

amazon

page top