【インタビュー】映画『AI崩壊』入江悠監督「『SR サイタマノラッパー』から10年。この映画は僕にとっての記念碑です」

2020年1月31日 / 15:13

-リアリティーという点では、入江監督の作品は、多数のエキストラを使ったモブ(群衆)シーンを大事にしている印象があります。賀来賢人(西村悟役)さんも「エキストラの演出に対するこだわりがすごい」と驚かれていましたが、その点に対する思いは?

 社会の縮図を描こうとすると、どうしても「いろんな人がいる」という絵が必要になるんです。今回も暴動の場面がありますが、人がスカスカだとリアリティーがないので、なるべく大勢で「暴動が起きている」という絵を作りたい。大沢さんや賀来くんがいくらいい芝居をしても、後ろの人にリアリティーがないと、お客さんの気持ちが映画から離れてしまいますから。そういう意味で、モブシーンは主演俳優と同じぐらい大事だと思っています。

-『ビジランテ』や『ギャングース』などと並行して、本作のようなメジャー大作を手掛けてきたことは、映画監督としてのご自身にどんな意味がありましたか。

 興味のあり方も変わって、描けるものの領域が広がってきました。今までは、自分と同じような立場の人物しか描けなかったものが、それ以外の他者のことも考えられるようになりました。今回で言えば、桐生の娘の心(田牧そら)です。母親を亡くした女の子が、父親に対してどう思っているのかを今まであまり考えたことはありませんでした。でも、こういう物語をやることで、彼女の気持ちを考える機会になる。いろんな人の立場で考えられるようになり、視野もドラマ的な幅も、今までより広がったと思います。

-ところで、本作で夢を実現させた入江監督が、この先どんな方向へ進むのかが気になるところです。

 できればずっと近未来をテーマにした作品を作っていきたいです(笑)。今回はAIですが、他にもロボットや宇宙、それこそミクロの世界まで、題材はいろいろありますから。21世紀に入って、この先の未来にはいろいろな変化が起きてくると思うんです。だから、そこで描けるものはたくさんあるんじゃないかと。せっかくチャンスを頂いたので、これからもそういう映画を作っていきたいです。

(取材・文・写真/井上健一)

演出中の入江悠監督

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