X


「『アシガール』で過酷な場所を走った経験があるので、まだまだ余裕で走れます(笑)」黒島結菜(村田富江)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

 いよいよ女子スポーツの黎明期に突入した大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」。その中心となって活躍するのが、東京府立第二高等女学校で女子のスポーツ教育を開始した金栗四三(中村勘九郎)の教え子・村田富江だ。数々の競技会で好成績を残すとともに、自作のテニスのユニフォームも話題となり、アイドル的人気を獲得。だが、人前で素足になって走ったことが物議を醸し…。今では信じられないようなエピソードが次々と飛び出し、その内容には驚くばかりだ。演じる黒島結菜が、撮影の舞台裏、役を通して感じたことなどを語ってくれた。

村田富江役の黒島結菜

-四三と出会ってスポーツに目覚めた富江は、自作のユニフォームがきっかけとなり、スポーツ界のアイドル的存在となります。演じてみた感想は?

 自分たちが作ったユニフォームが百貨店に展示され、商品化までされるなんて、今でもすごいこと。富江自体は架空の人物ですが、当時、同じようにアイドル的な人気を集めて、手作りのユニフォームが百貨店で商品化された女子スポーツ選手がいたそうです。そう考えると、その方たちが一体どれほど新しいことをしたのかと…。本当にすごいと思います。

-衣装のユニフォームを着てみた感想は?

 かわいかったです(笑)。当時の資料を参考に新しく作ったものですが、えりの付いた真っ白なワンピースで、ボタンがアクセントになっていて、フレアのスカートというデザイン。ものすごくテンションが上がりました。こういうすてきな衣装を着ると、同じスポーツをやるにしても、気持ちがグッと高まります。見た目重視で、運動には適していないような気もしましたが(笑)。でも、見た目から入るのも悪くないなと。そういうことは、今も昔も変わりませんね。

-富江はいろいろなスポーツをする場面がありますが、トレーニングはどのように?

 テニスについては、女学校の同級生役4人と菅原小春(人見絹枝役)さんが一緒に、撮影の1カ月ぐらい前から週に1回程度の練習を続けました。昔のテニスのラケットは今よりも小ぶりで、バドミントンのラケットに似ているんです。私は中学校までバドミントンをやっていたので、構えがバドミントン風にならないよう、見え方に気を付けて指導していただきました。他にも、やり投げや走り高跳び、ハードル走など1日かけて練習しています。

-富江は走る場面も多いですが、黒島さんは「アシガール」(17)でも見事な走りを披露していましたね。

 「アシガール」では、山道や川の中といったかなり過酷な場所を、しかも靴ではなくわらじを履いて走っていました。今回は、きちんとしたグラウンドで、靴も靴下も履いて走れるので、私の中ではかなりレベルアップした印象です(笑)。皆さん、「体を張って、大変そう」と心配してくれますが、「アシガール」で過酷な経験をしているので、これぐらいなら全然余裕です。もともと、走ることは好きですし、「まだまだいくらでも走れる。転ぶお芝居でも、何でも大丈夫!」ぐらいの気持ちでいます(笑)。

-ちなみに今回、「アシガール」で父親役だった古館寛治さんも、可児徳役で出演していますね。

 一度お会いする機会があり、「また一緒にやることができてうれしい」とおっしゃってくださいました。

-富江たちは、スポーツに目覚めたことで、当初反発していた四三を慕い始め、「パパ」とまで呼ぶようになりました。富江と四三の関係については、どんなふうに感じていますか。

 普通、先生を「パパ」とは呼びませんよね(笑)。でも、事実だそうです。四三さんには、ちょっとかわいらしい部分もあるので、そういうところが女子には魅力的に映るのかもしれません。しかも、向こうが一生懸命ぶつかってきてくれる分、こっちも思いが伝えやすいですし。お互いの信頼関係があればこそですが、単なる「先生と生徒」というだけでないそんな関係性はすごくいいなと。私も高校時代、なんでも話せる仲のいい先生がいたことを思い出しました。昔の先生はとても偉くて、生徒から遠い存在というイメージがありましたが、当時もこういうふうに接してくれる先生がいたことを知り、うれしくなりました。

