個性派俳優としてアクの強いキャラクターを演じることが多い滝藤賢一だが、本作では、ヒロイン鈴愛(すずめ=永野芽郁)の、自由で能天気だけど優しい父・宇太郎役を好演中。その仕上がりに大いなる自信を見せる滝藤が、撮影時のエピソードや、作品に携わることで訪れた実生活での変化などを語ってくれた。
-朝ドラ出演は3回目ですが、レギュラー出演は初めてですね。朝の顔になった感想は?
さわやかな感じになってなかったですか? 笑顔満載、愛妻家でイクメンです。
-滝藤さんはエキセントリックな役柄が多いですが、本役では打って変わって、良き夫であり父ですね。
本当に多くの方に助けられていますし、松雪(泰子/妻・晴(はる)役)さんなしで宇太郎役は成立しないです。憧れの女優さんで、芝居はもちろん人間的にもリスペクトしていますし、絶大な信頼を置いてやらせてもらっているので、自分の役に関しては何の心配もしておりません!
-少年のまま大人になったような、自由な性格の役どころを楽しまれているように見えますが。
大丈夫ですかね? ああなっちゃいましたけど(笑)。北川(悦吏子/脚本家)さんがどう思われているのか怖いです。「やっちゃえ!」と行くこともあれば、やり過ぎだったと抑えることもあります。スタッフの皆さんの反応を見ながら調整して…。撮影期間が長いので、試しながらいろんなことができて面白いです。
-これまでにも北川作品に出演された経験はあるのでしょうか。
初めてです。北川さんは当て書きをされるということで、撮影前にお会いする機会をいただき、「自分はこういう人間です」とお話しさせてもらいましたが、そもそも、脚本家の方から「会いたい」と言っていただいたのは初めてでした。そのときは、嫌われたら出番が減るんじゃないかと、すごく緊張しました(笑)。今は、北川さんに「当て書きをしているのに、全然違う」と思われていないかという不安があります(笑)。だから、現場でお会いしたときには「どうですか?」と聞いてしまいますけど、北川さんは書いてしまえば「後はそちらで」という考えもあるでしょうから、信じてもらうしかないのかな。役者同士のセッションの中で生まれたものにしかならないですしね。そうはいっても、北川さんは相当な思いを持って書いていらっしゃると思いますので、頑張りたいです。
-北川さんは「革命を起こしたんじゃないかな」とおっしゃっていましたが、これまでの朝ドラとの違いを感じますか。
普通は、ヒロインと相手役の甘く切ない恋模様は描いても、両親の仲良しぶりは描かないでしょうから、この作品で、宇太郎さんと晴さんが手をつないで歩いたり、「うーちゃん」「晴さん」と呼び合ったりするのはとてもすてきだし、かわいいシーンだなと思います。だから僕、子ども4人を義理の両親に任せて、奥さんと2人で朝ご飯を食べに行くときがあるんですが、そういうときは手をつないで歩くようになりました。それまでは「べたべたするのは嫌だなぁ」と抵抗があったんですけど、すっかり影響されましたね(笑)。
-その仲良し夫婦を20代から演じていますが、苦労はありますか。
苦労も何も僕41歳ですからね…。メイクさんと衣装さんに頼りきっていますし、20代だと思って見ていただくしかないです(笑)。でも「意外とイケるな…」と思いましたよ。自分では20歳そこそこに見えましたけど、駄目でした?
-ロン毛にベルボトムジーンズといった70年代を代表するスタイルも印象的ですね。
当時、はやっていたとはいえ、おかしいですよね(笑)。うちの母もああいう格好はしていたけど、松雪さんと「これ、コントですよね」と話していました。松雪さんは格好よくてお似合いですけど、僕は…。最初は違和感しかありませんでしたが、だんだんまひして、第1週目の試写を見ていたときには全く気にならなかったですね。
-永野さんの鈴愛はいかがですか。
笑いも、泣きも、怒りも、フルパワーで躍動感にあふれています。役作りで計算しているというよりは、永野さんが鈴愛そのもの。彼女に何度泣かされたか分からない…。特に、鈴愛が東京に行くシーンは、朝から夕方まで、松雪さんと泣きっ放しで…。信じられないぐらい泣いたなぁ。僕、泣けない俳優ですけど、何回やっても段取りから感情を抑えきれないというのは不思議でした。
-現場でもコミュニケーションを取られていますか。
普通だと思います。あえて、無理にとろうとはしていません。でも、父と娘はこんな感じじゃないのかな。反抗期とか、気まずくなる時期もあるだろうし。何げなしに話したことが役に反映されている気がします。
-鈴愛の結婚はまだ先の話ですがが、どなたがいいですか。
誰でも嫌ですね。そういう目で佐藤健くん(萩尾律役)も見ています。「頼むからくっつかないでくれ…」って(笑)。鈴愛と同じ日に同じ病院で生まれて、家族付き合いもしているから、安心感はあるし、特別な思いはありますけど、ノーベル賞を目指していてちょっと変わってますよね。普通の人がいいです。まあ、でも鈴愛が選んだ人ならいいんじゃないんですかね。結局誰でも嫌なんだから(笑)。
(取材・文/錦怜那)