「島での撮影は、寒い中、みんなで頑張りました」柄本明(龍佐民)【「西郷どん」インタビュー】

2018年6月3日 / 12:00

 奄美大島で愛加那(二階堂ふみ)と結婚し、家庭を持った吉之助(鈴木亮平)だったが、親友・大久保正助(瑛太)の尽力により、薩摩へと戻ることになった。奄美で吉之助の世話をしていたのが、豪農・龍家の当主であり、愛加那の伯父に当たる龍佐民。演じた柄本明が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

龍佐民役の柄本明

-龍佐民とはどんな人物でしょうか。

 産業としてサトウキビの栽培を行っていた奄美大島は、恐らく日本だけでなく、大陸からの干渉も受けていたはず。だから、生き延びるのに必死だった。そんな状況に置かれた奄美の人たちは、薩摩に対して恨みのような感情を抱いています。もちろん、佐民にも同じ気持ちはあったでしょう。ただ、それを前面に出せば、戦争ということになる。そうなったら勝てないわけで、生き延びるためにどんな選択をしていくか…。龍家の当主としてそこを考えなければいけない佐民は、大変な苦労をしたに違いありません。

-島に流されてきた吉之助を、佐民はどう思っていたのでしょうか。

 西郷さん自身は奄美の人々に危害を加えるような人物ではないわけですが、長年虐げられてきた側としては、薩摩から来た人間に対してそういう判断はなかなかできない。そんな中でも、佐民は教養があった人物なので、西郷さんの本質にいち早く気付いた。最初、「子どもたちに米の飯をあげるのはやめてくれ」と言っていた佐民が、西郷さんが島を去るとき、「たくさんの夢を見させてくれてありがとう」と気持ちよく送り出せたのは、そういう気持ちの変化があったからでしょうね。

-吉之助を演じる鈴木亮平さんの印象はいかがでしょうか。

 まず体が大きい。その上、一生懸命。西郷さんにはピッタリじゃないでしょうか。僕はあまり他の俳優とああしよう、こうしようと相談をすることはありませんが、亮平くんはせりふのやり取りなども、目を見て話してくれるので、とてもやりやすいです。

-二階堂ふみさんが演じる愛加那については?

 二階堂さんとは以前も共演したことがありますが、感受性が豊かで生命力にあふれた女優さん。お芝居の中でも、そういったものをぶつけてきます。だから、いちずでものすごいエネルギーを内に秘めた愛加那役はとても合っています。

-龍佐民の妻・石千代金を演じる木内みどりさんとは、昔からの知り合いだとか。

 もう長い付き合いです。だから、休憩中は昔話ばかり(笑)。最初、奥さん役が木内さんだと知らなかったんです。そうしたら、現場であいさつされて。驚きましたが、うれしかったです。劇中でも、普段の僕と木内さんの関係そのままの雰囲気が出ていると思います。

-奄美の方言は、薩摩ことばとまた違って難しそうですが、演じてみた印象は?

 これでも、多少は分かりやすくしているようですね。僕個人の意見としては、たとえ分かりにくかったとしても、できるだけ現地の言葉を使う方がいいと考えています。その「分からない」ことこそが重要ではないかと。「この言葉はなんだろう?」と、疑問を感じることから広がっていくものがあるはず。分かりやすくすることにばかりに捉われると、言葉の微妙なニュアンスが失われてしまいます。現在のテレビでは、どうしても分かりやすくすることを求められがちですが、僕個人としては、できるだけ現地の言葉をそのまま使う方が好きです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

 中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む

Willfriends

page top