【インタビュー】『ナミヤ雑貨店の奇蹟』山田涼介「奇跡をどうやって起こすかは自分次第」

2017年9月22日 / 17:47

 夜の街で盗みを働いた3人の若者が逃げ込んだ空き家。それは、かつて店主が人々の悩み相談に答えていたことで知られる“ナミヤ雑貨店”の跡地だった。ここで一夜を過ごすことになった彼らに、時を越えた手紙が届き始めたことから、ある奇跡が起きる…。累計900万部を越える東野圭吾氏のベストセラー小説を豪華キャストで映画化した群像劇『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。主演はHey!Say!JUMPのメンバーとして活躍する山田涼介。9月23日の公開を前に、撮影の舞台裏について語った。

(C)2017「ナミヤ雑貨店の奇蹟」製作委員会

-これまで、非日常的なキャラクターを演じることが多かったと思いますが、今回は3人の若者のリーダー格、矢口敦也という等身大の人物です。演じてみた感想はいかがでしょうか。

 演じやすい部分もありましたが、同時に、普通を演じることの難しさも感じる役でした。普通の青年なので、見た目はあまり意識しなくてもそれなりに見えますが、その反面、心情や立ち居振る舞いには特徴がありません。どういうふうに色を付けようかということは、すごく考えました。

-空き家の中という限定された場所でお芝居をされる場面が多かったですが、その中で敦也の成長を感じさせるのは難しかったのでは?

 主演という立場でしたが、いろいろな人たちと手紙のやりとりを通じて交流していくので、前に出過ぎないということを意識して、無駄な動きは省くようにしました。そういう動きの少ない状況で、敦也が最後に心を入れ替える形に持って行かなければならないのは難しかったです。最後にいきなり「僕、真面目になります」となってもおかしいですからね。そのアプローチは、計算しながら演じていました。

-その最後の場面の撮影はいかがでしたか。

 今回、せりふは1回も間違えなかったのですが、唯一、テイクを重ねたのが最後のシーンでした。部屋を出て外で涙を流すという場面で、2回目ぐらいで涙は出たんですけど、それだけでは駄目で、5、6回とテイクを重ねました。やっぱり難しかったです。部屋の中は東京のセットで撮って、外に出るところからは大分。その間、1カ月ぐらい空いていたわけですから、気持ちはつながりません。

-それは大変そうですね。

 とはいえ、時間は限られていたし、プレッシャーもあったのでかなり焦りました。そこで「もう、どうにでもなれ」と開き直ったらできたんです。その時、周りの音は一切聞こえなかったし、何も目に入りませんでした。カットがかかった時、「俺、今何していた?」みたいな感じで…。あの場面には、そんな瞬間がありました。

-共演した村上虹郎さん、寛 一 郎さんと事前にリハーサルを行ったそうですが。

 3日間もリハーサルをするのは初めてでしたが、普通と違って面白かったです。事前に監督からは一切指示がなかったんです。だから、何も分からないまま2人と「覚えてきた?」、「いや、どこをやるか分からないですよね?」なんて話をして始めたら、最初から最後まで、ほとんどやることになって。初めは台本を持っていたんですけど、3回ぐらいやったら「そろそろ、本も要らないよね」と言われて大変でした(笑)。でも、同じ経験をした3人にしか出せない空気感も作れたと思うので、結果的には情報を与えない監督の判断は正しかったと思います。

-ナミヤ雑貨店の店主を演じた西田敏行さんの印象は?

 大分でロケした時、西田さんは夕方で撮影が終わって、スタッフと飲みに行っていたことがあったんです。そこで「まだ山田くんたちは撮影しているの?」という話になったらしく、夜中、僕らが撮影している現場に来て下さったんです。でも、その日はすごく寒かったので、すぐ帰られるのかなと思ったら、最後までいて下さって…。すごく感動しました。

-若い方たちの演技もきちんと見られる姿勢は素晴らしいですね。

 大御所の方なのに、ちゃんと僕たちのことも知ろうとしてくれているその姿勢。どれだけ偉くなっても、こういう気持ちでいなきゃいけないなと思いました。その後、西田さんと僕らがいると聞いた町の人たちが、これでもかというぐらい差し入れをしてくれたんです。「西田さんがいなかったら、こんなに持ってきてくれないよ」なんて言いながら、みんなで有り難く頂きました(笑)。

-これまで幾つもの作品に主演してきましたが、作品を重ねて主演に対する考え方は変わりましたか。

 変わってないです。主演だからこうしなければいけないということはありませんが、作品の顔になるのは事実です。だから、舞台あいさつや取材は率先して受けて、映画の面白さや出演者の魅力を伝えていかなければならないという責任感はずっと持っています。この作品は誰もが主演みたいなものですが、僕が主演ということでやらせてもらっているので、先頭に立っていろいろなことに応えなければいけない。そういう気持ちは映画もテレビも変わらないです。何かあれば、前に出て行く覚悟は常にあります。

-さまざまな受け取り方ができる作品ですが、見た方にどんなことを感じてもらいたいですか。

 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』というタイトルで奇跡を描いた映画ですが、その奇跡をどうやって起こすかは、自分次第です。これまで歩んできた道や、いろいろなものを少しずつ手繰り寄せた結果が奇跡につながるので、自分を見詰め直す時間を増やしてもらえたらいいですね。僕たちHey!Say!JUMPも今年、結成10周年を迎えました。今こうしていられるのは奇跡ですが、それはちゃんと自分たちで手繰り寄せた結果だと思っています。

-歌手として歌うことと役者の仕事は、ご自身の中ではどのように感じていますか。

 今はちょうど半々ぐらいです。10周年の今年は、この作品と『鋼の錬金術師』(12月1日公開)という二つの大きな映画に出させてもらった上に、JUMPの活動もしっかりあって、充実した1年を過ごさせてもらっています。この映画の公開日は9月23日ですが、実は僕らの結成日が9月24日なんです。運命を感じるので、JUMPファンも原作を愛して下さっている方も、みんなで見に行って楽しんでほしいです。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

グレッグ・ターザン・デイビス「とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした」『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』【インタビュー】

映画2025年5月15日

 トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッ … 続きを読む

研ナオコ、認知症のおばあちゃん役で9年ぶりの映画主演「主演女優賞を狙ってます(笑)」岡﨑育之介監督「研さんの人生の奥行きがにじみ出た」『うぉっしゅ』【インタビュー】

映画2025年5月12日

 人生に迷いながらソープ嬢として働く若い女性・加那と、彼女に介護されることになった認知症の祖母・紀江の交流を明るくポップなタッチで描いたユニークな映画『うぉっしゅ』が絶賛公開中だ。  本作で、加那を演じる若手注目株の中尾有伽と共に、紀江役で … 続きを読む

Willfriends

page top