「直虎に対しては“次郎”という呼び方が、一番愛情を持って呼べると思います」小松和重(昊天)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年7月25日 / 14:10

 武芸に秀でた傑山(市原隼人)と共に、南渓和尚(小林薫)の右腕的存在として、豊富な知識を生かして井伊家の菩提寺・龍潭寺の運営を取り仕切る昊天。“次郎法師”を名乗って出家した当時の直虎(柴咲コウ)の教育係を務め、当主となった今もその活躍を温かく見守っている。演じる小松和重が、中盤を迎えた撮影の舞台裏や、長期にわたる撮影で感じたことなどを語った。

 

昊天役の小松和重

-撮影が始まって半年以上たちますが、今のお気持ちをお聞かせください。

 これほど長期間の撮影は初めてですが、ここ(NHK)に来ることが当たり前のようになっているのが、なんだか不思議な感じです。周りの皆さんもいつも同じ人たちがいるので、家に帰って来たようなホッとした気持ちになります。中でも、龍潭寺のセットに入るとすごく安心します。

-昊天を演じる上で、心掛けていることは?

 普段の僕は、昊天とは真逆の性格なので、自分をあまり出さないように心掛けています。普通にしていると俗っぽい部分が出てしまうので、それを抑えるように。傑山とのバランスも考えて、一歩引いた感じの距離感にすることも意識しています。

-墨染めの衣装を着ることで、気持ちも変わりますか。

 そうですね。衣装を着ると、本当に僧侶になったような気持ちになります。簡単なんですね、マインドコントロールって(笑)。自分がすごい人だと思ったら、すごい人になった気になるし、お坊さんの特殊メークをして鏡を見たら、自分が高尚な人間になったような気がしましたから(笑)。

-1人の人物を長く演じることについては、どのように考えていらっしゃいますか。

 最初のころは、少し気持ちを若くして演じようと思っていました。回を増すごとに年は取っていると思いますが、おとわから次郎になった時の差を出すのが、すごく難しかったです。もうこんなに大きくなっちゃった、という時に白髪でも生えていればいいのにと思っても、毛はないし…(笑)。いろいろ考えつつ、自分の中で変化をつけて演じています。

-昊天は、どのような思いで直虎を見守っているのでしょう。

 いろいろな人が亡くなっているので、できるだけ周りの人がいなくならないようにしてあげたいと思っています。独りぼっちになってしまうのはつらいですから。直虎がやりたいようにさせてあげることが役割なので、困っている時にはサポートできるような立場でいたいとも願っています。昊天自身の気持ちとしては、もう少し女の子らしく育ってほしかったという思いもあるのでしょうけどね。

-直虎の成長をどのように受け止めていますか。

 幼いころからずっと見てきたので、今は大人として対等に話ができますが、どうしても子どもだと思ってしまう面はあります。今は立場があるので“直虎さま”と呼びますが、基本的には“次郎”という呼び方が、一番愛情を持って呼べると思います。

-直虎役の柴咲さんの印象は?

 最初のころは、僕の方も緊張していたこともあって、少し距離のある感じでしたが、今はもう柴咲さんはキャストやスタッフに対して完全にオープンになっています。ある意味、直虎みたいで、すごく懐が深い人です。

-同じ龍潭寺の僧侶を演じる小林薫さん、市原隼人さんとの関係はいかがですか。

 小林さんも市原くんもすごく話しやすい人だったので、最初から気軽に話ができました。撮影期間が長いので、一緒にお酒を飲みに行くようにもなって、距離はすごく縮まりました。市原くんは最初、ものすごく真面目で正直な人という印象でしたが、お酒を飲んだらくだけた部分も見られたので良かったです。

-龍潭寺には他にも、小坊主を演じる方がたくさんいますね。

 撮影になると、久しぶりにセットに入る人もいるので、皆さんその度に頭をそっているのですが、その愚痴を聞くのが面白いんです。「またそったの?」「そうなんですよ、寒くて寒くて」なんて…。「大変だね」と言いながら、ニコニコ笑って見ていますけど(笑)。でも、いつも決まった人たちがいるので、顔を見るとすごく安心します。

-最近、龍潭寺で手習いをしている虎松役の寺田心くんの様子はいかがでしょうか。

 ものすごくいい子です。学校でこんな遊びをしているなんていう話を、ずっとしています。まだ3年生なので、よくしゃべりますね。他の人がリハーサルをしている時には「ちょっと静かにしましょうね」と注意することもあるくらいで(笑)。

-小林薫さんがいつも抱いている猫のことを教えてください。

 あの猫は、実は2匹います。主に出ている子はおとなしい性格ですが、もう1匹、代役の子は少しやんちゃで、甘がみしてくるんです。それが結構痛くて…(笑)。でも、どちらもかわいいですよ。休憩中はみんなでかわいがっています。

-高校時代、仏教系の学校に通われて、般若心経を学んだとのことですが、今回改めて学んだことなどはありますか。

 禅宗指導の細川(晋輔)先生のところで、写経をやらせてもらった時、高校時代の思い出がいろいろとよみがえってきました。当時は「なんでこんなことをしているんだろう?」と思いながらやっていましたが、改めてやってみたら、写経も座禅も気持ちが落ち着いて、意外にいいものだと感じました。時間ができたら、また細川先生のところでちゃんと座禅を組ませてもらおうかと思っています。

-第10回で披露した昊天の“似ていない南渓和尚の物まね”がとても印象的でした。

 あれは台本通りです(笑)。“似ていない物まねで”と書いてあったので。薫さんがやっているナレーションなどの声を聴いて、似せてできるぐらいにしてから、手を抜いて似ていないようにしました。1回テストをやってみたら、「似ている」と言われたので、それじゃあ駄目だと思って、さらに似ていないようにしました。放送を見た知り合いからは、“やっちゃったか”みたいな感じで「どうした急に?」というメールが来ましたけど(笑)。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top