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2019年に公開された大人気漫画の実写映画『キングダム』で将軍・王騎役を演じるに当たり、体重を15キロも増やす肉体改造など、徹底した役作りで話題を集めた大沢たかお。ミドル世代の人気俳優として仕事は引きも切らず、数々の作品に携わっている印象だが、実は2016年から約2年間にわたって俳優活動を休業しており、芸能界に復帰する気持ちも薄れていたのだとか。その気持ちを覆したのは…“スリル”だ。
2015年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」に出演後、人知れず2年間も俳優活動を休んでいた大沢。当時を思い返し、「極端に言うと、戻ってくる気はありませんでした。自分の中に明快なものがない限り、作品作りに携わっても、いい結果が出ないと思っていました」と吐露する。
芸能界デビューはモデルで、芝居の世界に飛び込んだのは26歳の頃。「ものすごいスリリングなことを求めていて、作品を一本やったらやめる気持ちでいました。実際、なんの経験もなかったから大変なことばかりで、だからこそ徹底的に準備をして臨んだので、後の二十数年間と比較しても、あれだけ頑張ったスリリングな1年はないです」と回顧する。
その感覚が忘れられないことや、「経験はマイナス。新しい発想が生まれなくなるし、台本をもらっても、先が読めて、見ている人が感じることも予測できるから、だんだん息が詰まってきて、面白くなくなりました」と仕事に対する意欲が薄れたことを告白した。
大沢にとっての「明快なもの」とは、作品に携わる“意義”と“スリル”だ。そもそも「演技愛があるわけではない」ため、「日常的なストーリーや家族の物語、ラブストーリーといったリスクを伴わない無難な作品は、いいとか悪いとかではなく僕がやる必要はない」と断言する。そのため、休業中は「スリルを感じられる作品に出会えるなら、それだけをやって俳優をやめよう」という覚悟もしていた。
その中で出会ったのが、映画『キングダム』や、英・ロンドンのウエスト・エンドで上演されたミュージカル「王様と私」、そして『AI崩壊』だ。これらを選んだ共通の理由は、「今までの自分の経験が全く通用しないし、誰もが簡単に思いつくイメージで関わったら大失敗する。行けるところのギリギリまで行って勝負しないと評価されない」こと。
『AI崩壊』は、全国民の個人情報、健康を完全に管理する医療AI<のぞみ>が突如、年齢、年収、家族構成、病歴、犯罪歴等から合理的に人間の生きる価値を選別して殺りくを開始。パニックに陥る10年後の日本を舞台に、AIを暴走させたテロリストと断定された天才科学者の桐生浩介(大沢)が決死の逃亡劇を図るサスペンス超大作映画。
数年前から講演会に赴くほどAIに興味を持ち、「社会の構造が変わるような革命的なものになると感じていた」と話す大沢は、「AIが自分の仕事に直接かかってくるとは考えもしなかった」と驚きつつ、「入江悠監督の作品も好きだったし、今の日本には珍しいオリジナル脚本のエンターテイメント作」に食指が動いたことを説明する。
過酷な役作りで挑んだ『キングダム』の王騎役、芝居の本場イギリスに単身渡り、全編英語のせりふに挑んだ「王様と私」のクララホム首相役や王様役。では、桐生役における“勝負”とは?
大沢は「オリジナル作品だからこそ話をどんどん変えていけるし、AIによる人類の殺りくという挑戦的な作品だからこそ、ルールに縛られないアプローチができました」と語ると、入江監督やプロデューサーと意見交換を重ね、「エンターテイメント大作にもかかわらず、桐生がスーパーヒーローではなく普通の人間だったらどうだろうか? という考えにたどりつきました」と振り返る。
逃走シーンでも、「アクション映画の中のトム・クルーズみたいな走りでは駄目。だって、皆さんの旦那さんや彼氏が急に走ることになったときにスマートに走れますか? しかも桐生は科学者で、走ることを必要とする生活をしていないから、突然ダッシュなんてしたら疲れるし、ボロボロになりますよね」と見解を示す。
「だから、頭はいいけど、それ以外は欠落して、もがき苦しむような人間を演じようと思いました。そういう主人公は今まで演じたことがなかったので、自分としては挑戦でした」と充実した表情をのぞかせる。
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