おでん屋でのアドリブ歌唱は無念の「9割カット」、それでも朝ドラに注ぐ熱い思い 山口智子(岸川亜矢美)【「なつぞら」インタビュー】

2019年7月20日 / 08:30

-咲太郎に対する亜矢美の心情をどう考えますか。

 亜矢美には、結婚の約束をした人が戦地から帰ってこなかったという悲しい過去があります。愛する人への愛情の行き場を失った亜矢美には、咲太郎の“かあちゃん” として“偽物の親子”を演じることが生きるパワーとなりました。亜矢美が咲太郎を助けたというよりは、本当は咲太郎が命の恩人なのです。

-そんな2人の行く末は要注目ですが、岡田さんは以前、「山口さんから自由な芝居を学んだ」とおっしゃっていました。直接アドバイスをすることもあるのですか。

 フラメンコも演技も共通することは、出会った人々が心を一つにして、今この一瞬を最高に輝かせるために、力を合わせる即興芸術であることです。直球で勝負する若い時代に比べて、年を重ねるといろいろな変化球を面白がれる心のゆとりが生まれてくるので、年長者としてできることは、「力を抜いて、もっと自由にのびのび心を解き放っていいんだよ」と、身をもって実践して、若者たちを応援できたらいいなと思っています。

-朝ドラという現場だからこそ、特別な思いと気合が入っているのでしょうか。

 「純ちゃんの応援歌」に出会っていなければ、普通にお見合い結婚をして、実家の旅館を継いでいたと思います。演技も何も知らないド素人の私を受け止めてくださった朝ドラに、感謝してもしきれません。共演した唐沢(寿明)さんと結婚させていただきましたし、人生の全ての始まりが朝ドラでした。30年でどれだけ成長できたのか、まだまだ自信はありませんが、ちょっとでも皆さんのお役に立つことができるよう、今までどの作品も本気で取り組んできましたが、さらに本気で取りくんでいきたいです。

-亜矢美同様、山口さんもキラキラ輝いていて、人生を謳歌(おうか)されているように感じます。

 年を取ることは本当に楽しいですよ。自分の好きなことや大事なことに対するフォーカスが明確になってきて、余計な力も抜けて、人生を味わう楽しさを日々実感できている手応えがあります(笑)。

(取材・文/錦怜那)

 

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