【インタビュー】『マンハント』ジョン・ウー監督「日本で映画を撮るという長年の夢が、ようやくかないました」

2018年2月7日 / 12:00

-最初から最後まで迫力満点のアクションに圧倒されますが、これを全編、日本で撮ったことにも驚かされました。日本では現在、さまざまな制約があり、このような大規模なアクション映画を撮ることは難しい状況にあります。どのようにして実現させたのでしょうか。

 交通渋滞をしている場所や、人の往来が多い所では撮れず、カーチェイスや爆発や銃撃は許可が下りないということも、やってみて分かりました。ただ、大阪の行政当局が強力なサポートをしてくれたので、私たちも臨機応変に対応しました。例えば、劇中に水上バイクのチェイスシーンがありますが、もともとは路上でカーチェイスをする予定でした。でもそれは無理で、代わりに「川の上なら」と許可が下りたので、水上バイクに変更した結果、あの場面が出来上がりました。冒頭の、居酒屋で女殺し屋たちとやくざが戦う場面も、路上の設定を室内に変更しています。

-制約に合わせて工夫をしたということですね。

 逆にそれが良かった面もあります。例えば、拳銃。調べていくうちに分かったのが、日本の警察は1丁の拳銃に5発しか弾を込めてはいけないということ。再装填はできないそうです。撃ち尽くしたらそれで終わり。なので、この映画でもそこを意識して、弾切れしたら他の拳銃を取ってきて撃つようにしました。私がよくやる2丁拳銃もそうです。この作品では、手錠でつながれた2人の男が、それぞれ1丁ずつを持つ形でやってみました。そういうふうに規制をうまく使うことで、より面白くなった部分もあります。

-アクションの振り付けを担当しているのは、日本人の園村健介さんですね。

 園村さんは頭が良く、勤勉で努力家で、とてもクリエイティブな人。彼のチームはさまざまなアイデアを持っていて、時にはあり過ぎるぐらいで、これもあれもとアクションがてんこ盛り。私が「もういいよ」と抑えるほどでした(笑)。とはいえ、一生懸命考えているので、もう少し調整してほしいとお願いすれば、すぐに対応してくれるところも素晴らしかったです。

-人間対人間のアクションにこだわる理由は何でしょうか。

 アクションを通じて、ストーリーや人間性や、さまざまな感情を表現することができます。また、アクションはミュージカルのように美しく撮ることもできます。アクションのためのアクションではなく、アクションシーンを通じて、人生や友情の意味など、いろいろなことを皆さんに考えてほしい。そう思いながら映画を作っています。

-サスペンスを撮る時に心がけていることは?

 ストーリー展開が大切です。ストーリーを追ううちに真相が解明され、最後はエンディングでスカッとした気分になる。そういうふうに観客を引き込んでいくことが大事なので、演出も編集も重要な作業。今回は、ぬれぎぬを着せられた人物が、自分の無実を晴らすために困難を乗り越えていく話なので、私はこれを(アルフレッド・)ヒッチコック風の作品にしたいと考えていました。

(取材・文・写真/井上健一)

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