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原作の佐藤は、初老だけど脱いだらすごい筋肉質というキャラなので、綾野くんはパーソナルトレーナーを雇って、4カ月ぐらい体作りをしていました。その上、アニメ版で大塚芳忠さんが演じた声もトレースして。あまりに似ていたので、驚きました。キャラクターを作る上で、そういう要素を全部取り込むようですね。
仕事をしたのは今回が初めてですが、2人とも体がものすごく動いて性格もいい。その上、作品第一主義で「自分がこうだから」という発言がない。それがすごいですよね。誰でも自分を良く見せたいのが当たり前だと思うんですけど、そういうことは一切ありませんでした。まったく新しいタイプの役者さんだなと。大したものです。
川栄さんはアイドルで鍛え上げられただけあって、本当に器用。せりふもNGなしで、的確に言えるタイプで。アクション練習でも、最初は戸惑ったようですが、ダンスの振り付けを教えるように指導すると「腕に飛びついて腕ひしぎ逆十字を決める」みたいなこともきっちりできる。彼女の役は原作のイメージを大事にして、男たちの中に1人だけ小さな女性がいるという異物感を出したかったのですが、それも的確に表現してくれました。
映画の企画は出版社や映画会社など、いろいろなところから話が来ますが、僕はそれがどこから来たのかを見極めて、まず状況を把握するようにしています。次に、原作者に会わせてくれるようにお願いする。会えない方もいますが、会えた場合は仲良くなって、描いたときの思いを聞きます。「この部分が気に入っているんです」と言われたら、「じゃあそこを大事に撮ろう」と。だから、大抵の原作者の先生とは仲がいいです(笑)。
そうです。その一方で、プロデューサーが台本を作っているので、原作者の方の思いを踏まえた上で、ネゴシエイトしてまとめていく。そろった食材で料理を作る料理人みたいな感覚です。逆に「監督の自由にやってください」と言われて、本当に自由にやろうとしたらまず通りません。
僕自身、特典映像を見るのが好きなので、撮っているときから「カットされるだろうな」というシーンも、特典に入れることを意識して作っていました。僕らが映画学校に通っていた頃は、映画がどうやって作られたのかを本で読み解いていましたが、今はそれが特典映像で見られるので、恵まれていますよね。だから、いつも大事に作っています。今回は、健くんと綾野くんと城田(優)くん川栄さんとプロデューサーと僕が、映像を見ながらしゃべったビジュアルコメンタリーも収録していますが、現場の雰囲気がかなり再現されているので、そこも見どころです。
(取材・文・写真/井上健一)
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