「柴咲さんは、なくてはならない太陽の光のような存在です」杉本哲太(井伊直盛)【インタビュー「おんな城主 直虎」】

2017年1月8日 / 21:00

 ついに放送が始まったNHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」。このドラマで主人公・井伊直虎(柴咲コウ)の父・直盛を演じているのが、すでに何作もの大河ドラマ出演歴を持つベテラン俳優・杉本哲太だ。領地・井伊谷を守るため、主家・今川家と家臣たちの間で板挟みになる当主であり、一人娘を愛する父親でもある直盛を演じる意気込みと、撮影の舞台裏を聞いた。

 

井伊直盛役の杉本哲太

井伊直盛役の杉本哲太

-岩手県に作った井伊谷のオープンセットで撮影されたそうですが、感想は?

 あれはすごかったです。一面に田んぼがあって、その中に火の見やぐらやちょっとした通りがあって、もともとそこに川が流れているのですが、その川沿いが断崖絶壁みたいになっていて。よくこんなところを見つけてきたなという場所で撮影させていただきました。前田吟さんとも「風景に圧倒される」という話をしました。そういう自然の力を借りて演じられたのは、すごく大きかったです。

-大河ならでは、という印象でしょうか。

 そう思います。最近、あんなに「うわーっ!」と思うオープンセットにはお目にかかったことがありません。久しぶりにオープンセットを見て、テンションが上がりました。すごいですね。

-そうした風景の中で、直盛という役をどのように演じられましたか。

 浜松でもロケ撮影があったので、その時に井伊家の菩提寺の龍潭寺や井伊谷城跡などを訪れました。お城の跡に上って風景を見わたしてみたら、自然に守られているような印象を受けました。単に戦国時代の殿さまというだけではなく、ものすごく地域や村の人たちと密着した当主だったんだろうなと。だから、おとわ(新井美羽)と一緒に棚田を歩いてくる場面は、田んぼの風景に目をやりながら歩くという芝居になりました。

-直盛はどんな人物だと考えていますか?

 すごく優しい人だけど、逆に言えば優柔不断でもあります。上からはたたかれ、家来からも突き上げられる中間管理職的な立場の人で、どちらの意見も分かるので決断できない男です。その上、奥さんからも突かれ、自由奔放な娘からもストレートに物を言われてまた悩み…。板挟みになって答えが出せない殿さまという部分をうまく出せれば、と思って演じています。

-直盛の妻・千賀を演じる財前直見さんとの共演はいかがですか。

 財前さんとは久しぶりの共演で、夫婦役は初めてですが、呼吸が合うのでとてもやりやすいです。すごくいい夫婦になっていると思います。

-直盛は一人娘のおとわが家を継ぐことに対して、どのように思っていたのでしょう。

 おとわが小さいころ、「おぬしが男であったらのう」とぼやく場面もあるのですが、できれば直親か他の誰かでもいいので、跡を継いでくれる相手を見つけて結婚してくれればと願っていたでしょう。だから、出家して少しずつ彼女の人生が変わっていく様子を、複雑な思いで見守っていたのではないでしょうか。時代こそ違いますけど、娘を愛する気持ちは現代の父親と変わらないと思います。

-主家である今川家と井伊家中の間で板挟みになる直盛にとって、今川家とはどんな存在だったのでしょう。

 祖父の代で既に叔母が今川家の人質になっていますし、さかのぼったらもっとその前からいろいろあるでしょうから、井伊家にとってはかなりの存在です。自分の娘や身内を人質に出して関係を保つというのは、想像を絶するようなことだと思うんです。直盛は生まれた時からそうやって育ってきたので、今川家に対して強い思いはあったでしょうね。

-当主としての直盛と娘を愛する父親としての直盛で、演技に違いはありますか。

 いくら優柔不断でも、あまり情けない顔をしていたら、みんなが不安になってしまいますから、普通はそれを隠しますよね。だから、家臣と一緒だったり、何か大事なことを決めたりするようなシーンでは、殿さまらしい表情を心掛けています。逆におとわと一緒のシーンではなるべくそういうのは取り払って、ただの父親のように演じています。

-序盤は主人公の直虎と幼なじみの井伊直親、小野政次の子ども時代に当たるおとわ、亀之丞、鶴丸の3人を子役が演じていますが、彼らの印象は?

 3人で仲良くやっていますね。小声で何を話しているのかと思って聞き耳を立ててみましたけど、仲間には入れてもらえませんでした(笑)。おとわ役の新井美羽ちゃんと共演する場面が多いのですが、芝居がストレートなのでやっていて楽しいです。

-おとわが出家して次郎法師となった後、子役の美羽ちゃんから柴咲コウさんに代わりますが、交代した時の印象はいかがでしたか。

 何の違和感もなくて、すごいなと思いました。美羽ちゃんが成長して柴咲さんが演じる次郎法師になったみたいで、スムーズに演じられました。打ち合わせをしたのかと思うぐらい自然にバトンタッチしていました。

-柴咲さんについてはいかがでしょうか。

 柴咲さんとは以前も映画で共演したことがあるのですが、今回もやはり存在感がありました。でもそれは、強烈なものというよりも、太陽の光とか自然光みたいな、ナチュラルな存在感です。なんとなく当たり前のようにいるんだけど、実はものすごく強くてなくてはならない存在。改めてそんな印象を受けました。

-杉本さんはこれまでに数多くの大河ドラマに出演していますが、今回は、今までと違う部分はありますか。

 「翔ぶが如く」(90)の時は“人斬り半次郎”と呼ばれた中村半次郎、「信長 KING OF ZIPANGU」(92)の時は武将の丹羽長秀、「元禄繚乱」(99)では四十七士の不破数右衛門という、どちらかというと勇ましい人物をやらせていただくことが多かったのですが、今回はちょっと違う役を頂けたので、やりがいがあります。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

Willfriends

page top