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夜の街で盗みを働いた3人の若者が逃げ込んだ空き家。それは、かつて店主が人々の悩み相談に答えていたことで知られる“ナミヤ雑貨店”の跡地だった。ここで一夜を過ごすことになった彼らに、時を越えた手紙が届き始めたことから、ある奇跡が起きる…。累計900万部を越える東野圭吾氏のベストセラー小説を豪華キャストで映画化した群像劇『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。主演はHey!Say!JUMPのメンバーとして活躍する山田涼介。9月23日の公開を前に、撮影の舞台裏について語った。
演じやすい部分もありましたが、同時に、普通を演じることの難しさも感じる役でした。普通の青年なので、見た目はあまり意識しなくてもそれなりに見えますが、その反面、心情や立ち居振る舞いには特徴がありません。どういうふうに色を付けようかということは、すごく考えました。
主演という立場でしたが、いろいろな人たちと手紙のやりとりを通じて交流していくので、前に出過ぎないということを意識して、無駄な動きは省くようにしました。そういう動きの少ない状況で、敦也が最後に心を入れ替える形に持って行かなければならないのは難しかったです。最後にいきなり「僕、真面目になります」となってもおかしいですからね。そのアプローチは、計算しながら演じていました。
今回、せりふは1回も間違えなかったのですが、唯一、テイクを重ねたのが最後のシーンでした。部屋を出て外で涙を流すという場面で、2回目ぐらいで涙は出たんですけど、それだけでは駄目で、5、6回とテイクを重ねました。やっぱり難しかったです。部屋の中は東京のセットで撮って、外に出るところからは大分。その間、1カ月ぐらい空いていたわけですから、気持ちはつながりません。
とはいえ、時間は限られていたし、プレッシャーもあったのでかなり焦りました。そこで「もう、どうにでもなれ」と開き直ったらできたんです。その時、周りの音は一切聞こえなかったし、何も目に入りませんでした。カットがかかった時、「俺、今何していた?」みたいな感じで…。あの場面には、そんな瞬間がありました。
3日間もリハーサルをするのは初めてでしたが、普通と違って面白かったです。事前に監督からは一切指示がなかったんです。だから、何も分からないまま2人と「覚えてきた?」、「いや、どこをやるか分からないですよね?」なんて話をして始めたら、最初から最後まで、ほとんどやることになって。初めは台本を持っていたんですけど、3回ぐらいやったら「そろそろ、本も要らないよね」と言われて大変でした(笑)。でも、同じ経験をした3人にしか出せない空気感も作れたと思うので、結果的には情報を与えない監督の判断は正しかったと思います。
大分でロケした時、西田さんは夕方で撮影が終わって、スタッフと飲みに行っていたことがあったんです。そこで「まだ山田くんたちは撮影しているの?」という話になったらしく、夜中、僕らが撮影している現場に来て下さったんです。でも、その日はすごく寒かったので、すぐ帰られるのかなと思ったら、最後までいて下さって…。すごく感動しました。
大御所の方なのに、ちゃんと僕たちのことも知ろうとしてくれているその姿勢。どれだけ偉くなっても、こういう気持ちでいなきゃいけないなと思いました。その後、西田さんと僕らがいると聞いた町の人たちが、これでもかというぐらい差し入れをしてくれたんです。「西田さんがいなかったら、こんなに持ってきてくれないよ」なんて言いながら、みんなで有り難く頂きました(笑)。
変わってないです。主演だからこうしなければいけないということはありませんが、作品の顔になるのは事実です。だから、舞台あいさつや取材は率先して受けて、映画の面白さや出演者の魅力を伝えていかなければならないという責任感はずっと持っています。この作品は誰もが主演みたいなものですが、僕が主演ということでやらせてもらっているので、先頭に立っていろいろなことに応えなければいけない。そういう気持ちは映画もテレビも変わらないです。何かあれば、前に出て行く覚悟は常にあります。
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』というタイトルで奇跡を描いた映画ですが、その奇跡をどうやって起こすかは、自分次第です。これまで歩んできた道や、いろいろなものを少しずつ手繰り寄せた結果が奇跡につながるので、自分を見詰め直す時間を増やしてもらえたらいいですね。僕たちHey!Say!JUMPも今年、結成10周年を迎えました。今こうしていられるのは奇跡ですが、それはちゃんと自分たちで手繰り寄せた結果だと思っています。
今はちょうど半々ぐらいです。10周年の今年は、この作品と『鋼の錬金術師』(12月1日公開)という二つの大きな映画に出させてもらった上に、JUMPの活動もしっかりあって、充実した1年を過ごさせてもらっています。この映画の公開日は9月23日ですが、実は僕らの結成日が9月24日なんです。運命を感じるので、JUMPファンも原作を愛して下さっている方も、みんなで見に行って楽しんでほしいです。
(取材・文/井上健一)
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