【インタビュー】「名もなき復讐者 ZEGEN」阿部進之介「『このミス』大賞の受賞作品。そんなに単純なミステリーではありません」馬場ふみか「『正義って何だろう?』と考えさせられました」

2019年9月26日 / 10:00

 「このミステリーがすごい!」大賞(以下「このミス」大賞)でU-NEXT・カンテレ賞をサプライズ受賞した登美丘丈の小説『名もなき復讐者 ZEGEN』が、「このミス」大賞ドラマシリーズ第2弾として連続ドラマ化された。妻を死に追いやった者たちに復讐(ふくしゅう)を誓い、裏社会に生きる男・女衒(ぜげん)を主人公に、中国人女性リ・シュウランらの運命が絡み合い、やがて予想もつかない展開を見せていくスリリングなエンターテインメントだ。女衒役の阿部進之介とリ・シュウランを演じる馬場ふみかが、撮影の舞台裏や作品の見どころを語ってくれた。

阿部進之介(左)と馬場ふみか

-台本を読んで感じた作品の魅力は?

阿部 女衒には、児童養護施設で育ったという生い立ちがあります。そこで大切にされてはきたものの、親がいないことに満たされないものを感じて、両親の消息をたどるために東京へ出てきた。そんな複雑な事情を抱えた男です。にもかかわらず、自分よりも周りの人間を満たそうとする。そういう人間味あふれるキャラクターが魅力的だな…と。

馬場 シュウランは、病気の夫の治療費を稼ぐため、中国から出稼ぎに来て、マッサージ店で働いている女性です。家族と離れた境遇の中、たった一人で強く生きている姿がとても魅力的でした。物語的にも、女衒の復讐劇を軸にしつつ、女衒とシュウラン、シュウランと偽装結婚する佐藤幸造(杉本哲太)さんという、それぞれ事情を抱えた3人の関係が、物語の進行とともに変化していくところが面白いなと。

-それぞれ、演じる上で大事にしたものは?

阿部 ミステリーなので、見ている人に「何かあるのかな?」と感じてもらいたかった。でも、常にそういう雰囲気が漂っているのは、人間としてちょっと違和感がある。それよりも、ふとした瞬間にそう感じてもらえる方が、女衒の抱えたものの大きさが表現できるだろうと考え、常にそういう意識を自分の傍らに置いて演じるようにしました。そうすれば、どこかでそういう瞬間が生まれるはずだと。

馬場 シュウランは言葉数の多い役ではなかったので、その分、ちょっとした目の動きや下ろした手の指先など、細かいところに気を付けて演じるようにしました。ただ下ろしているだけでなく、洋服をつかんで不安を表現してみたり…。そういうところで、シュウランの心情が少しでも伝わればと。

-お互いに共演した感想は?

阿部 馬場さんは、芝居に取り組む姿勢はとても真面目ですが、普段は冗談も言ったりする気さくな方だったので、話しやすかったです。おかげで、シーンごとにどう面白くするかを一緒に話し合って作り上げていくことができました。

馬場 阿部さんは、私のお芝居を優しく受け止めてくださる方だな…と。シーンごとに話をしてくださったのも、一緒に作っていっている感じがして、すごくうれしかったです。

-チームワークの良さを感じますが、そんなふうに役者同士で話し合いながら芝居を作っていく現場は、必ずしも多くはありませんよね。

阿部 そうですね。でも、僕はそうした方がいいと考えるタイプ。「僕はこう思う」「私はこっちの方が面白いと思う」というやり取りの中から、発見できるものもあるので。ただ、相手の役者や現場の状況にもよるので、必ずしもそういうふうにやれるわけではありません。この現場は、それができる環境にありました。

馬場 私は、今までそういうやり方をあまり経験したことがなかったので、学ぶことがたくさんありました。

-物語は女衒の復讐劇が軸になるようですが、単純な復讐劇でもなさそうですね。

阿部・馬場 (同時に)そうですね(笑)。

馬場 深いですよね…。

阿部 『このミス』大賞で受賞した作品ですからね。そんなに単純なミステリーではありませんよ(笑)。

馬場 最後はすごいことになります(笑)。

阿部 原作とも異なる展開になっているので、原作を読んだ方も、ぜひ楽しみにしてください。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

松本利夫、EXILEパフォーマー卒業から10年 舞台は「山登りに似ている」 「よろしく候~BOTTOM OF HEART~」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年6月18日

 松本利夫が主演する舞台、LEGENDSTAGE feat.カムカムミニキーナ「よろしく候~BOTTOM OF HEART~」が6月26日から上演される。本作は、劇団「カムカムミニキーナ」の松村武が手掛ける幕末ヒューマンドラマで、17年ぶり … 続きを読む

濵田崇裕、「歌喜劇/~蘇る市場三郎 冥土の恋~」は「僕の代表作だと胸を張って言える」

舞台・ミュージカル2025年6月16日

 WEST.の濵田崇裕が主演する「歌喜劇/~蘇る市場三郎 冥土の恋~」が、6月30日から上演される。本作は、福田転球が脚本、河原雅彦が演出、濵田が主演を務める「市場三郎」シリーズの3作目。今回は、冥土を舞台に、三郎が女性と出会い、恋に落ちて … 続きを読む

恒松祐里「貴重な経験をさせていただいた現場でした」アットホームな現場で増したクリエーティブに対する意欲『きさらぎ駅 Re:』【インタビュー】

映画2025年6月13日

 6月13日から公開となった『きさらぎ駅 Re:』は、2022年にスマッシュヒットを飛ばした『きさらぎ駅』待望の新作続編だ。前作『きさらぎ駅』は、2004年1月8日、“はすみ”と名乗る女性がこの世に存在しない“きさらぎ駅”という異世界駅にた … 続きを読む

池田エライザ「不思議な夏の思い出として心にとめていただければと思います」『リライト』【インタビュー】

映画2025年6月13日

 高校3年の夏、美雪の学校に保彦(阿達慶)という少年が転校してくる。ある小説に憧れて300年後からタイムリープしてきたという保彦と秘密を共有することになった美雪は、彼に恋をするが…。松居大悟監督と脚本家の上田誠が初タッグを組み、法条遥の同名 … 続きを読む

【週末映画コラム】ダイヤモンド・プリンセス号の内部で一体何が起こっていたのか『フロントライン』/オール尾道ロケで映画化したSF青春ミステリー『リライト』

映画2025年6月13日

『フロントライン』(6月13日公開)  2020年2月3日、乗客乗員3711人を乗せた豪華客船が横浜港に入港した。香港で下船した乗客に新型コロナウイルスの感染が確認されており、船内では100人以上が症状を訴えていた。  日本には大規模なウイ … 続きを読む

Willfriends

page top