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「昔からの知り合いである小栗くんとは、打ち合わせなしで龍馬とお龍を演じることができました」水川あさみ(お龍)【「西郷どん」インタビュー】

 薩長同盟が成立した直後、坂本龍馬(小栗旬)は京都の寺田屋で奉行所の捕り方から襲撃を受ける。その危機を救ったのが、結婚間もない新妻のお龍。西郷吉之助(鈴木亮平)にかくまわれた龍馬と共に薩摩を訪れ、吉之助の妻・糸(黒木華)と女性同士の交流を図ることとなる。そんな龍馬の恋女房・お龍役で小栗と息の合った演技を見せるのは、「江~姫たちの戦国~」(11)以来、7年ぶりの大河ドラマ出演となる水川あさみ。龍馬の妻にふさわしい型破りなお龍の魅力、旧知の仲である小栗との共演について語ってくれた。

お龍役の水川あさみ

-初登場となった第33回、糸や大久保一蔵(瑛太)の妻・満寿(美村里江)らとの女性同士のやり取りには、お龍の個性がよく出ていました。

 「西郷どん」のお龍らしさがよく出ていましたよね(笑)。良かれと思ってやっていることがおせっかいでしかなかったり、その場の空気を凍りつかせたり…。自分も旦那さまと同じぐらい前に出て、思ったことを発言するなど、妻は旦那さまに付いていくことが当たり前だった当時、お手本になる女性とは言えません。特に薩摩はその傾向が強かったので、ギャップが色濃く出ていて…。素直に感じたことをそのまま言ってしまう人ですが、うそがないのは彼女のいいところです。

-糸はお龍とは真逆の女性ですが、お龍は糸をどんなふうに見ているのでしょうか。

 もっと積極的にいけばいいのに…みたいなところでしょうか。糸は奥さんとしてはお手本のような人ですが、もう少し自分の気持ちを素直に伝えてもいいのに…ぐらいのことは思っているはず。だからこそ、ああいうおせっかいをしてしまうのではないかと。ただ、糸の幸せを願っていることは間違いありません。応援の仕方は、あまりにも強引ですが(笑)。

-水川さんから見たお龍の魅力とは?

 とにかく龍馬を愛して、どこまでも付いていく。今回のお龍はそれが一番の魅力です。そこだけは何があっても譲れないという、信念みたいなもの。だから、そういう部分がいろいろなやりとりの中から少しずつ垣間見えると面白いな…と思いながら演じています。

-そんなお龍が心から愛する龍馬の魅力とは?

 次々と新しいことを試みるスケールの大きさがある一方で、後にお龍が語るように「船で世界の海をめぐって商いがしたかっただけ」という個人的な夢も持っている。そういうふうに、大きな夢だけでなく、個人的な夢もきちんと持っているところに魅力を感じます。おかげで、龍馬も普通の人間だと思うことができます。

-龍馬と一緒にいると、いつ命を落とすか分からないスリリングな人生になると思いますが、そういうお龍のような生き方についてはいかがでしょうか。

 心臓が幾つあっても足りません(笑)。すごいなぁ…と。この人を愛して一緒に付いていくと覚悟を決めた彼女のような生き方は、なかなかできるものではありません。とはいえ、後で亡くなったことを知って、「あれが最後だったんだ。もう二度と会えない…」と思うことを考えたら、たとえ危険でも一緒にいた方がいいのかも。邪魔で仕方ないでしょうけど(笑)。

-龍馬役の小栗旬さんと共演した感想は?

 今まで何度も共演していますが、今回は10年ぶりぐらいの共演になります。同世代で20代の頃から、いろんな仲間を交えて飲んだりしていた小栗くんと、こうして大河という大きな舞台で夫婦役をやる…。そう考えると不思議な気持ちになりますが、とても誇らしく、うれしいです。

-龍馬を演じる小栗さんの印象は?

 昔から思っていることですが、小栗くんにはものすごくヒーロー性がある。それが彼の大きな魅力だと思います。そういう存在感を放つ能力は圧倒的。それは龍馬にも通じる部分なので、演じていてもさまになる。手足も長いので、立ち回りの時も動きが大きくなり、華やかですよね。あとは、彼自身もいろいろなアイデアがどんどん出てくる人なので、そういう部分も龍馬に似ているなぁ…と。

-龍馬に対するお龍の接し方は、他の夫婦とは違いますが、小栗さんとはどんなお話を?

 他の方はみんな正座しているのに、私だけ龍馬の横に座ってべったり肩を寄せて…(笑)。ちょっと現代的な感じですが、それが今回の龍馬とお龍のあり方なのかなと。小栗くんには最初のリハーサルの時、「とにかく、引っ付いていきますよ」という話をしたら、一応、口では「光栄です」みたいなことを言ってくれました。「うそつけ!」と思いましたけど(笑)。それ以外、特に打ち合わせはしていませんが、お互いに昔から知っているせいか、その場の空気感で演じることができました。

-大河ドラマへの出演は「江~姫たちの戦国~」以来とのことですが、感想は?

 懐かしかったです。もう7年もたっているのに、スタジオに入ったときの土の感じや、メーク室のにおいをかいだら、あの頃の記憶がよみがえって心臓がキューッとなり、泣きそうでした。

-作品に向き合う気持ちも当時とは変わりましたか。

 当時は震災があった年で、「今、これをやる意味があるのか」、「誰のためにやっているのか」と、エンターテインメントの必要性について強く考えさせられました。そのことに関して、共演者の方たちといろいろ話し合ったことを覚えています。その結果、「みんなに元気を与えられると信じてやるしかない」という話になり、一生懸命やってきました。今回、当時のスタッフの方と再会したら、その記憶がよみがえり、「あの頃は毎日大変だったけど、また呼んでもらえてありがたいな」という気持ちが湧いてきて、自分の中で一つ二つ、温度が上がった感じになりました。だから、演じていても、いつもと少し違った感覚になっています。

(取材・文/井上健一)

 

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