「山県有朋は、西郷と大久保の間で揺れ動いていたに違いありません」村上新悟(山県有朋)【「西郷どん」インタビュー】

2018年12月2日 / 21:00

-その後、大久保利通(瑛太)が実権を握ると、山県は再び政府の中枢で働くようになりました。

 山県はどちらかといえば、大久保さん寄りの考えを持っている人です。日本という国をどうしていくかという点では、考え方も似ている。奇兵隊時代にたくさんの仲間を失い、彼らのため、そして戊辰戦争での多くの犠牲者のためにも、この国を西欧列強に負けない強い国にしていかなければいけないという思いを持っていた。ただ、西郷さんを尊敬する気持ちも変わってはいません。そういう意味では、西郷さんと大久保さんの間で揺れ動いていたに違いありません。

-最終的に、山県は西南戦争で軍隊を率いて、西郷軍の討伐に向かうことになります。

 劇中でも語られていたように、山県は西郷さんと一緒に徴兵制の実現を目指していました。それは、これからの日本に必要だと考えていたからこそ。だから、反乱士族たちに負けるようでは意味がない。そういう意味で、西南戦争は山県にとって絶対に負けられない戦いだった。西郷さんを討ちたくはないが、徴兵制で組織した国軍の強さを見せるには絶好の機会。そういう複雑な心境だったでしょうね。最終回にも、そんな西郷さんへの思いを表現する場面があります。

-西南戦争は、山県にとってどんなものだったのでしょうか。

 劇中ではそこまで描かれませんが、西南戦争以後の山県は、西郷さんの思いも背負い、豊かな国にするため、日本を近代国家に作り上げようとしたのではないかと。事務処理能力に優れていたという話もありますが、彼の歩みを振り返ると、奇兵隊では高杉晋作の下で働き、西郷さんにかわいがられ、木戸孝允にも一目置かれ、大久保さんにも重用された…。そんなふうに幕末・維新期の英雄たちと関わり、83歳まで生きた山県有朋は、やはりあの時代に必要な人だったのではないでしょうか。

(取材・文/井上健一)

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

-撮影で特に印象に残った場面を教えて下さい。  近所の少年たちにいじめられた幸太が大雨の中、おじさんの家の前で黙って座り込んでいるシーンが、すごく印象に残っています。カメラに綺麗に映るように、大量の雨を降らせていたので、その水圧がものすごく … 続きを読む

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語』(7)神々がすむ土地を語る

2025年11月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈  銭湯の湯け … 続きを読む

ハリウッド・リメイク決定!インド発ノンストップ・アクション!「日本の皆さんにも楽しんでいただけるはず」ニキル・ナゲシュ・バート監督『KILL 超覚醒』【インタビュー】

映画2025年11月13日

-その結果、完成したこの映画では、強盗団が使う刀やナイフのほか、列車備え付けのシャッターや消火器、乗客の荷物など、一見武器になりそうにない身近なものを使った多彩なアクションが見所です。そういうアイデアはどこから生まれたのでしょうか。  私は … 続きを読む

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

-ジュゼッペ役の佐野晶哉さんの印象はいかがでしたか。  ご一緒するのは今回が初めてでした。先に佐野さんの声が吹き込まれている状態でアフレコをさせていただきましたが、1日だけ一緒にお芝居ができた日がありました。その時に、第一声から本当に迷いな … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

Willfriends

page top