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町田康氏の小説を、鬼才・石井岳龍監督×脚本:宮藤官九郎の下、豪華キャスト集結で映画化した『パンク侍、斬られて候』が6月30日から全国公開される。超人的剣客・掛十之進を中心にした物語は、「ほぼ全編がネタバレ」と言われ、予測のつかない展開が次々と待ち受ける奇想天外なエンターテインメントだ。主人公・掛を演じた綾野剛とミステリアスな美女・ろんを演じた北川景子が、初共演の感想や撮影の舞台裏を語った。
綾野 見た人の今の生き方によって印象が大きく変わる映画です。どんな映画も、どんな精神状態で、自分がどんな生き方をしているかによって見え方が変わってきますが、近年では圧倒的に影響力のある作品になったことは間違いありません。劇薬です(笑)。
北川 説明するのは難しいですが…。「爆発!」ですかね…? 見終わったときに、爆発したような感じで、すごくすっきりしました。強烈なロックやパンクのCDを聴き終わったときのようにスカッとして、「解放された!」みたいな…。
綾野 原作の持ち味を生かし、宮藤官九郎さんが持つ、いい意味での余白と面白みを積み重ねた秀逸な脚本で、素直に面白いと感じました。世界観もつかみやすく、何より読み物として面白い。だから、これを映像化したとき、脚本に負けないようなものを作らなければならないというプレッシャーを感じつつ、とても豊かな本だったので、楽しく読みました。
北川 架空の時代と場所が舞台ということで、どういう画になるのかなと考えながら読みましたが、物語そのものはつかみどころのない感じで…(笑)。ただ、一つ一つのシーンが笑えたので、とても面白かったです。「ジェットコースターに乗って楽しかった」というのに近いかもしれません。ちょっと乗り物酔いのような感覚も…(笑)。
綾野 まず何よりも楽しかったです。相性がいいと言ってしまえば、それまでですが。その上で、ろんという役は一番まともに見えなければいけないし、一番パンクでなければいけない存在。現場で北川さんと初めてお芝居をしたとき、それをしっかり背負っていたことが、ものすごく印象的でした。立っているだけで説得力を出すのは、とても難しいんです。やはり、何度も主役として戦ってきた人は違うなと。
北川 仕切ってくれたので、すごく楽でした。普通だったら、座長は自分の演技のことだけ考えて、好きなようにやってくださいと思うのですが、助監督のように現場を回しているんです。「そろそろ本番いけるから、空調切ろうか」とか、エキストラの方にも「これが当たったら斬られて死んじゃうよ、その程度の恐怖感でいいの?」とか、声を掛けて…。それを聞いて私も「あ、そうだな」と思ったり…(笑)。付いていくだけでよかったので、こんなに楽な現場はありませんでした。
綾野 現場では、監督には演出だけに集中してもらおうとして、演出部のスタッフが一生懸命に動くわけですが、意外と、僕たちの方が意識的には監督に近かったりするんです。だったら、一手、二手を加えることで監督の演出の妨げにもならず、僕たちの芝居も生きた状態になるのであれば…。そんな気持ちでやっていました。
綾野 長時間撮影していれば当然、エキストラの方たちは疲れてくるわけですが、それは僕らも同じ。だから、自分を鼓舞する意味もありました。「斬られちゃいますよ、大丈夫ですか」と言うことで、自分の疲れも払拭する。スピード感のあるシーンが多かったので、「ふわっ」としてしまうと、僕たちもいい波に乗っていけませんから。そんな時、誰かが波を作ればいいので、「じゃあ、僕が」と。
北川 見えている範囲がとても広く、いくつの部署のことをやっているの?と思うぐらい何でもやってくれるんです。それは、体力やキャパシティーもないとできないことだけど、綾野さんは動けるし、何でも自分でやらなきゃ気が済まないような人だから…。本当に、甘えたまま終わりました。今度、私が主演する作品があったら出てほしい…(笑)。
綾野 じゃあ、助監督として参加するよ(笑)。
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