【インタビュー】『Diner ダイナー』武田真治「僕もこの20年、『めちゃイケ』の中で、オオバカナコだったのかも」

2019年7月5日 / 18:43

 元殺し屋で天才シェフのボンベロ(藤原竜也)が店主を務める殺し屋専用の食堂“ダイナー”。「自分が必要とされていない」と悩む孤独な少女オオバカナコ(玉城ティナ)は、怪しいアルバイトに手を出したことがきっかけで、ここでウエートレスとして働くこととなる。人の命を何とも思わない殺し屋たちの中に放り込まれたカナコの運命は…?『‪ヘルタースケルター‬』(12)の蜷川実花監督の下、豪華キャストが集結した『Diner ダイナー』が7月5日から全国ロードショーとなった。ダイナーを訪れる殺し屋の一人、ブロを演じた武田真治が、本作が描く「生きる」というテーマについて、自らの経験を交えて語ってくれた。

武田真治

-武田さんご自慢の肉体美も披露されていますが、完成した作品を見たときの感想は?

 一見、「極彩色の映像作品」という印象ですが、見終わってみると、人がこんなにたくさん死ぬのに、徹底して「生きる」というテーマが貫かれている。まさに、(実花監督の父・蜷川)幸雄先生譲りの「蜷川印のハンコ」が押されたような作品だな…と。僕が演じたブロという役は、序盤で物語のルールを説明する役どころなので、派手に演じることを主に心掛けました。撮影が始まってすぐに「ジャケットを脱ぐ」という演出があったので、「ずいぶん早いな…」とは思いましたが、こんなので良ければと速攻で従いました(笑)。

-今の時代、オオバカナコのように「自分が必要とされていない」と感じる人は少なくありません。まさに現代を象徴するような物語ですが、どんなふうに感じていますか。

 オオバカナコのような人は多いんでしょうね。でも、何ができるか試しもせず「自分が必要とされていない」という悩みは、ぜいたく過ぎるんじゃないかな…と。「だったら、何ができるか言ってみろ」と。「必要とされているかどうか」なんて関係なく、迷っているなら、何でもいいからやってみた方がいい。必要かどうかを考えながら自分も進化させるみたいな、見えない時代の流れを読んだふりをして要領よく生きようとするからつまずくんだと思うんです。誰もが時代と帳尻を合わせながら生きる必要はない。時代に置いていかれてもいいから、何かを思い切り追求してそれが極まれば、いずれ道は開けるはず…と。

-武田さんご自身は、オオバカナコと同じ20代をどんな思いで過ごしていたのでしょうか。

 カッコいいことを言いましたが、実は僕もこの20年、「めちゃイケ」(フジテレビで放送されていたバラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」のこと。2018年3月に終了)の中でオオバカナコだったのかもしれないな…と。「ここで働かせてくれ」と言いつつ、いつも出口を探している…。ボンベロのように、自分がダイナーに立ってお客さんに料理を振る舞った瞬間は、実はとても少ない。「いや面白かったよ」と言ってくれる人もいますが、岡村隆史さんや加藤浩次さんの頑張りに比べたら…。だから、本当はそんなに偉そうなことは言えません。ただ一つ確かなのは、僕はそれを悔しさとして、自分の中にバンクしていました。(出演者の)岡村さんがマラソンに挑戦すると言ったときは、番組スタッフにも本人にも言わず、岡村さんに何かあったときはいつでも代われるように、ひそかに走る練習をしていましたから…。結局ご本人が走り切ったので、まったくなんのお役にも立てませんでしたが(笑)。でも、そういう意味では悔しさがなくなったらおしまいかな…と。

-その積み重ねが、今につながったと?

 「何をしていいか分からないから、社会に出られない」という考え方はしなくていいと思うんです。僕は「めちゃイケ」という社会に出ることで、たくさんのことを知り、たくさんの学びを得た。知らないことを学ぶのは、恥ずかしいことではありません。知らないことを知ったふりすることの方が恥ずかしい。そういう意識さえ持てば、「自分が誰だか分からない」といったことで悩まずに済むのではないでしょうか。自分が誰なのかをゆっくりと知っていくのが社会なんですから。

-なるほど。

 だから、悔しさを自分の中で「逃げ」にしないことは本当に大事ですね。「悔しい」と思いながらも、「まあ、いいか」で終わらせてしまうことも多いですから。ちょっと大げさな言い方ですが、僕の場合、幸いその悔しさを自分の肉体にぶつけることができた。それが偶然にせよ時代と合って、今こういうふうに取り上げていただけるようになったので。「特技」というほど大げさでなくとも、「これなら…」みたいな能力は、みんな何かしら与えられているはずですから。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「今回は、極上のエンターテインメントを作ったつもりです」 『悪は存在しない』濱口竜介監督【インタビュー】

映画2024年4月19日

 長野県の自然豊かな高原を舞台に、代々つつましい生活を続けてきた住民の、レジャー施設の開発をめぐる生活の変化を描いた『悪は存在しない』が、4月26日から全国公開される。本作で第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で銀獅子賞に輝いた … 続きを読む

【週末映画コラム】気持ちのいい人情喜劇『あまろっく』/山田太一の小説をイギリス人監督が映画化『異人たち』

映画2024年4月19日

『あまろっく』(4月19日公開)  理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。  ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む

小関裕太&岡宮来夢、念願のロミオ役に「プレッシャーも力に変えて頑張りたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年4月19日

 上演の度に大きな話題を呼ぶミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の3年ぶり6度目の上演が決定。5月16日に東京・新国立劇場 中劇場で幕を開ける。  本作は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミ … 続きを読む

「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

映画2024年4月18日

 映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む

若手注目俳優の佐藤瑠雅&坂井翔、「どこにでもいる男の子たちの何気ない生活を描いた」“じれキュン”ラブストーリー「彼のいる生活」【インタビュー】

ドラマ2024年4月18日

 「仮面ライダーギーツ」の桜井景和/仮面ライダータイクーン役で注目された佐藤瑠雅と、ドラマ「ジャンヌの裁き」に出演し高い演技力が話題となった坂井翔がW主演するドラマ「彼のいる生活」がTOKYO MX、ABEMA、各配信サイトにて現在放送・配 … 続きを読む

Willfriends

page top