-第22回、富江が素足で走ったことが問題になり、学校に押しかけた父兄に対して四三が「あなたたちのような理解のない人がいるから、女子スポーツが普及しないんだ」と訴える場面も熱かったですね。

 実はあの場面、泣いてしまったんです。勘九郎さんのお芝居に、ものすごく感動して。本番前のテストでは「先生、その通り!感動する」と思いながらも、普通に聞いていました。ところが、本番になったら勘九郎さんが、テストを遥かに上回る熱量でしゃべり始めて…。それを見ていたら、涙が止まらなくなり、思わず拍手までしてしまいました。それぐらい勘九郎さんのお芝居からは、うそのない真っすぐな気持ちが伝わってきました。こんなふうに、本番中であることを忘れるような経験は滅多にないので、そういう現場にいられたことが、とてもうれしかったです。

-日本の女子スポーツの黎明期に活躍した女性を演じてみて、改めて感じたことは?

 私自身、小さい頃からスポーツには慣れ親しんで、何の疑問も感じずにやってきました。でも、「女にとってはお嫁に行くことが一番。スポーツなんてとんでもない」という時代があった。そのことに、まず驚きました。今でこそ、世界中で男子と同じように女子もスポーツを楽しむようになり、マラソンではおへそを出して走ったりもしていますが、あの時代からは考えられないことだなと。もし、当時の人が現代にタイムスリップしてきたら、ものすごい衝撃を受けるでしょうね(笑)。そういう歴史があって、今につながっていると知ることができたのは、とてもよかったです。

(取材・文/井上健一)

村田富江役の黒島結菜(中央)

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「場所と人とのリンクみたいなのものを感じながら見ると面白いと思います」今村圭佑撮影監督『青春18×2 君へと続く道』【インタビュー】

映画2024年5月9日

 18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)はアルバイト先で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、恋心を抱く。だが、突然アミの帰国が決まり、落ち込むジミーにアミはあることを提案する。現在。人生につまずいた3 … 続きを読む

田中泯「日本の政治に対する僕自身の憤りに通じる部分も多かった」世界配信となる初主演のポリティカル・サスペンスに意気込み「フクロウと呼ばれた男」【インタビュー】

ドラマ2024年5月9日

 あらゆるスキャンダルやセンセーショナルな事件を、社会の陰に隠れて解決してきたフィクサー、“フクロウ”こと⼤神⿓太郎。彼は、⼤神家と親交の深かった次期総理候補の息⼦が謎の死を遂げたことをきっかけに、政界に潜む巨悪の正体に近づいていくが…。先 … 続きを読む

海宝直人&村井良大、戦時下の広島を舞台にした名作漫画をミュージカル化 「それでも生きていこうというエネルギーをお見せしたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月9日

 太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々の姿を淡々と丁寧に描いた、こうの史代氏による漫画「この世界の片隅に」がミュージカル化され、5月9日から上演される。主人公の浦野すず役をWキャストで務めるのは、昆夏美と大原櫻子。すずが嫁ぐ相手の北條周作を … 続きを読む

「ジョンは初恋の人、そしてかけがえのない友達」『ジョン・レノン 失われた週末』メイ・パン【インタビュー】

映画2024年5月9日

 ジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻が別居していた「失われた週末」と呼ばれる、1973年秋からの18カ月の日々。その時ジョンは、彼とヨーコの元・個人秘書で、プロダクション・アシスタントを務めていた中国系アメリカ人のメイ・パンと恋人関係にあった … 続きを読む

北村匠海「長谷川博己さんのお芝居は、やっぱり迫力がすごい」 日曜劇場「アンチヒ-ロ-」【インタビュ-】

ドラマ2024年5月8日

 長谷川博己が主演を務める日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS系)が放送中だ。本作は殺人犯をも無罪にしてしまう“アンチ”な弁護士・明墨正樹(長谷川)の姿を描き、視聴者に“正義とは果たして何なのか? ”“世の中の悪とされていることは、本当に悪い … 続きを読む