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高度成長期に茨城から上京し、たくましく生きる有村架純演じるヒロイン谷田部みね子の成長を描いたNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で、みね子の母・美代子を演じている木村佳乃。充実した撮影中のエピソードを語る木村が、有村との共演によって「役を生きている実感を得た」という貴重な体験ができたことを打ち明けた。
そりゃもう、明るくて働き者で、家族のためなら自分のことは二の次という人ですから、良い奥さん、お母さんでいようと思いました。実さんがいなくなってからは人生がガラッと変わりましたが、それでも一生懸命、実さんのことをずっと心にとめながら生きています。
良い子ですよ。学校から帰ったらすぐ「お母ちゃん手伝うね」って言うんですよ。普通だったら「疲れたー」ってランドセルを放り投げて「お菓子は?」って聞いたり、ゲームをしたり、反抗期だったら「ただいま」も言わなくなるじゃないですか。茂さん(古谷一行)が一緒に住んでいることも関係しているでしょうね。両親とは違う目線の、祖父母の子育ては大事だから、核家族でないところは良いですよね。
19週の田植えのために帰省したみね子が東京へ戻る時に、不安を抱えながら見送っている美代子にハグをしたんです。そのハグや歩いていく後ろ姿に成長を感じました。架純ちゃんも「心配な気持ちも分かるけど、自分も頑張るから頑張って! とお母ちゃんを励ます気持ちで演じていたから(成長を感じてもらえて)うれしい」と言っていました。そういう風にお芝居の中で役を生きている実感を得ることは滅多にないので、「ひよっこ」に出させていただいて本当に良かったです。
高校生の時の女の子って顔がパーンとしているから、架純ちゃんも茨城編では体重を増やしたけど、東京編ではお母ちゃんのおいしいご飯が食べられないこともあって減量しましたよね。正月に帰省したシーンでは都会っぽく、全体的にシャープで大人びていたからさすがだなと思いました。
生きていてくれて良かったといううれしい気持ちと同時に、何とも言えない感情が生まれました。2年半もの間、世津子(菅野美穂)さんと一緒に住んでいるのだから複雑ですよね。考えたくないことも考えるし、女性としてのプライドもあるし。それに記憶喪失で私のことは覚えていないから世津子さんのもとに残りたいと言うかもしれない…。いろいろな感情が押し寄せてきました。
実さんと会うシーンは1話15分のうちの13分半ぐらいで、主題歌の部分を抜くと全部そのシーンなんです。だからせりふを覚えるのが…。長ぜりふを長回しで撮るので大変でした。
本当に素晴らしいです。心を打つせりふが多いので、見ている方にちゃんと意味が伝わるようにしたいし、せりふに負けない芝居をしなきゃと思います。
東京の警察署に夫の失踪届を出しに行った時に、茨城(いばらき)を“いばらぎ”と読まれたり、谷田部実の名前を覚えてくれなかったり、真面目に取り合ってくれないからと怒るシーンは、脚本を読んだ時に「わっ」と思った第一印象のままに演じないと駄目だと思って奮い立ちました。ああいうプライドが傷つけられることは、人生で一度はありますよね。誰もが経験したことのある悔しい感情だと思います。
女子会もワンカット撮影ですが、先輩方に引っ張っていただいて乗り越えています。柴田さんは芝居がとてもお上手で、せりふが突っかかりそうになるとパッとアドリブを入れてくださるし、羽田さんは優しくてかわいらしくて、君子には羽田さんの優しさがにじみ出ています。お父ちゃん(実)が失踪中なので、お二人とのシーンは私としても美代子としても、うれしくてほっとします。
農作業や田舎の生活を体験できることがうれしくて、ロケ地に行くことがすごく楽しみになりました。日本の原風景みたいで心に染みて、日本ってきれいだなぁとしみじみ思います。それに現地の方が温かくて、いつも旬の食材を使ったお料理や、私が好きなあんこをお茶碗いっぱいに入れて出してくれて、それを架純ちゃんに苦笑いされながら平らげています。また行けるかもしれないので、今度は東京のお菓子でもお土産に持っていこうかな(笑)。
(取材・文/錦怜那)
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