【インタビュー】『未来のミライ』齋藤優一郎プロデューサー「これほど巨大なテーマにたどり着いた作品は今までなかった」

2019年1月22日 / 12:00

 大ヒット映画『おおかみこどもの雨と雪』(12)、『バケモノの子』(15)の細田守監督の最新作『未来のミライ』のDVD/Blu-rayが1月23日にリリースされる。都会の片隅の小さな家を舞台に、4歳の男の子・くんちゃん(声:上白石萌歌)が巡る家族の物語をイマジネーション豊かに描いた本作は、昨年7月の公開後、アニメーション界のアカデミー賞と呼ばれるアニー賞や、アメリカのゴールデン・グローブ賞アニメーション映画賞にアジアで初めてノミネートされるなど、世界中で高い評価を受けている。本作のプロデューサーであり、細田監督の創作の拠点・スタジオ地図の代表取締役を務める齋藤優一郎氏に、細田作品に対する思いを聞いた。

齋藤優一郎プロデューサー

-今までの細田作品では、世界の危機に直面したり、異世界に行ったりという事件に巻き込まれた主人公の活躍と成長が多く描かれてきました。今回はそういう大きな事件は起こりません。そこに細田監督の変化を感じて、とても興味深かったです。

 おっしゃる通り、この映画では大事件も大災害も起こりません。世界を救うヒーローも登場しません。日本の片隅にある小さな家の中で4歳の男の子が成長していく…。それを見詰める家族の日常を淡々と描いているだけです。本作の公開にあたり、海外を含む多くの場所を訪れて、観客の皆さんや、さまざまな方々と交流させていただきました。そのときに感じたのは、「誰もが過ごす日常の中にこそ、喜びや奇跡といったかけがえのない大切なものが潜んでいる」ということを、この作品を通じて皆さん自身が何か発見してくれたのではないか…ということです。国境を越えて、多くの方々に楽しんでいただいている理由の一つに、そういった発見や共有体験があるのかもしれない、そう感じています。

-家族を中心にした物語という点では、細田監督らしさもしっかりとありますね。

 細田さんにとって、家族というのはあくまでもモチーフで、常に興味があるのは子どもや若者の成長や変化なんです。でも、子どもを描こうとすると、必ずその周りには家族というものが存在してくる。初監督作の『デジモンアドベンチャー』(99)から一貫して細田監督が描き続けてきていることです。ただ今回、小さな子どもとその家族が織り成すストーリーといった小さなものから、繰り返し続いてきた大きな時間の流れ、生命の循環といった、これほど巨大なテーマにたどり着いた作品は今までなかったのではないかと。ただ僕としては、企画の当初から細田さんが映画監督として、作家として新しいフェーズに入る作品になると思う、そういった予感はあったんです。完成した作品で、そのことが証明されたような気がしています。

-そういう意味では、これまでとはかなり趣が異なる作品ですが、最初に細田監督から「こういう作品を作りたい」という話があったときに、戸惑いはなかったのでしょうか。

 実はこれまでもそうなのですが、最初にあるのはいつも驚きです。例えば『サマーウォーズ』(09)の公開後に、「次はどんな映画を作りましょうか」と話をしたとき、「どんな映画になるかはまだ分からない、ヒットするかも分からない、でも自分は母親が主人公の映画を作りたいんです」と。『サマーウォーズ』完成直前に亡くなったお母様の総括をしたいと言って、『おおかみこどもの雨と雪』を作ったりするわけですから。それはやっぱり驚きますよね。でも僕は戸惑いや不安よりも、ものすごい納得感が常にあるんです、そしてまた「新しいことにチャレンジするんだな」という、心と気持ちが奮い立つんです。

-そういう思いは、今回も変わらないと?

 今回は、細田さんのお子さんに妹ができたことがきっかけでした。細田さんは一人っ子なんです。でも息子には妹ができて、自分が歩んできた道とは全然違う道を歩むんだ、彼はそこにまず興味を持った。普通なら、『バケモノの子』(15)の後なんだから、またアクション映画を作ろうとか、久しぶりに『時をかける少女』(06)のような映画を作ろうとか考えると思うんです。「サマーウォーズ2をやってほしいです」といったことも言われたりもしますしね。でも、細田さんは常に新しいチャレンジを望んでいる。作家として、「常に新しいことにチャレンジをしながら、地球の裏側の人たちにも、誰の人生にとってもかけがえのないもの、面白いと思ってもらえるものを描きたい」と思っている、そういう人がまた新たなフェーズに到達した。僕はとてもうれしいんです。

-満足されているようですね。

 映画は一本一本が勝負。失敗すれば次はありません。それでも、映画を作り続けていく以上、例えば年齢もあるかもしれない、他にもある人生の局面において、どうしても描くべき、作るべき作品というのは必ず出てくるし、作家である以上それは絶対にあるんです。『未来のミライ』は作るべくして作った、作家が次に向かうためにも必要な作品なんです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【インタビュー】映画『記憶屋 あなたを忘れない』佐々木蔵之介「山田くんとの共演では、絶妙なバディ感を目指しました」

映画2020年1月17日

 刊行以降の累計が50万部を超える織守きょうやの小説を原作に、豪華キャストが集結した映画『記憶屋 あなたを忘れない』が、1月17日(金)から全国ロードショーとなる。本作では、「人の記憶を消すことができる」とうわさされる都市伝説“記憶屋”の存 … 続きを読む

「今までの明智光秀のイメージを白紙に戻して」池端俊策(脚本)【「麒麟がくる」インタビュー】

ドラマ2020年1月17日

 いよいよ1月19日から放送開始となる大河ドラマ「麒麟がくる」。大河ドラマとしては3年ぶりに戦国時代が舞台となる本作では、「本能寺の変」を引き起こした明智光秀(長谷川博己)を中心に、織田信長(染谷将太)や斎藤道三(本木雅弘)といった武将たち … 続きを読む

【映画コラム】事実を基にした物語『リチャード・ジュエル』と『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』

映画2020年1月16日

 今回は、1月17日から公開される、事実を基にした映画を2本紹介しよう。どちらも、ドキュメンタリーとは違う、劇映画ならではの工夫や面白さが感じられる。まずはクリント・イーストウッド通算40作目の監督作品『リチャード・ジュエル』から。  19 … 続きを読む

【インタビュー】映画『花と雨』笠松将 「スターにはなれない」現実に直面して見いだした自分流の役者道

映画2020年1月16日

 近年、目覚ましい活躍でさまざまな映画やドラマに出演している笠松将、27歳。主演作は今年公開予定の作品を含めて8本にも上る。しかし、ミニシアター系やショートムービーには強いが、大作や話題作ではメインキャストから漏れることもしばしば…。「スタ … 続きを読む

【インタビュー】映画『記憶屋 あなたを忘れない』芳根京子「山田さんが『タメ口でいいよ』と言ってくださったおかげで、幼なじみらしい距離感が出せました」

映画2020年1月16日

 NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」(16~17)の主演で注目を集めて以来、『居眠り磐音』(19)や、現在放送中の「コタキ兄弟と四苦八苦」など、多彩な活躍が続く芳根京子。1月17日(金)から全国ロードショーとなる映画『記憶屋 あなたを忘れ … 続きを読む

page top