「島唄から三味線まで、習い事のオンパレードでした」高橋努(富堅)【「西郷どん」インタビュー】

2018年6月3日 / 20:50

 親友・大久保正助(瑛太)の尽力もあり、吉之助(鈴木亮平)は奄美大島から薩摩へと戻っていった。妻・愛加那(二階堂ふみ)は、まだ幼い子どもや兄・富堅と共に島で吉之助を待ち続けることに。無骨だが妹思いの富堅を演じるのは、テレビドラマから映画まで、数多くの作品で活躍する高橋努。役に込めた思いや、撮影の裏話など、幅広く語ってくれた。

富堅役の高橋努

-富堅について、どのようなイメージをお持ちでしたか。

 富堅のことは全く知らなかったので調べてみましたが、記録が残っていないんです。写真が1枚あるだけで。それも、「これが富堅です」というはっきりしたものではなく、「龍佐民の親戚で次期リーダーと言われていたから、真ん中のリーダー風の人が富堅らしい」という程度で。

-そこから、役作りはどのように?

 今回のドラマでは、両親がいないので、小さい頃から愛加那と一緒に生きてきたこともあり、とても妹思いの兄。しかも、強がりで偉そうにしている割には、奥さん(=里千代金)からよく怒られている。そう考えたら、すごくチャーミングな人だったのではないかと思えてきました。だからこそ、次期リーダーと言われたのではないかと。役作りのため、髪の毛を4、5カ月伸ばし、ひげも演出の方と相談して伸ばすことにしました。他にも島唄から三味線まで、習い事のオンパレードでした。

-三味線を演奏する場面もありましたが、感想は?

 難しかったです。きちんと先生に教えてもらったのですが、教科書みたいなものはないんです。育った環境によって歌詞も弾き方も全然違うらしく、見て、感じて、感覚で覚えるというやり方。かなり練習して、なんとか三味線だけに集中すれば弾けるようになり、奄美のおばあやおじいたちからも「よく覚えたね」「私よりうまい」と言われるぐらいにはなりました。でも、芝居をしながら気持ちを入れて弾こうとすると、なかなかうまくいかなくて。苦労しましたが、面白かったです。

-富堅を演じた中で、印象に残っていることは?

 とても喜怒哀楽の激しい人で、笑って、泣いて、怒って、歌って、踊って、と振り幅の大きな役だったので、楽しかったです。一番印象的だったのは、吉之助が薩摩に帰る場面。ロケ場所も愛加那と吉之助の芝居も素晴らしくて…。僕が泣く必要はなかったのですが、段取りから本番までずっと涙が止まりませんでした。あとは、愛加那が生んだ子どもを見に行く場面も。吉之助が泣くところだったので、「ニコニコ笑って」と言われていたのですが、僕が先に泣いてしまって…。「あ、これは“西郷どん”だ。“富堅どん”じゃない」と思って、本番では少し我慢しました(笑)。

-富堅は当初、吉之助にいい印象を持っていませんが、後に理解するようになりました。その辺りの気持ちの変化は、演じる上でどう受け止めましたか。

 最初は憎しみに近い気持ちを持っていましたが、吉之助は僕らを助けてくれたわけです。考えてみたら、島に来たばかりの吉之助もつらかったはず。僕らが薩摩を憎んでいるのは吉之助のせいではないけれど、それも知りませんし。そう考えたら、自然と受け入れることができました。別れ際には仲良く相撲まで取っていますから。

-相撲の場面は、富堅と吉之助の関係を示す見どころでしたが、演じた感想は?

 僕は体格がいいと言われる方ですが、島の人はひもじい生活をしているので、体を大きくすることはできません。だから、節制しながら筋トレをしていたんです。それで亮平と並んでみたら、まるで大人と子ども(笑)。そりゃあ、負けるだろうと。史実でも、島一番の力持ちが西郷さんと相撲を取って、3回やって3回とも負けたという話があるそうです。愛加那を追い掛けようとする吉之助を「行くな!」と止める場面では、亮平の体があまりに大きくて「軽トラか!?」と(笑)。

 
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