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きっかけは初対面のときに「(島津)斉彬さんから評判を聞いていた」と思い出したことですが、実際に会ってみて、なにか大きなものを感じたんでしょうね。一番は、やはり無血開城を決断したことかなと。
全然違いますよね。俺が初めて撮影に入ったときは「お待ちしてました!」という雰囲気で明るく歓迎してくれたけど、今はもう「おはよう!」とあいさつしても「おはようございます」と簡単に返す程度。空気が全く違います。それは、亮平くんがあらかじめ温かな雰囲気を作っておいて、ある時点からガラッと修羅のように変わるという演技プランを立てていたからなんだなと。今はすっかり顔つきまで変わっていますから。
格上の人として見ない。身分は慶喜の方が上ですが、面と向かって反発する場面も多いので、そういうことを心掛けています。ただ、だからこそ無血開城のときも、戦はやめると決めた慶喜や家臣たちが、できるだけ成敗されないようにと、西郷に頼むことができた。さらに、攻撃を中止しながらも「どうしても許せないのは慶喜公だ」と憤る西郷に、勝は「会いに行けよ」と返し、「おまえさんたちのけんかは、おまえさんたちで片を付けろ」と告げる。戦や策略などの駆け引きをするよりも、直接会いに行けばいいじゃないかというのは、人を区別しない勝ならではのいいせりふだったと思います。
一番はやっぱりセット。スタッフの渾身の力作が出来上がっているので、浮ついた気分で入ると、地に足がつかない状態になってしまうんです。しかも、そこに照明の効果も加わると、独特の世界観が表れてくる。今回も初日、スケジュールの都合でバタバタとセットに入ったら、ふすまの開け方も分からなくなってしまったぐらいで…。無血開城の場面も、庭の桜の木の存在感がやっぱりすごかった。大河のセットには、それぐらいの力がある。だから、2日目からは事前にセットに入り、まず全体を眺めてその空気を飲み込んで、気持ちが食われないようにしてから、撮影に臨むようにしています。
(取材・文/井上健一)
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