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雫井脩介の代表作ともいえる同名小説を基にしたサスペンス映画『望み』。高校生の息子が消えたその日、同級生が殺され、幸せだった家族の日常は一変する。息子は犯人なのか、それとも、もう1人の被害者なのか…? 極限の家族愛が描かれる。「ケイゾク」や「TRICK」など、ギャグやギミックが満載のコメディーミステリーで名をはせる堤幸彦監督だが、64歳の今、深い人間ドラマを作り出すことに闘志を燃やしている。その真意とは? 新作映画『望み』に込めた思いや、撮影時のエピソードとともに聞いた。
映画館にも観客にも大変な制約がありますが、上映できることは幸いです。延期になったり、オンライン上映になったり、映画それぞれの運命がありますが、この作品は映画館で見るために作りました。換気がいいことも実証されているので、ぜひ映画館で見てほしいです。
スマホで映画を見たり、曲を聴いたりすることが常識になった今、それに合うコンテンツを作るべきだし、同時に、映画館でしっかり見ていただける、質の高い、深い内容の作品を作っていくべきだと思いました。昭和30年代から映画館に通っていた僕にとって、映画館は祝祭的な特別な空間だったので、そんな、映画という文化の持つ独特の存在感を継承していかなければいけないと思っています。
雫井先生は、刑事・検察・裁判ものを緻密な筆で描かれる方なので、最初は、チャレンジしたい作家の作品だけれども、僕の実力で平気かな…? と思いました。でも、原作を読んで「家族」の話であることを知ると、僕も家族の一員だからやらなければいけないし、この映画を作らなければ次の作品作りに行けないと思いました。
原作には、息子が加害者なのか? 被害者なのか? というミステリーを核にして、それぞれの登場人物の気持ちがしっかり描かれているので、この気持ちを、きちんと役者の表情に乗せることができれば、強い作品になるという確信がありました。
大変レベルの高い役者がそろっちゃいました(笑)。チケット代が何万円もする舞台を見ているかのような、心に迫る芝居が素晴らしかったです。堤さんは、映画『クライマーズ・ハイ』を見て感激したこともあり、ぜひ一度ご一緒したいと思っていました。せりふ一言にかける熱意や、考えにより、作品を高いところにまで押し上げてくれました。石田さんは、のほほんとした温かな人に見えますが、芯が強い方で、そこは物語の後半に十全に生かされたと思います。父のプライド、母の愛という、一番表現したかったところを、お二人は100パーセント表現してくれました。
岡田くんは残り香をつけていくのがうまいですね。振り返って、ほとんど何も言わずに去っていくシーンがありますが、これほど振り返る姿がセクシーで印象的な役者はなかなかいません。すごい存在感です。清原さんは天才的に上手で言うことがありません。カメラが回ると、こちらが演出したい部分をクリアした上に、その先にいくための質問を浴びせてくるので、「あっ、映画監督はその先まで指示するものなのか…」と気付かされました。いろいろな作品に引っ張りだこの理由が分かります。
もちろんそういう狙いはあります。今回、埼玉県所沢市を作品の舞台に設定して、東京都青梅市で撮影をしましたが、企画が決まると、すぐに、スタッフと車で所沢市内を1日中走り回り、感情表現のプラスになりそうなカットをどんどん撮影しました。使われたのはほんの一部ですが、「西武園ゆうえんち」周辺や、「所沢航空記念公園」、「ところざわサクラタウン」をはじめ、ほとんど使っていませんが(笑)、山の中の滝や、路傍の石、ガードの下の暗部なども撮影しました。
暗くて不幸なテーマ故に、きれいで美しい、光のある風景が胸を締めつける効果を持っています。「ここで光を入れてほしい」という指示は出していませんが、テクニカルチームがあうんの呼吸で入れてくれました。
60代も半ばに入り、家族を含めて人間の心模様をテーマにした作品にシフトしなければいけないと感じています。あと何本の作品に出会えるか分からないですし、1本1本を大事にしたいです。
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