【インタビュー】舞台「脳内ポイズンベリー」市原隼人「役者として本来の仕事ができるのが舞台。初心に返って、一つ一つ繊細にアプローチしていきたい」

2020年1月31日 / 15:48
 「失恋ショコラティエ」などで知られる水城せとなの漫画『脳内ポイズンベリー』が舞台化され、3月14日から上演される。本作は、一人の人間の頭の中で擬人化された五つの思考が“脳内会議”を繰り広げるというラブコメディー。“脳内会議”の議長・吉田役で主演する市原隼人に、本作の魅力、そして公演への意気込みを聞いた。
 

吉田役の市原隼人

-2015年には映画化もされた大人気漫画を原作とした舞台になりますが、出演が決まったお気持ちからお聞かせください。

 役者にとって、舞台は必要不可欠なものであると、自分の中では認識していますので、その舞台に立てるということをまずうれしく思っています。
 

-舞台のどのようなところに役者としての必然性を感じているのですか。

 幕が開いてから最後まで、芝居を通してお客さまに生で楽しんでいただくということは、映像ではできないことなので、そういった意味で舞台は特別な空間だと思います。映像は、その一瞬を総合芸術で見せるものだと思うのですが、舞台は稽古を繰り返し、試行錯誤をして、さまざまなことを考えて、最後にそれを放出することだと思うので、懸ける思いが違います。僕の中では今でも憧れの場で、今回、また新たな闘いができそうだと感じています。この作品は、人に見せることがない、頭の中での様子を描いたものなので、お客さまの共感を得られると思います。この時代だからこそできるもの、そして、なぜこの作品が今、舞台化されることになったのかという意味を自分の中で探しながら、演出家やキャストたちと作品をしっかりと作っていきたいと思っています。
 

-「舞台は特別なもの」というお言葉もありましたが、市原さんにとって、舞台に出演することは挑戦の意味合いが強いんでしょうか。

 確かに最初は「挑戦」でしたが、今は、役者として本来の仕事ができるのが舞台だと思っています。ステージの上でお芝居をすることで、お客さまに喜んでいただき、感情を動かし、新たな経験を提供して、より豊かな生活の一部になることを目指す舞台というものは、役者が本来あるべき姿だと思うんです。なので、挑戦というよりも、原点に戻るという思いを持って、初心に返って、一つ一つ繊細にアプローチしていきたいと思っています。
 

-原作、脚本を読んだ感想は?

 映画化もされた作品なのですが、今回は原作も映画も事前に見ないで稽古に入ろうと思っています。まずは脚本を読んで舞台ならではのお話を作っていきたいと思います。舞台では、脳内での出来事と現実で起こっているシチュエーションを同時に描くことができるので、原作にも映画にも見ることができないものが表現できますし、脳内の感情が擬人化されて会議をするというのは、誰にでも起こっていることだと思うので、親しみのあるストーリーになると思います。
 

-原作を読まないのはどうしてですか。

 まずは、演出家をはじめとしたスタッフ、キャストたちと作品を作り上げていきたいと考えているんです。でも、それは原作をないがしろにするということではなく、敬意はしっかりと持って、まずは脚本に向き合いたいということです。稽古が中盤になったら、改めて原作を読んで、より役柄を深めていきたいとは思っています。
 

-では、本作で演じる吉田という役については、今現在、どのように捉えていますか。

 吉田は脳内会議の議長を務めるキャラクターです。その時々で感情をチョイスしていかなければならないので、ある意味、ストーリーテラーのような立ち位置でもあり、一方で議長であるがゆえに、人間くさいところもあるんです。議長という立場上、受け身でいることが多いのに、受け身になりきれないギャップを抱えている人物なので、そこは意識しながら、楽しんで演じられればいいなと思っています。
 

-現実世界を生きる、いちこ役の蓮佛美沙子さんの印象は?

 しっかりと向き合って演技をさせていただくのは今回が初なのですが、舞台に数多く出演されているイメージがあったので、安心して全てを任せられる方だと思っています。実はストレートプレーが初めてだと聞いて意外に思っていますが、すてきなお芝居を見せてくれると思います。
 

-脳内会議をするキャラクターを演じるのは、早霧せいなさん、グァンスさん(SUPERNOVA)、本高克樹さん(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)、斉藤優里さんとバラエティー豊かな顔ぶれです。皆さん、初共演ですか。

 そうです。なので、稽古に入ってみないとどうなるのか分かりませんが、今は本当に楽しみです。それから、演出の佐藤(祐市)さんとは『ウォーターボーイズ2』以来、15年ぶりにご一緒するので、それも楽しみです。
 

-演出の佐藤さんは、映画監督として数々の作品でメガホンを取っていますが、舞台の演出は本作が初となります。佐藤さんの印象は?

 『ウォーターボーイズ2』を撮影していた当時、僕は素人同然で、俳優としての自覚もない状態でしたが、佐藤さんはいつも気を使ってくださって、壁を作らず自然体で現場にいてくださる方でした。どんなに寒い中でもプールに入って練習をしなければならなかったので、本当に大変な現場ではありましたが、最後には涙が止まらなくなるほど「終わりたくない」という感情が芽生えていました。そんな環境を作ってくださった方なので、信頼感はすごく強いです。

 
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